皆さんは心臓外科手術と聞いたら思い浮かべるのは、
胸骨正中切開という、胸をパカーンと開けて大きな傷も残る大手術のような
イメージではないでしょうか?
実際、現在の医療現場でも心臓外科手術といえば胸骨正中切開です。
しかし、新たな心臓外科手術の形としてMICS(ミックス)という手術法が確立されています。
現代医療の最先端の技術を屈指したMICSという手術方法について紹介していきます。
MICSとは
まず、MICSとは低侵襲心臓外科手術と呼ばれる方法です。
その言葉の通り、最大の特徴は右、または左の胸部に5cm程度切開し、手術を行うというものです。
ちなみに従来の胸骨正中切開では喉元からみぞおちにかけて20~30cmの大きな傷が残ります。
ここ数年、医療技術の発達により、手術は怖いもの、大がかかりなもの、入院期間が長いという
イメージが本当に減ってきました。
一般の方にはドラマの影響でそんなことはないのかもしれないですが、
可能な限り低侵襲というのが今の主流です。
正直、私は心臓外科手術に関しては不可能だと思っていたのですが、
可能になるっていうのは凄いですね。
ちなみにMICSは人工心肺装置を使用する際、
大腿静脈から脱血し、大腿動脈へと送血する形になります。
従来の胸骨正中切開による方法では、血管が露出しているため、
そのまま上、下大静脈や右心房から脱血し、上行大動脈へ送血するパターンが多いです。
MICSのメリット
MICSのメリットは主に3つあります。
特に1つ目の患者さんの負担が少ない、低侵襲な手術というのは現在求められているものです。
MICSは傷が小さく抑えられるため、出血量が少なかったり、痛みが少なかったりと
メリットがかなりあります。
数ある診療科の手術の中でも特に負担の多い部類である心臓血管外科の胸骨正中切開。
これが低侵襲になると本当に多くの人が救われると思います。
2つ目は入院期間が短いという点です。
特に50代の社会人にとって早期社会復帰が可能な点は非常に大きいです。
現に、私もMICSを行う患者さんは基本的に若い方が多いです。
もちろん、治療内容次第ではMICSをせずに
最初から胸骨正中切開で行くというパターンもありますが、
医師からしても可能な範囲であればMICSで手術したいというのが本音ではないでしょうか。
3つ目は傷が目立たないという点です。
これは特に女性が気になると思うのですが、MICSは第4、5肋間に
小さな傷が残るだけですので、目立たないし、
乳房が大きい患者さんなら隠れてしまうこともあります。
これも手術後の患者さんのQOL向上につながる大きなメリットと言えるでしょう。
MICSのデメリット
患者さんにとってメリットばかりであるMICSですが、唯一といっても過言ではないデメリットが
手技が難しいという点です。
まあ、私は執刀医になったことがないのでわからないのですが、
人工心肺越しに術野を見ているとすごく難しそうです。
そもそも、傷口が小さい=狭いということです。
なおかつ肋骨の間からなので、心臓までの距離は結構あります。
そのため、術野としては狭く、深いということです。
あれだけ狭い視野の中、よく大動脈遮断とか平気で言えるなと思います。
こういう背景から、MICSができる医師がそもそも少ないというのが現状です。
まとめ
今回は心臓外科手術の手法の一つであるMICSについて紹介してきました。
小さな傷で心臓外科手術ができるという画期的な方法です。
問題点となる人工心肺装置による体外循環を大腿動静脈に
カニューレを挿入して行うという方法で解決しました。
このような低侵襲の治療は今後必ず主流となってきますのでぜひ確認しておいてください。
内視鏡の発達でここまで医療業界が変化するなんて驚きです・・・
一緒に頑張りましょう!