PCI治療を成功させるための必需品と言えばもちろんバルーンです。
PCIには様々な物品が存在しており、それらを駆使して冠動脈の狭窄部に対する治療を行うのですが、
最も重要な冠動脈の狭窄を改善するためのアイテムがバルーンです。
ガイディングカテーテルやガイドワイヤーなどの物品も全てバルーンを通すためと言っても過言ではありません。
もちろんバルーンで拡張できないなら次の手段もあるのですが、ほとんどのPCIでバルーンは使用されます。
今回はPCI治療の必需品であるバルーンについて紹介します。
必需品何個あんねんと思いますが・・・
バルーンもPCIで非常に重要なのでぜひ見て行ってください。
PCIで使用されるバルーンについて

まず、PCIで使用されるバルーンはPCIの治療の最重要目的である、
冠動脈の狭窄部に対して拡張を行うための物品です。
PCIでは様々な物品が使用されますが、このバルーンがダメなら治療が全く進みません。
PCIで使用される物品は全てバルーンを使用するために用いられると言っても過言ではありません。

そんなバルーンですが、カテ室には数多く存在していると思います。
もちろん長さや幅なども重要なのですが、バルーンには大きく分けて3種類存在しています。
①セミコンバルーン
②ノンコンバルーン
③カッティングバルーン(スコアリングバルーン)
この3種類を使い分けることがPCI攻略の鍵ともなります。
セミコンバルーン

セミコンバルーンはスタンダードなバルーンとなっており、
今回紹介するバルーンの中で一番安全なバルーンとなります。
安全と言われていることからもわかるように、柔らかい素材でできているため、
通過性も高いです。
これは柔らかいため、蛇行血管でも簡単に通過できるということです。
PCIでは主にステント留置前の前拡張に使用されることが多いです。
この前拡張によって、冠動脈をステントが留置できるレベルまで拡張することが目的です。
ただし、注意点として狭窄部の石灰化が強い場合、拡張できない可能性があります。
その場合、バルーンが狭窄部以外はしっかり拡張するが、狭窄部は拡張しないという状態になります。
これをドックボーン現象と言い、この状態は冠動脈を閉塞させるだけで
冠動脈の拡張もできない状態となります。
セミコンバルーンの主な種類としては以下のものがあります。
テルモ社 Ryurei
オーバスネイチメディカル社 SAPPHIRE3
ニプロ社 Regnam
- セミコンバルーンは柔らかく通過性が高いのが特徴
- PCIでは主にステント留置前の前拡張に使用されることが多い
- ドックボーン現象に注意
ノンコンバルーン

ノンコンバルーンはセミコンバルーンと比べて硬く、拡張性が高いバルーンです。
先ほどセミコンバルーンではドックボーン現象が生じることがあるとお伝えしましたが
そのような病変に対してノンコンバルーンは非常に有効です。
PCIでは主にステント留置後の後拡張に使用されることが多いです。
ステントは冠動脈内の狭窄部に圧着させるのですが、この圧着が不十分な場合はよくあります。
その場合、ノンコンバルーンを使用して再度ステントを狭窄部に圧着することで
ステントが確実に圧着している状態を作り出します。
この圧着が不十分な場合、せっかく拡張させた冠動脈が再び再狭窄・・・
なんてことになるのでPCIでも非常に重要な部分です。
ただし、注意点としてバルーンがセミコンと比べて硬いため、通過性が低いという弱点があります。
バルーンを病変部まで運ぶためには通過性が低いというのは欠点になりますが、
石灰化病変には特に有効なバルーンとなっています。
ノンコンバルーンの主な種類としては以下のものがあります。
テルモ社 Hiryu Pluse
オーバスネイチメディカル社 SAPPHIRENC24
ニプロ社 Powerd 3NC
Abbott社 NC TREK NEO
ASAHI社 NC Kamui
- ノンコンバルーンは硬く拡張性が高いのが特徴
- PCIでは主にステント留置後の後拡張に使用されることが多い
- 通過性が低いためデリバリーに注意
カッティングバルーン(スコアリングバルーン)

カッティングバルーンはノンコンバルーンと比べてさらに硬く、拡張性が非常に高いバルーンです。
カッティングバルーンはバルーン上に刃が設置されているバルーンです。
この刃が病変部に切り込みを入れながら拡張していくため、他のバルーンと比べて
非常に拡張性が高いです。
PCIでは主に高度石灰化病変の拡張に使用されることが多いです。
このカッティングバルーンでも拡張が困難な場合は、石灰化病変の石灰化を削るためだけのデバイスである
ローターブレータやダイヤモンドバックの適応が検討されます。
また、ステント内の再狭窄病変に対しても有効です。
使用上の注意点としては、バルーンの通過性が悪いため、狭窄部の病変にバルーンが引っかかる場合があります。
その場合はセミコンバルーンなどで前拡張するのが有効ですが、
最も問題となるのは蛇行血管です。
血管が蛇行している場合、刃がついているため、ノンコンバルーン以上に通過性が悪く、
サポートワイヤーなどと併用して使用することが推奨されます。
また、バルーン拡張時はゆっくりと拡張する必要があります。
これは、バルーンの構造上、外側に刃がついているため、
拡張時に一気に圧力をかけるとその勢いで血管を傷つける危険性があります。
カッティングバルーンの主な種類としては以下のものがあります。
Boston社 Wolverine
オーバスネイチメディカル社 Score flex TRIO
ニプロ社 Aperta NSE
- カッティングバルーンはバルーンに刃がついていることが特徴
- PCIでは硬度石灰化病変の拡張に使用されることが多い
- 通過性が悪く、蛇行血管が弱点
まとめ
今回はPCIで使用するバルーンについて紹介してきました。
今回はPCIの拡張に使用するバルーンというくくりで紹介してきましたが、PCIで使用されるバルーンは
これ以外にも様々あるので、まずは一般的なバルーンから覚えてください。
また、どれがノンコンバルーンでどれがセミコンバルーンなのかわからない方も多いと思います。
その場合はバルーンの拡張圧を確認するといいです。
セミコンバルーンの場合、ノミナール圧が10気圧よりも低く、
ノンコンバルーンの場合、ノミナール圧は10気圧よりも高いです。
ちなみにカッティングバルーンもノミナール圧が10気圧以上です。
ノミナール圧はそのバルーンの推奨拡張圧のことで、バルーンを使用する際は、清潔野にバルーンと共に
拡張期圧が記載された表を渡す必要があります。
もちろんなくてもバルーンの拡張はできるのですが、安全のため必要となります。
今回紹介したバルーンはPCIの基礎中の基礎となるため、ぜひここをしっかり勉強して、
PCIへの自信をつけてください。
一緒に頑張りましょう!
- PCIで病変部を拡張させるためにバルーンが必要
- セミコン、ノンコン、カッティングの3種類があり、病変によって使い分ける
- バルーンが柔らかい場合はドックボーン現象、硬い場合は通過性に注意
- バルーンを判断するためにノミナール圧を確認する