皆さんは人工呼吸器がどのようにして空気を患者さんに送っているのかはご存知ですか?
人工呼吸器の送気方法は主に2種類あり、この2つを使い分けることが非常に重要です。
この部分を理解していないと、患者さんの呼吸状態が悪いとなった際に
どこの設定が原因なのかがわからなくなります。
また、人工呼吸器はモードが凄く複雑で毛嫌いしている方も多いと思います。
実際に1年目の時の私もそうでした。
今回の記事では主にVCVとPCVの送気方法について解説していきます。
人工呼吸器の基礎的な部分になるのでぜひ最後まで見て行ってください。
- 人工呼吸器の送気方法について
- VCVとPCVの違い
人工呼吸器の送気方法について
人工呼吸器が患者さんに空気を送る際の設定としては主に2種類あります。
- VCV(量規定換気方式)
- PCV(圧規定換気方式)
これら2つの換気方式によって患者さんが人工呼吸器からどのようにして空気が送られてくるのかが決まります。
この2つの換気方式についてまず知っていきましょう。
VCVについて

VCV(volume control ventilation)は一回換気量を設定して換気を行う方法です。
特徴としては流量が矩形波であるため、一定の空気が肺に送られるイメージです。
また、気道内圧は徐々に上昇していき、空気が設定量まで送られると空気が吐き出されます。
それに伴い気道内圧・流量・換気量は低下していきます。
VCVのメリット・デメリットに関しては以下の通りです。
- メリット
気道内に入る換気量を必ず確保できる - デメリット
気道内圧上昇による肺損傷
VCVのメリット
VCVは一回換気量を基準に換気を行います。
そのため、VCVは患者さんに適切な換気を提供することができるのが最大のメリットです。
1回換気量:6~8mL/kg × 予測体重
予測体重
男性:50 + 0.91× (身長cm-152.4)
女性:45.5 + 0.91× (身長cm-152.4)
例えば予測体重が70kgの場合、適切な一回換気量は約500mlとなります。
この場合、VCVで一回換気量を500mlに設定することで適切な換気を行うことが理論上可能になります。
VCVのデメリット
VCVは一回換気量を設定することで理論上適切な換気を行うことが可能です。
ただし、肺の状態は一切考慮されていないというデメリットがあります。

例えばVCVの1回換気量500mlの設定で左肺コンプライアンスが低下と左気道抵抗が上昇している場合
これは左肺が硬く、伸びにくいかつ空気が入りにくいことを意味しているため、気道内圧がすぐに上昇します。
一方で右肺は左に比べ、健康であるため、左肺よりも圧が上昇しにくいです。
その結果、一回換気量は右肺、左肺が均等に250mlずつ換気されるのではなく
右肺が400ml、左肺が100mlと換気量が不均等になります。
また、右肺も通常時に比べ、過膨張するため、圧損傷による気胸などの危険性が生じます。
つまり、過剰な気道内圧の上昇により、肺損傷の危険性があります。
- VCVは一回換気量で設定する換気様式
- 換気量を一定に保てるのがメリット
- 肺損傷のリスクがあるのがデメリット
PCVについて

PCV(pressure control ventilation)は吸気圧を設定して換気を行う方法です。
特徴としては流量が斬減波であるため、一気に空気送らることで肺を設定圧まで上昇させるイメージです。
空気が一気に送られてからはしばらくその状態が維持されるため、その間に換気を行っています。
一定の吸気時間経過後、気道内圧・流量・換気量は低下していきます。
PCVのメリット・デメリットに関しては以下の通りです。
- メリット
肺の圧損傷や過膨張を防ぐことができる - デメリット
換気量が変動する
PCVのメリット

例えばPCVの吸気圧20cmH₂Oの設定で左肺コンプライアンスが低下と左気道抵抗が上昇している場合
これは左肺が硬く、伸びにくいかつ空気が入りにくいことを意味しているため、気道内圧がすぐに上昇します。
一方で右肺は左に比べ、健康であるため、左肺よりも圧が上昇しにくいです。
その結果、同じ圧がかかった場合、左肺に比べ、右肺の方が膨張することになります。
ただし、PCVの場合は左肺にさらに空気が送り込まれるのではなく、
左肺も設定した気道内圧まで上昇した時点で送気を終了します。
つまり、過剰な気道内圧の上昇は起こらず、肺損傷の危険性は低くなります。
PCVのデメリット
PCVは気道内圧の変動により、送気量も変化します。
つまり、肺の状態によって換気量が一定でないのはデメリットです。
気道抵抗が上昇している場合や肺コンプライアンスが低下している場合は
換気量が低下するため、適切に換気を行えていない可能性があります。
- PCVは吸気圧で設定する換気様式
- 肺損傷のリスクが低いというメリット
- 換気量が変動するのがデメリット
VCVとPCVの比較

最後にVCVとPCVの比較を行います。
最大の違いは換気規定方法が一回換気量なのか吸気圧なのかという違いです。
この違いがあるため、VCVの時は気道内圧上昇、PCVの時は換気量低下に注意する必要があります。
これらの変化についてはアラームで検知することが可能です。
使用例として、VCVはどうしても換気量を確保したい場合です。
例えば血液ガス測定の結果、PaCO₂の値が上昇しており、呼吸性アシドーシスを引き起こしている場合です。
PCVは肺損傷の危険性がある場合です。
ただ、これは人工呼吸器を使用する患者さんすべてに言えることであるため、
使用時に安全面を考慮するとPCVを使用するのが適しています。
ただし、急性呼吸不全においてVCVとPCVの単純比較した場合に違いはないという論文もでているので
一概にどちらが適しているというのはありません。
使用中の患者さんの肺の状態や換気状態を評価し、適切な換気方法に設定することが最も重要です。
- VCVは換気量を確保したい場合にオススメ
- PCVは肺損傷のリスクを低くした場合にオススメ
まとめ
今回はVCVとPCVについて紹介してきました。
どちらも人工呼吸器の換気方法としては基礎的な部分であり、ここを理解できると
なぜ人工呼吸器がこのような動きをしているのかが見えてきます。
また、VCVとPCVのメリット、デメリットを把握しておくことで、患者ごとに適切な換気設定がわかってくるため、
換気量を確保するのか、圧損傷を避けるのか判断しましょう。
一緒に頑張りましょう!