こっちは忘れがち?SvO₂について

SvO2について 病態生理

皆さんは患者さんのバイタルを確認する際にSvO₂もちゃんと確認していますか?
バイタル測定はHR、SpO₂、BPが一般的で、当然とても大事ですが、
さらに詳しく患者さんの状態を理解しようとするとSvO₂も確認する必要があります。

SvO₂は静脈の情報でしょ?
酸素化を知りたいならSpO₂でいいじゃん
と思っている方はいませんか?

今回はSpO₂を重視して、忘れがちになってしまうSvO₂について紹介します。

SvO₂とは

SvO₂は混合静脈血酸素飽和度のことです。
この値は静脈血の酸素の飽和度がわかるということで、SpO₂は動脈血の酸素飽和度を表しているので
測定している場所が違うだけで中身は同じということです。

SvO₂は一般的にスワンガンツカテーテルで求められる値となっています。
ICUで管理する場合はビジレオやビジランスモニターなどの循環動態モニターが使用され、
常時測定値が確認されるように設定されていることが多いです。
(ScvO₂と表記されていますが基本的に同じです)

ちなみにSvO₂は混合静脈血酸素飽和度なのですが
これは全身の酸素需要バランスを反映している値なのですが、
上大静脈、下大静脈、冠状静脈から流れる3つの静脈血が混ざり合っているので混合という意味です。
(ScvO₂は上大静脈のみ)

SvO₂は右心房で測定されており、
肺で酸素化され、酸素飽和度が100%の状態で心臓から拍出された血液が全身に送られた後、
右心房に戻ってきたときの酸素飽和度を示しています。

つまり、全身で酸素が消費された後の血液の酸素飽和度だということです。

SvO₂は正常値が75%となっており、仮に心臓から拍出された血液の酸素飽和度が100%とすると、
全身で25%使用され、戻ってきた血液の酸素飽和度が75%になったら正常だということです。

このことからSvO₂は酸素の需要と供給のバランスがわかる測定値だということです。

  • SvO₂は混合静脈血酸素飽和度(上大静脈+下大静脈+冠状静脈)
  • 正常値が75%
  • 酸素の需要と供給のバランスがわかる測定値

SvO₂はどのように変化する?

SvO₂は酸素の需要と供給のバランスを表しているのですが、SvO₂は以下の因子の影響を受けます。

SvO₂の影響因子
  • 心拍出量
  • 酸素化
  • 酸素消費量
  • Hb

これらの因子がどのような影響を与えるのかを説明していきます。

心拍出量

心拍出量は血液を全身に送る指標ともなる数値で、基準値は人にもよりますが、約5L/minとなります。

ちなみに人の血液量は体重の1/12~1/13とされているため、体重60kgの場合、血液量は約5Lとなり、
正常であれば1分間で全身の血液が循環するといったイメージです。

この心拍出量が上昇した場合、全身に送られる血液の量は5Lを上回るということですので、
1分間で届けられる酸素の量が増加するということです。
つまり酸素供給量が増加します。

この時、酸素が送られる量が多いなら酸素消費量が増加するんじゃない?と思うかもしれませんが、
供給量、消費量が共に増加しているため、SvO₂の値は大きく変化しません。

一方で心拍出量が上昇した場合、全身に送られる血液の量は5Lを下回るということですので、
1分間で届けられる酸素の量が低下するということです。
つまり酸素供給量が低下します。

酸素供給量は低下しますが、酸素消費量は変化しないため、SvO₂の値は低下します。
つまり、酸素が欲しいのに全然来ない状態です。

  • 心拍出量は血液を全身に送る指標(酸素供給量に影響)
  • 増加すると酸素供給量が増加(SvO₂も増加)
  • 低下すると酸素供給量が減少(SvO₂も低下)

酸素化

酸素化というのは肺で血液に酸素を供給できているのかという指標です。
つまりPaO₂が高いのか、低いのかとうことです。
PaO₂の正常値は90~100mmHgと言われています。

PaO₂が高いと酸素化が良く、低いと酸素化が悪いという状態です。

酸素化が良い場合、全身に酸素を供給できる量が多くなるため、
仮に酸素をたくさん消費したとしてもSvO₂は低下しません

一方で酸素化が悪い場合は全身に酸素を供給できる量がそもそも少ないため、
酸素消費量が一定であってもSvO₂は低下します

これはそもそも酸素を送る量が少ないため、減少することでさらに酸素の量が減少するということです。

  • 酸素化(PaO₂)は肺で血液に酸素を供給できているのかという指標(酸素供給量に影響)
  • 増加すると酸素供給量が増加(SvO₂も増加)
  • 低下すると酸素供給量が減少(SvO₂も低下)

酸素消費量

酸素消費量は言葉の通り酸素の消費量の増減のことです。
酸素消費量は様々な要因で変化するのですが、SvO₂には直接影響します。

酸素消費量が多い時は全身に供給された酸素がどんどん消費されていくため、
SvO₂は低下します

一方で酸素消費量が少ない時は全身に供給された酸素がそこまで消費されないため、
SvO₂は増加します

酸素消費量の増減の一例は以下にまとめています。
酸素消費量増加
・シバリング
・発熱

酸素消費量低下
・低体温

  • 酸素消費量(酸素消費量に影響)
  • 増加すると酸素消費量が増加(SvO₂は低下)
  • 低下すると酸素消費量が減少(SvO₂は増加)

Hb

Hbはヘモグロビンのことです
酸素を全身に供給するためにはヘモグロビンと酸素が結合することが必要不可欠となります。

Hbは男女によって基準値が異なりますが、約12~18g/dLとなっています。

Hbが増加している場合は全身に血液を供給できる量が増加するため、SvO₂も上昇します

一方でHbが低値である場合は酸素がたくさん供給されていたとしても、酸素を運ぶヘモグロビンが少ないため、
全身に酸素を供給することができなるため、SvO₂は低下します

  • ヘモグロビン(酸素供給量に影響)
  • 増加すると酸素供給量が増加(SvO₂は増加)
  • 低下すると酸素供給量が減少(SvO₂は低下

まとめ

今回はSvO₂について紹介しました。
SvO₂は酸素の供給と需要のバランスがわかる指標だということが分かったと思います。

SvO₂の低下があれば、酸素の供給が不足しているか、酸素の消費量が増加しているかのどちらかが考えられます。
もちろんSvO₂だけでは判断することができませんが、
心拍出量、酸素化、Hb、酸素消費量のどれかが影響していることは間違いありません。

もちろん1つだけの影響でSvO₂が変化するわけではなく、
2 つ、3つと絡んでますます悪化するということもよくあります。

最も重要なのは早期発見し、原因の追究と根本的治療です。

例えSpO₂が高いから酸素化は問題ないと思っていても、心拍出量やHbが低下していればそもそも組織は酸素化できないため、注意が必要です。

ICUで集中管理する際はSvO₂に対してもしっかり観察しましょう。

一緒に頑張りましょう!

  • SvO₂は酸素の供給と需要のバランスがわかる指標
  • 低下すると酸素供給量が減少、酸素消費量が増加している可能性がある
  • 影響因子は心拍出量、酸素化、Hb、酸素消費量