慢性期でも急性期でも、医療現場でよく見かけるのが人工呼吸器です。
患者さんが急変した場合でもよく使用されており、
人工呼吸器で呼吸機能を治療してくれると思っている方は多いと思います。
もちろん答えはノーなのですが、ここが意外な落とし穴です。
では人工呼吸器はいったいなぜ使用しているの?
治療できないなら使用する意味がないのでは?
という声に今回はお答えさせていただきます。
人工呼吸器の目的
人工呼吸器を理解するためには回路構成やモード、
それぞれの効果などかなり難易度が高いと思います。
また、人工呼吸器は生命維持装置の中で最も使用頻度の多い医療機器であるため、
専門的な知識が求められる臨床工学技士が必要とされています。
そんな臨床工学技士が呼吸器を付けたらCOPDやARDSなどの疾患の治療が
できると思っていたら危険です。
では人工呼吸器の目的はなんなのか?という点ですが、
人工呼吸器には
酸素化の改善
換気の維持
呼吸筋疲労の軽減
の3種類の目的があります。
酸素化の改善というのは、患者さんが低酸素状態になった時の原因が
肺に酸素を取り込めていない場合、
強制的に肺に酸素を送ることで酸素化を改善することができます。
換気の維持というのは、患者さんが肺に貯留している二酸化炭素を排出するために
強制的に肺の空気を入れ替えることができます。
これで患者さんの体内の空気を常に入れ替えることが可能になり、換気を維持することができます。
呼吸筋疲労の軽減というのは、患者さんが何らかの形、病気により、呼吸しずらい状況となり、
呼吸筋が披露した状態になると
呼吸が困難な状態となるため、その疲労を軽減するために人工呼吸器を使用し、
呼吸筋を休めることで疲労の軽減することができます。
これら3つの目的のどれか一つでも当てはまった時に人工呼吸器の使用が検討されます。
ただ、これら3つはあくまで患者さんの今の状態を改善、維持することができますが
その原因となっている疾患の治療を行うものではありません。
そのため、人工呼吸器で生命維持を行っている間に原疾患の治療を行う必要があります。
人工呼吸器の適応疾患について
ではどんな症状が生じた時に人工呼吸器が用いられるのかという具体例について紹介していきます。
酸素化の改善
これは低酸素血症の改善時に用いられます。
例えばARDSや肺水腫といった症状が挙げられます。
換気の維持
これは急性呼吸性アシドーシスの改善時に用いられます。
PaCO₂が高値の場合、アシドーシスを引き起こす原因となるため、危険です。
また、この状態が維持されるとCO₂ナルコーシスを引き起こす原因にもなりかねないので
早急に改善されることが求められます。
呼吸筋疲労の改善
呼吸筋疲労は気道抵抗の増加や呼吸回数の増加などが原因です。
COPDがまさにいい例で、この状態を改善するために人工呼吸器が用いられます。
その他
その他にも人工呼吸器を使用する場合があるのですが、
これは無気肺の予防や手術後の鎮静により自発呼吸が消失している場合などが挙げられます。
手術後に関しては一時的なものである事が多いのですが、
呼吸を維持するためには必要不可欠となります。
まとめ
今回は人工呼吸器の目的について紹介してきました。
人工呼吸器を使用する目的は多岐にわたりますが、
特に重要なことは患者の呼吸を維持することです。
改善するためには根本的な治療が必要となるのですが、
呼吸を維持できているというのは医師にとっても治療に専念しやすい状態です。
人工呼吸器には複雑な設定があり、難しいと思われる方も多いと思いますが
この人工呼吸器の基本的な部分から抑えていくことが重要です。
一緒に頑張りましょう!