救急の受け入れを行っている病院で勤務していると、突然「解離の患者さんが来た!」と
大騒ぎになることを聞いたことはないですか?
大動脈解離の患者さんであると緊急性が高いことが多く、放置していると死に至るため、
緊急OPEとなることがあります。
そのため、乖離という言葉に敏感になっている人も多いと思うのですが、
同じ乖離でも「あ、明日の朝一でOPEします」と、悠長なことを言ってる時ってあるくないですか?
もちろん根拠があって緊急性の有無を判断しているのですが、
そんなの分からないよって方いませんか?
今回は大動脈解離の患者さんの緊急度の確認方法について解説していきます。
これがわかれば患者さんの状態がわかります!
そもそも大動脈解離ってなに?大動脈の位置ってどこ?
まず、大前提として大動脈解離とは大動脈の血管壁が避けて、
血液の通り道が本来のものとは別の場所にできてしまった状態です。
そもそも大動脈には外膜、中膜、内膜の3つに層が分かれているのですが
このうち、中膜に亀裂が入ると血管に別の血液の入り口ができてしまいます。
この状態が解離です。
ちなみに解離によってできた血液の道は偽腔と呼ばれます。
大動脈解離が生じた際は裂ける場所によっても異なりますが、
突然胸部や背中に痛みが生じることが多いです。
大動脈の位置によって術式が変更されることがあります。
大動脈が大体どの位置にあるのかはしっかり把握しておきましょう。
解離部位で緊急度がわかる!スタンフォード分類
さて、ここからが本題の大動脈解離の緊急度の判断についてです。
この判断にはスタンフォード(Stanford)分類が用いられており、
この分類には主に、A型とB型の2種類があります。
一番手っ取り早いのはこの分類から判断することです。
A型は大動脈解離のうち、上行大動脈に達しているものです。
この分類に当てはまる場合は緊急で手術が必要な場合が多く、
1時間ごとに死亡率が1~2%ずつ上昇していき、
発症後1ヵ月程度で80%を超えるともいわれています。
なお、スタンフォードA型に関しては手術適応が基本で
手術内容としては人工血管置換術となります。
一方でB型は急性期に血圧を下げて安静にすることで、死亡率は大きく低下するため、
即座に手術というわけではありません。
とにかく、スタンフォードA型が来ればすぐにオペをやるぞというのは頭に入れておきましょう。
解離場所がさらに詳しくわかる!ドベーキ分類
解離部位は大きく分けて2種類ある事がわかったと思います。
しかし、スタンフォード分類よりもさらに細かく分かれた分類もあり、
それがドベーキ(DeBakey)分類です。
このドベーキ分類に関しては心臓血管外科の医師ぐらいしか用いない専門的な分類という
イメージを持ってもらって大丈夫です。
ただ、これを理解していると、手術の術式が大体見えてきます。
分かりやすいのがドベーキ分類のⅡ型とⅢa型です。
この2種類に関しては手術を行う場合、解離している位置が限定的であるため、
基本的には悩むことはありません。
ただ、Ⅰ型とⅢb型に関しては解離の範囲が大きく、どこまで治療するのかによっても
手術でカバーする解離部分の長さは分かれています。
とりあえずドベーキ分類と聞いたらⅠ型とⅡ型はやばいやつ、
特にⅠ型は解離範囲が広範囲かつ危険な場所だという認識を持っているとOKです。
まとめ
今回は大動脈解離の解離場所による分類、
スタンフォード分類とドベーキ分類について紹介しました。
特に、スタンフォード分類が緊急時によく用いられることがあるため、
A型は危険というのは必ず覚えておきましょう。
A型の場合は夜間でもほぼ必ず緊急手術となるため、判断が遅れないように聞いたらすぐに
人工心肺装置の準備を行うのが我々臨床工学技士の仕事です。
また、大動脈解離には解離場所の分類以外にも発症時期や
偽腔血流の状態によっても分類可能ですが、
手術の緊急度、術式がほぼほぼ予想の付く解離場所の分類を覚えるのが一番大切です。
大動脈解離を理解するための第一歩として
まずはスタンフォード分類、ドベーキ分類を覚えましょう。
一緒に頑張りましょう!