以前からPCIは冠動脈の狭窄を改善するという話をしてきました。
そんなPCIですが、狭窄部分を拡張できても再度狭窄する可能性が残っています。
この再狭窄を防ぐ目的で使用されるのがステント・DCBです。
今回は最狭窄を防ぐために使用される2つのアイテムについて紹介していきます。
- 血管が再狭窄する理由
- 再狭窄を防ぐデバイス、ステントとDCBについて
- ステントとDCBの使い分け
なぜ再狭窄は起きるのか?
PCIで冠動脈を拡張させ、狭窄部が無くなって終了であればよかったと思います。
ただ、人間の体は不思議なもので、改善された狭窄部は再び狭窄することがあります。
もちろん、PCI後も生活習慣が改善されない、抗血小板薬などの内服を自己判断で中止するなどの
患者要因のものはどうしようもありませんが・・・
では再狭窄はなぜ起きてしまうのかというと、詳しいことはまだわかっていないようです。
ただ、カテーテルによる冠動脈治療は血管の内側に傷をつけることを避けることはできないです。
この血管の修復のために再度狭窄が起きるのではないかともいわれています。
また、バルーンによって引き伸ばされた血管がまた縮んでしまう、
リコイル現象も関係していると言われています。
ちなみに現在ではステント・DCBによって再狭窄率は10%程度まで低下していると言われています。
つまり、適切なPCI施工後は9割以上の確率で再狭窄は起きないということです。
このことから、再狭窄を防ぐために、患者さんの血管に合わせて適切な物品を使用する必要があります。
ステントについて

ステントはPCI治療において、再狭窄を防ぐための物品として最も使用頻度の多いです。
このほかにもDCBがあるのですが、私の体感では7割がステントです。
もちろん患者さんの血管や医師の判断によるので施設によっても異なると思います。
ステントはバルーンで拡張した血管の再狭窄を防ぐために使用されます。
このステントは金属でできたメッシュ状のチューブです。
ステントには薬剤溶出ステント(DES)とベアメタルステント(BMS)の2種類があります。
ただ、現在では再狭窄率がほとんどないDESの方が圧倒的に使用率が高いです。
当施設でもDESのみでPCIを行っています。

ステントには2種類ありますが、両方のステントで共通していることは、
留置後に抗血小板薬の内服が始まるということです。
これはステントは体内の反応としては異物であるという判断を受けるため、
血栓ができやすいという弱点があるからです。
デメリットとしては出血傾向になるというものがありますが、
それを考慮しても再狭窄の方がリスクが高いということです。
ちなみにステント留置後には抗血小板薬を2種類内服するDAPTという治療法が用いられます
このDAPTについてはこちらの記事をご参考にしてください。
ベアメタルステント(BMS)
BMSは現在ほとんど使用されていないステントとなっています。
理由は単純でDESに比べて再狭窄率が高いためです。
ステント内での再狭窄は、再拡張する際に通常の病変よりも高度なため、時間がかかります。
そのため、再狭窄が少ないDESの使用率が高いのは当然と言ってしまえば当然です。
ただ、BMSのメリットとして、抗血小板薬の使用期間が短いというメリットがあります。
これは、単純に金属が露出しているBMSに比べて薬剤が塗布されているDESは
新生内膜増殖抑制効果により再内皮化が遅れてしまうからです。
つまり、DESはBMSに比べて体内に適合するまでの時間が長いため、
抗血小板薬の使用期間が長くなるということです。
抗血小板薬の内服は出血リスクを上昇させるため、この内服期間を短くできるのは
非常に大きなメリットです。
薬剤溶出ステント(DES)
DESは現在のPCIの主流となるステントです。
最大のメリットはBMSに比べて再狭窄率が低いという点です。
この薬剤はステントの表面に再狭窄を防ぐ薬剤が塗られており、
この薬剤が留置後に徐々に血管に溶け出すことで再狭窄を防ぎます。
デメリットとしてはBMSに比べて抗血小板薬の内服期間が長くなるということです。
PCIで最も嫌なのは再狭窄です。
せっかく治療したのに再狭窄となると、患者さんの負担も大きくなります。
ですので、適切なDESの使用はPCIにとって必要不可欠です。
DESの一例を以下にまとめています。
Abbott社 Xience Skypoint
テルモ社 Ultimaster Nagomi
オーバスネイチメディカル社 COMBO+
Boston社 SYNERGY、MEGSTRON
- DESはステントに再狭窄を防ぐ薬剤が塗られている
- 再狭窄率の低さが特徴
- 抗血小板療法が1年以上継続して必要となる
DCBについて

DCB(Drug Coated Balloon)は薬剤溶出バルーンと呼ばれ、ステントと同じく、
冠動脈の再狭窄を防ぐために使用されます。
メリットとしてはステントと違い、体内に異物を留置する必要がないため、抗血小板療法の期間は短くなります。
また、ステントは蛇行血管や細い血管の場合、デリバリーに難があるときがあるのですが、
DCBはバルーンのため、ステントに比べて容易にデリバリーすることができます。
特に血管経が3mm以下の場合はステントを留置するよりもDCBの方が優位だという報告もあります。
また、DESとDCBを使用することによる再狭窄リスクもほぼ変化がないということから、
臨床上においてPCIではステントとDCBどちらでもいいということになります。
もちろんそれだけでは終われないので、DCBを優先的に使用すべき状態をまとめました。
- 出血リスクが高い患者
- 抗血小板療法の長期継続が困難な場合
- ステントの優位性が確立されていない病変(回旋枝入口部や分岐部側枝)
ただし、DCBを留置する前のバルーンの前拡張時に重度の解離が生じた場合は急性冠閉塞のリスクがあるため
ステントの留置を検討する必要があります。
重度の解離後は血栓が冠動脈内に詰まる危険性があるため、せっかくPCIしたのに・・・
となってしまうのでこの場面ではステントの留置が検討されます。
ステントかDCBかという論争は現在でも答えが出ていないため、
どちらを選択すべきかという明確な答えは出せません。
個人的にはDCBがもっと使用されればな・・・とは思っています。
やはりステント留置後の出血リスクが高くなるのは非常に危険ですので、できればDAPTも行いたくないです。
この辺のメリットデメリットを理解したうえでPCIに参加するのが臨床工学技士の役割です。
DCBの一例を以下にまとめています。
ニプロ社 SeQuent Please
Boston社 Agent
- DCBはバルーンに再狭窄を防ぐ薬剤が塗られている
- 再狭窄率の低さが特徴
- 抗血小板薬の使用期間も短くできる
まとめ
今回はPCIの最終目標となる、ステント、DCBについて紹介してきました。
どちらもPCI治療後の再狭窄を防ぐために非常に重要な物品となっています。
現在のPCIではDESかDCBの2択になることが多く、医師の判断によって決まります。
個人的には抗血小板薬の使用期間が短いDCBを推していますが、皆さんの考えはどうでしょうか?
ぜひ教えてください。
一緒に頑張りましょう!
- 血管が再狭窄する理由は血管の修復機能やリコイル現象が原因
- 再狭窄を防ぐデバイスはDESとDCBが主流
- DESとDCBは病変の位置や急性冠閉塞、DAPTのリスクによって決まる