皆さんは患者さんの緊急時に対応している時に、患者さんがどのような状態なのか把握していますか?
患者さんが生命の危機的状況でもあるショック状態の場合、私達臨床工学技士も緊急で対応する必要があります。
特に、補助循環を使用する場合はショック状態も適応となるため、
臨床工学技士として知識を持っておく必要があります。
今回はショック状態の概要はもちろん、臨床工学技士とかかわりの深いショック状態の種類についても
紹介していきます。
- ショックの種類がわかる
- ショック状態別の対処方法がわかる
ショックとは
まず、ショックとは様々な原因がありますが、定義としては
「生体に対する侵襲あるいは侵襲に対する生体反応の結果、重要臓器の血流が維持できなくなり、
細胞の代謝障害や臓器障害が起こり、生命の危機に至る急性の症候群」
ということです。
つまりショック状態というのは生命維持が困難になるほど危機的な状態であるということです。
ちなみに診断基準としては血圧が90mmHg以下、または平均血圧より30mmHg以上低下が大項目で、
それ以外に頻脈、徐脈、チアノーゼ、冷や汗などが複合することで診断されます。

この診断基準からもわかるように、ショックの原因というのは、血圧低下の原因と関係しています。
- 循環血液量の減少
- 心拍出量が減少
- 不適切な血管抵抗
ショック時の症状
ショック状態になった場合は血圧低下が生じるのですが、それ以外にも様々な症状が出現します。
基本的には血圧低下が原因として身体の反応によってさまざまな症状が出現します。
この症状が出現する一連の流れは以下のようにまとめられます。

この3種類の原因で血流が低下した場合、まず初めに臓器への酸素不足が生じます。
これ以外の症状は以下のものがあります。
- 頻呼吸
- 頻脈
- 顔面蒼白
- 冷や汗
- 尿量低下
- 脈拍触知不能
- 虚脱
特徴的な症状として、各臓器への酸素不足により延髄が反応し、頻呼吸を引き起こします。
これは呼吸を頻回に行うことで酸素不足を補なおうとする生体反応です。
また、血流不足による血圧低下に交感神経が反応し、頻脈、顔面蒼白、冷や汗などの症状が出ます。
これは血流低下による血圧低下を心拍出量の増加(頻脈)と血管抵抗上昇(顔面蒼白)で
上昇させようとする生体反応です。
ショックの分類について
ショックは病態によって4種類に分類されます。
- 循環血液量減少性ショック
- 心原性ショック
- 心外閉塞・拘束性ショック
- 血液分布異常性ショック
このショックの原因は血圧低下の原因とも関連しているのですが、
どのショックがどんな原因があるのかを紹介していきます。
循環血液量減少性ショック

循環血液量減少性ショックは出血などにより体内の循環血液量が低下することです。
つまり、循環血液量の低下がショックの原因となります。
ちなみにこの循環血液量は全体の1/3が失われたタイミングでショック状態に陥ります。
循環血液量低下の原因は主に大量出血と脱水や広範囲の熱傷などで、この原因によって循環血液量減少性ショックはさらに細分化できます。
- 出血性ショック→大量出血
- 体液喪失→脱水、広範囲熱傷など
循環血液量の減少は血球の減少を伴う出血性ショック、
細胞外液のみの減少で生じる体液喪失が原因として挙げられます。
- 循環血液量減少性ショックの原因は循環血液量の減少
- 原因によって出血性ショックと体液喪失の2種類に細分化できる
心原性ショック

心原性ショックは心臓の機能低下により心拍出量が低下することです。
つまり、心拍出量の低下がショックの原因となります。
心臓が原因の心拍出量低下の原因は主に心筋梗塞や心室細動などで、この原因によって心原性ショックはさらに細分化できます。
- 心筋性→心筋梗塞や狭心症など
- 機械性→僧帽弁閉鎖不全症や大動脈弁狭窄症など
- 不整脈→心室細動や心室頻拍など
心臓が原因で心拍出量低下は心筋がダメージを受けてしまい、心臓の拍出が悪くなる心筋性、
僧帽弁や大動脈弁といった弁機能が悪くなることで心臓の拍出が悪くなる機械性、
心室細動や心室頻拍といった致死性不整脈で心臓の拍出が悪くなる不整脈が原因として挙げられます。
- 心原性ショックの原因は心臓の機能低下による心拍出量低下
- 原因によって心筋性、機械性、不整脈の3種類に細分化できる
心外閉塞・拘束性ショック

心外閉塞・拘束性ショックは心臓以外の原因により心拍出量が低下することです。
つまり、心拍出量の低下がショックの原因となります。
心臓以外が原因の心拍出量低下の原因は、心臓にそもそも血液が届かなくなることや、
心臓が外部から圧迫されてしまい、心臓が収縮しにくくなることがあげられます。
この原因として代表的なのは以下の4つの症状です。
- 心タンポナーデ→心膜腔に血液が溜まることで圧迫し、心臓の拍出能低下
- 収縮性心膜炎→心膜が肥厚し、繊維化することで圧迫し、心臓の拍出能低下
- 重症肺塞栓症→肺動脈の血栓塞栓により、心臓の拍出能低下
- 緊張性気胸→肺に空気が流入し、拡張することで圧迫し、心臓の拍出能低下
症状によって対処する内容が異なるのがこのショックを対応する時の問題点となります。
肺が原因の疾患もありますが、それ以外であることも多く、原因の発見が困難です。
- 心外閉塞・拘束性ショックの原因は心臓以外よる心拍出量低下
- 代表的な疾患として心タンポナーデや重症肺塞栓症などがある
血液分布異常性ショック

血液分布異常性ショックは不適切な血管抵抗により血流が低下することです。
つまり、血流の低下がショックの原因となります。
不適切な血管抵抗というのは、今回の場合、血管が拡張している状態を意味します。
これは血管抵抗が不適切に低下していることを意味します。
血液分布異常性ショックになると血管が拡張しているため、血液の流れは緩やかになり、血圧が低下します。
つまり、血液分布異常性ショックの原因となる疾患は意図せずに血管が拡張される疾患だということです。
血管拡張の原因は主に敗血症やアナフィラキシーショックなどで、この原因によって血液分布異常性ショックはさらに細分化できます。
- 感染性ショック→敗血症など
- アレルギー反応→アナフィラキシーショック
- 神経原性ショック→脊椎損傷など
また、今までのショックと同様に血圧が低下するのですが、血液分布異常性ショックだけの特徴が、
顔面蒼白しないという点です。

顔面蒼白はショックの主症状としてありますが、これは血管抵抗の上昇、つまり、血管収縮による症状であるため、
今回のように血管が拡張している症状の場合は発症しません。
- 血液分布異常性ショックの原因は不適切な血管抵抗(血管拡張による抵抗低下)
- 代表的な疾患として敗血症やアナフィラキシーショックなどがある
- ショックの兆候である顔面蒼白は出現しない
まとめ
今回はショックの症状についてまとめました。
これらの症状が出現した場合、緊急で対応が必要となります。
特に、臨床工学技士はショック時の緊急措置して、ECMO(PCPS)を導入する際に関わることがあります。
また、心原性ショックの場合は、全ての分類に対して関わる機会があり、
当然知っておくべき知識となります。
今後、特に急性期領域で臨床工学技士を行っていく上で、必ず対応する機械があるショック状態の患者さんに
どのように対応するべきなのかを日々考える必要があります。
どのような処置ができるのかを知るためにもまずはショックについての基礎知識を付けましょう。
一緒に頑張りましょう!