意外と知らない?腎機能の評価について

腎機能評価について 血液浄化

医療現場ではよく「腎機能が悪くなっているね、透析が必要だね」と言われることがあります。

元々透析を行う患者さんというのは糖尿病が原因の慢性腎不全であることが多いのですが、
ICUなどでは急遽「今から透析をするよ!初回だから注意しよう」など言われることがあります。

では、どのような基準で透析が必要なのか判断しているのでしょうか?

大体こことここを見ているんだろうな・・・と思っている人もいると思いますが
この記事に興味があるということはまだ自信がない人もいると思います。

今回は腎機能をどのように評価しているのか紹介していきます。

腎機能評価の基本情報

そもそも、腎機能を評価する上で、最も簡易的な方法というのは尿量測定です。
腎機能低下が最も顕著に表れるのがこの尿量で、
健常者の場合は1日でざっくりですが1L以上排尿されています。
しかし、尿が出ない状態、無尿と呼ばれる段階では1日で50ml以下となっています。
もちろん、尿量が低下する原因は、腎機能の低下以外に尿道結石、尿道狭窄のような
排泄機能に異常をきたしている場合や、
脱水症状のようなそもそも尿が作製できる状態が整っていない場合があります。
そのため、尿量測定で腎機能の評価はできませんが、もしかして腎機能が悪くなっている?
程度の判断は可能です。

尿量からもしかして腎機能が低下している?と考えた場合、
次に確認したいのは血液ガス測定結果です。

ICUなどで管理している患者さんの場合は最低でも1日1回は必ず測定しているのですが、
注目すべきはクレアチニンとeGFRです。

クレアチニン値について

クレアチニン値は簡単に言うと体内に不要な物質で、
基本的にはほとんどが尿から排出されています。

しかし、腎機能が低下した場合は尿量が低下していることが多い。
つまり、クレアチニンが排出されなくなるため、
血液中のクレアチニンの値が高くなるというわけです。

クレアチニンの基準値は性別や年齢、体型などによって個人差があるため、
ここからここが基準値です!と言い切るのが非常に難しいのですが、
男女ともに1.0mg/dL以上であれば危険水位に達している場合が多いです。
特に女性の場合は男性よりもクレアチニン値の基準値が低くなっているので
1.0mg/dL付近であればかなり危険です。

ただ、クレアチニンは個人差が大きいこともあって
この値だけで評価することは基本的にありえません。

しかし、腎機能低下の指標として非常に優秀なクレアチニン値を有効活用したのが
eGFRです。

eGFRについて

eGFRは推算糸球体濾過量のことで、この値から腎臓にどれくらい老廃物を
尿へ排泄する能力があるかを示しており、
この値が低ければ低いほど腎臓の動きが悪いということです。

ちなみにこの値は血液ガス測定を行わなくても先ほど紹介したクレアチニン値と
年齢、性別から難しい数式を使って計算することはできるのですが、
正直これを覚えても現場では何も活用できないので今回は割愛させていただきます。

クレアチニン値だけでは評価できない腎機能を評価するためだけに作り出された
eGFRという値は非常に優秀で、この以下の表を覚えるだけで
腎機能を評価することができます。

この表を見て、気づいてほしいのは大体腎機能が半分以下になってきたなというタイミング。
つまり、eGFRが30付近になってきたなというラインです。
慢性腎不全の進行度で行くとG4~G5です。

ここまで低下すると、腎機能としては高度低下と呼ばれる段階になっているため、
治療はもちろんですが、透析導入も十分考えられます。

そのため、eGFRが30以下の人が入院してきた場合、情報が何もなかったとしても
もしかしたら透析導入するかもぐらいには思ってもいいかもしれません。

ただ、K値やBUN(尿素窒素)の値が問題なければ、例えeGFRが低下していたとしても
透析施行まではいかないかもしれないです。

このあたりについては医師の考えや、患者の主疾患などによって判断されます。
これはその場その場で変化するので臨機応変に対応しましょう。

補足:クレアチニン・クリアランス

腎機能評価に用いられる値としてはeGFR以外にも
クレアチニン・クリアランス(CCr)という測定値もあります。

これは先ほどのeGFRと似ていますが、性別、年齢、体重、クレアチニン値が用いられます。
今回も数式については割愛させていただきますが
eGFRとほぼ同じ計算方法で腎機能を評価するってことはどっちかに統一してほしい!と
思う気持ちもわかります。

クレアチニン・クリアランスは、腎臓のクレアチニンの排泄能力を表した数値です。

いや、eGFRと一緒やん!と思うかもしれませんが、最大の違いは
eGFRは糸球体濾過量がわかること。

つまり、
eGFRは腎臓で老廃物がどれだけ除去できるのか、腎臓の機能を評価するのに長けている
クレアチニン・クリアランスは尿中にクレアチニンがどれだけ排出されたのかが評価できる
ということです。

実際に臨床現場で多く使われるのはeGFRで、慢性腎不全の判断基準にも使用されています。
一方で、クレアチニン・クリアランスはeGFRと近い値になるのですが、
約1.3倍高い値になります。

現状、腎機能評価に長けているのはeGFRということです。
ただ、クレアチニンは体格によっても変化する。
具体的には筋肉量などによってクレアチニンが変化するため、
そもそも筋肉量が少ない場合はクレアチニンが少なく、
腎機能が悪くてもeGFRの値は低くなります。

一方、クレアチニン・クリアランスは体重も加味しているため、eGFRよりも
正確に測定できると言われており、
特に初期から中期の腎不全に対して非常に有効であるという結果も出ています。

そのため、一概にクレアチニン・クリアランスが推奨されていない
というわけではなく、両方の値を見て、総合的に判断するということもあります。

まとめ

今回は腎機能の評価方法について紹介してきました。
腎機能が悪い患者が事前にわかっていれば、医師から突然言われても心構えができますし、
むしろ「この患者はこういう原因で腎機能が低下しているのでこんな治療が良いと思います。」
とまで言えると完璧ですよね。

もちろん最終的に判断するのは医師ですが、私たちも助言できるように
準備しておくことは重要です。

腎臓の治療は透析療法が最終的に候補として挙げられますが、
透析は臨床工学技士が一番関わっている業務だと思います。
腎機能を評価できるようになるのはこの分野をマスターするための第一歩だと思います。

一緒に頑張りましょう!