皆さんは透析治療に関わる際にDW(ドライウエイト)という言葉を聞いたことはありませんか?
これは透析治療を行っている患者さんの目標体重と言われる値で、
透析患者さんが透析を行う際の除水量を決める指標になります。
しかし、透析業務に携わっている人の中にはこの目標体重がどのようにして決められているか
把握していない人もいます。
さらに、DWの求める方法がわかってこれば透析以外の循環器分野でも活かすことができます。
透析だけでなく他の分野でも必要となる知識なのでぜひ最後まで見て行ってください。
- DWについて
- CTRについて
DWについて

まず、DW(Dry Weight)とは透析後の目標体重のことです。
私達臨床工学技士は医師の指示で決められたDWを参考にその日の除水量を決めます。
このDWは定義として
透析患者での過剰な体液貯留傾向のない状態の体重
と言われています。
つまり、これ以上水分を除去すると急激に血圧が低下する限界の体重です。
ちなみに外来透析患者の場合、体重の増加を抑制するのも私たちの業務の一つです。
栄養指導については管理栄養士さんとも協力して行います。
患者さんの体重の増加目標は以下の通りです。
- 中1日で体重の3%
- 中2日で体重の6%
特に中2日空く直前の透析日は透析スタッフ一同体重に厳しく、
増加量が多い場合は透析時間延長も1つの選択肢に挙げられます。
DWの設定指標
DWの設定は基本的に医師が行うのですが、その指標については私たちも理解しておく必要があります。
- 患者さんの体調・血圧
- 浮腫
- CTR(心胸比)
- hANP
- BNP
このほかにもIVC径や血液濃縮率などを見ている施設もありますが、
今回は当院でも特に重視しているこの5つの指標について紹介します。
患者さんの体調・血圧
意外と見落としがちなのですが一番重要なのがこの患者さんの体調・血圧といった部分です。
実際に私の経験上でも検査データに出てこない患者さんの不調などはあります。
これは患者さんの個人差にもよるものがあり、全く同じ性別・年齢・体格、数値上適切なDWだとしても
問題がない人もいれば透析中に体調不良を起こす患者さんもいます。
この点が難しい部分で、医師と患者さんとでDWの設定でトラブルになることも決して珍しくありません。
また、血圧も個人差があり、透析開始時から血圧が高い人もいれば透析開始時から低い人もいます。
血圧が高い人は当然除水量を多くしても影響がない場合がありますが、低い場合はあまり除水量を多くできません。
ちなみに平常時の血圧が140~160台が最も死亡リスクが低いとも言われています。
透析中に体調が悪くなりやすい(倦怠感が出やすい)場合はDWを高めに設定する
血圧が低い患者さん(平常時で100台)の場合はDWを高めに設定する
浮腫
浮腫とはいわゆる体のむくみです。
透析患者の場合、下肢に出現することが多いです。
特に腕にの部分に浮腫がある場合、シャント部分が隠れてしまうことがあり、穿刺の難易度を上昇させます。
このような状態に陥っている場合、基本的に水分が過剰な状態である事が多く、
DWを低くし、今の目標体重よりも多く水を抜くという方向にシフトしていくのが一般的です。
もちろん浮腫だけでは判断できず、他の指標との兼ね合いも含めて最終的に判断します。
浮腫の影響が大きければ大きいほどDWを低めに設定する
CTR
CTR(Cardio-Thoracic Ratio)は心胸郭比のことで、心臓と胸郭の大きさを比較した比率のことです。
DWを決めるにあたり最も重要な指標ともいわれており、各施設によって様々ですが、
当院では透析後に月2回CTRを測定しています。
- 男性 50%以下
- 女性 55%以下
このCTRに差があるのは、女性の方が胸郭が大きいからです。
ただし、心臓の大きさは男女差がほぼないので、女性の正常値がCTRが5%高く設定されています。

