以前の記事でスワンガンツカテーテルの検査について紹介しました。
スワンガンツカテーテルで測定できる重要な項目として
PCWP(肺動脈楔入圧)、CI(心係数)を紹介しましたが、これが活用できるのがフォレスター分類です。
フォレスター分類って何?
どんな時に使えるの?って方は今回の記事をぜひ参考にしてほしいです。
フォレスター分類は心臓の血行動態がわかる重要な評価項目ですし、
スワンガンツカテーテルはフォレスター分類で評価するために行うといっても
過言ではありません。
今回はそんなフォレスター分類について紹介していきます。
フォレスター分類とは
フォレスター分類とは心不全の重症度の指標となる分類です。
Ⅰ~Ⅳ群の4つに分類されており、必要な情報は
肺動脈楔入圧(PCWP)
心係数(CI)
の2種類となっています。
この2つの情報はスワンガンツカテーテルから測定することができます。
スワンガンツカテーテルについてはこちらの記事をご参照ください。
フォレスター分類でわかること
フォレスター分類を分ける為の基準として
PCWPが18mmHg以上か以下か
CIが2.2L/min/m²以上か以下か
という分類方法があります。
患者さんの状態はこの分類で分けるとしてどこに分類されるのかということで
治療方針が決まります。
PCWPが18mmHg以下かつCIが2.2L/min/m²以上であれば
患者さんの心機能は問題ないということになります。
しかし、PCWPが18mmHg以上であれば肺うっ血の可能性があるという診断を受けるため、
この場合はフォレスター分類のⅡ群に該当します。
また、CIが2.2L/min/m²以下であれば抹消循環不全の可能性があるという診断を受けるため、
この場合はフォレスター分類のⅢ群に該当します。
PCWPが18mmHg以上、CIが2.2L/min/m²以下の両方に該当する場合は
肺うっ血と抹消循環不全が合併している可能性があるため、
フォレスター分類のⅣ群に該当します。
この状態が最も危険な状態です。
PCWPがなぜ肺うっ血の指標になるのか、CIがなぜ抹消循環不全の指標になるのかはこの後説明していきます。
PCWP
PCWPは左心系の機能評価ができる値であり、正常値は6~12mmHgとなっています。
しかし、スワンガンツカテーテルで測定した結果、18mmHg以上となっていた場合、
肺うっ血を引き起こしている可能性が高いです。
PCWPが上昇しているのは、つまり左心室内に血液が多く貯留している状態であり、
左心室から全身に血液を送ることができない状態を表しています。
この時、左心室に血液を送ることができない左心房
左心房に血液を送ることができない肺
といった感じで肺に血液が貯留している=肺うっ血になっている可能性が高いです。
CI
CIというのは心拍出量を個々人体格差を補正するために体表面当たりに換算した
心機能を表す指標ということで、正常値は2.5~4.2L/min/m²となっています。
この値が2.2以下となっている場合、末梢循環不全が疑われます。
CIが低下するということは、心臓の拍出量が低下しているということを意味するため、
循環血液量が不足しているか左心室の拍出機能が低下しているということです。
循環血液量が不足していることが原因でCIが低下している場合は、
基本的な抹消循環不全となるのですが、
ここにPCWPが18mmHg以上であると肺うっ血の可能性があるため、
循環血液量が不足しているというわけではなく、左心室の拍出機能が低下しているということになります。
フォレスター分類ごとの治療法
フォレスター分類によって分けられた分類によって治療法が異なります。
Ⅰ群に該当する場合は正常であるため、基本的に治療は行われず、心配であれば安静にするのが最も適切です。
今後の状態次第では、Ⅱ群、Ⅲ群と変化する可能性はあるのでその点は注意する必要があります。
Ⅱ群に該当する場合は肺うっ血の状態であるため、血液が必要以上にあるということが想像できます。
そのため、過剰な水分を排出するために利尿薬が使用されます。
また、血管の収集が原因で肺うっ血が生じている場合は血管拡張薬が使用されます。
Ⅲ群に該当する場合は抹消循環不全であるため、不足している血液を補うために補液する必要があります。
また、心臓の拍出する力が弱まっている場合は強心薬を使用し、心臓の拍出力を増加させ、
抹消まで血液が行き渡るようにします。
Ⅳ群に該当する場合は、肺うっ血、末抹循環不全を同時に改善していく必要があります。
しかし、この状態ですと、患者さんの状態がかなり悪化している状態である事が多く、
補助循環の適応になります。
基本的に最初に選ばれるのはIABPのイメージがありますが、適時IMPELLAやPCPSなども候補に挙がります。
可能であればⅣ群になる前になにかしら治療を行いたいのですが、
私の経験ではスワンガンツカテーテルをする患者さんは結構な割合で
Ⅳ群かもう少しでⅣ群というレベルに悪化している人が多いです。
もちろんⅣ群だからと言ってすぐさま補助循環を使用しますということにはならないですが、
血圧が許容できるレベル以上に低下している場合は検討されます。
この辺は医師の判断によるので何とも言えませんが、最高血圧が60台になってくると
かなり高い可能性で補助循環を入れることになります。
まとめ
今回はフォレスター分類について紹介してきました。
フォレスター分類はスワンガンツカテーテルの検査で求められるPCWP、CIの数値で
患者の心機能を評価することができ、次の治療法も考えることのできる非常に有益な心機能評価です。
フォレスター分類は循環器症例を判別するために基本的な分類の一つとなるため、
循環器系の業務に携わる臨床工学技士も知ってて当然の知識となります。
一緒に頑張りましょう!