CTRは心臓の幅と胸郭の幅を測定する必要があるため、胸部レントゲンで評価を行う必要があります。
CTRはDWを決める際に最も重要になる指標の一つです。
ただし、測定誤差が生じる可能性もあります。
- 吸気時に測定する必要がある
- 立位で測定できない場合(入院患者などで仰臥位で撮影しなければいけない)
- 元々心臓が大きい場合はCTRが大きくなる(心肥大など)
- 測定方法(スタッフの技量によって個人差が生じる)
このように様々な誤差要因が生じます。
特に、吸気時に測定できなければ正確な値が算出できないため、
認知症患者や意思疎通が困難な患者さんの場合は注意が必要です。

CTR撮影時にはこのように胸水が貯留している場合があります。
この場合、CTRの測定は非常に困難で測定に個人差が生じます。
結果、この患者さんの場合、DWを低下させ、胸水を減らしていくことでCTRの再評価を行うことになります。
ただし、誰でも除水できるわけではなく、
血圧が低い場合は除水がそもそも困難であるため、手の打ちようがないです。
- カテコラミンを使用しながら透析を行う
- 透析時間を延長する
- CHDでの除水を行う
このようにCTRだけで様々なことを考える必要があるため、DWを決めるうえで非常に重要な指標となります。
- CTRは胸郭比
- DWを決める際に最も重要な指標となる
- 胸部レントゲンからも得られる情報は多い
hANP
hANP(ハンプ)はヒト心房性ナトリウム利尿ペプチドのことです。
透析患者の場合は透析後の採血で評価します。
hANPは心房圧による心房筋の伸展によって刺激され、分泌されます。
つまり、体液量が増加する際に心房から分泌されるホルモンです。
正常値は43.0pg/ml以下と言われていますが透析患者さんの場合は50~100pg/mlです。
hANPは体液量を評価しているため、この値が上昇すればDWを下げ、この値が増加すればDWを上げます。
ただし、心房細動や弁膜症でもhANPの値は上昇するため、注意が必要です。
- hANPは体液量の増加をトリガーに心房から分泌されるホルモン
- 透析患者の正常値は50~100pg/ml
- hANPが高ければDWを下げ、低ければDWを上げる
- 心疾患を合併している場合は注意
BNP
BNPは脳性ナトリウム利尿ペプチドのことです。
透析患者の場合は透析後の採血で評価します。
hANPは心室圧による心室筋の伸展によって刺激され、分泌されます。
つまり、体液量が増加する際に分泌されるホルモンです。
ただし、hANPとは異なり、除水による変化は軽度であるため、
臨床的には透析に伴う心不全の評価に用いられます。
正常値は100pg/ml以下と言われていますが透析患者さんの場合は200~225pg/mlです。
この値もDWの評価には用いられますが、あくまで参考程度といったイメージです。
ただし、心不全評価は非常に優秀なため、例えば透析後採血でhANPが適正ですがBNPは上昇している場合は
新たに心疾患が発症している可能性があり、早期発見にも繋がります。
逆に今のDWでBNPが増加していなければ心機能的には今のDWで適切といった感じです。
- BNPは体液量の増加をトリガーに心室から分泌されるホルモン
- 透析患者の正常値は200~225pg/ml
- BNPは心不全評価を行うことができる
- hANPの値と比較し、新たな心疾患の早期発見に有効活用する
まとめ
今回は透析治療には欠かせない重要指標であるDW、CTRについて紹介してきました。
特にDWはこれがなければ透析治療を行えないと言っても過言ではないので非常に重要な数値になっています。
この値の意味を知って治療を行うのとそうでないのでは全く違います。
日々透析患者に関わることの多い臨床工学技士は医師よりも患者さんに寄り添うことができるため、
少しの変化からDWを調節するヒントを見つけることができるかもしれません。
ただ透析治療を行うのではなく、どのようにしてより良い透析を患者さんに提供することができるのかを考えることができれば必要とされる臨床工学技士になれます!
一生に頑張りましょう!