敗血症は、感染症が引き起こす全身性の重篤な炎症反応であり、迅速な診断と治療が患者の命を救う鍵となります。
臨床工学技士として、血液ガス測定を通じて患者の状態を正確に把握し、医師や看護師と連携することは、
現場での重要なミッションです。
その中でも、白血球数とC反応性蛋白(CRP)は、敗血症の評価において欠かせないバイオマーカーです。
これらの指標を理解し、臨床でどのように活かせるかを知ることで、初心者からベテランまで、
すべての臨床工学技士がより効果的にチーム医療に貢献できます。
この記事では、白血球数とCRPの基礎知識から、血液ガス測定との関連、敗血症評価における具体的な活用方法までを詳しく解説します。現場で即実践できる知識を、わかりやすくお届けします!
- 白血球数とCRPについて
- 感染症の重症度がわかる
- 敗血症の評価がわかる
白血球数とCRPの基礎知識
白血球(WBC)とC反応性蛋白(CRP)は、炎症や感染症の評価において重要なバイオマーカーです。
白血球は免疫系の主要な構成要素で、好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球の5種類に分類されます。
特に敗血症では、好中球の増加が顕著にみられることが多く、感染に対する体の急性反応を反映します。

一方、CRPは肝臓で産生される急性期タンパク質で、炎症や組織損傷に応じて急速に血中濃度が上昇します。
これらの指標は、敗血症の診断や重症度の評価に欠かせません。
- 白血球数
正常範囲は4,000~11,000/μL程度 - CRP
正常値が0.3mg/dL以下
敗血症では20,000/μL以上になることもあり、CRPは10mg/dLを超える高値を示すことが一般的です。
- 敗血症は、細菌、ウイルス、真菌などの病原体が血液中に侵入し、
全身に重篤な炎症を引き起こす病態 - 敗血症では、感染によって引き起こされた全身性の炎症反応によりCRPが上昇し、
病原体に対する防御反応として白血球数が増加する
これらの数値は、患者の状態を迅速に把握し、治療方針を決定する上で重要な役割を果たします。
臨床工学技士として、白血球数やCRPのデータを正確に理解することで、医師や看護師と連携し、
患者のモニタリングを効果的にサポートできます。
特に、血液ガス測定の現場では、これらの指標をリアルタイムで把握し、
異常値を迅速に報告することが求められます。
- 白血球は好中球の増加が敗血症の急性反応を反映
- CRPは炎症の程度を示し、敗血症で10mg/dL超の高値が一般的
- 血液ガス測定の現場で、異常値を迅速に報告することが重要
白血球数とCRPを臨床で活かす方法
白血球数とCRPは、敗血症の早期診断や治療効果のモニタリングに直接役立ちます。
敗血症は、感染に対する全身性の炎症反応が引き起こす重篤な状態であり、迅速な対応が生命予後に直結します。
臨床工学技士として、血液ガス測定装置を操作する際、これらの指標をどのように活用できるかを
理解することが重要です。
例えば、血液ガス測定では、動脈血の酸素分圧(PaO2)や二酸化炭素分圧(PaCO2)だけでなく、
pHや乳酸値も測定されます。
敗血症では乳酸値の上昇(2mmol/L以上)が重症度の指標となることが多く、
白血球数やCRPと合わせて評価することで、患者の全身状態をより正確に把握できます。
敗血症における乳酸値の上昇は、組織への酸素供給不足と、
酸素が十分あっても起こる好気的解糖の亢進という複数の要因が関与
乳酸値についてはこちらの記事を参考にしてください。
例えば、白血球数が異常に高く、CRPが急上昇している場合、敗血症の可能性を疑い、
医師に速やかに報告することが求められます。
また、連続モニタリングを行う場合、血液ガス測定の結果を時系列で追跡し、
白血球数やCRPの推移と関連づけることで、治療の効果や悪化の兆候を評価できます。
例えば、抗菌薬投与後にCRPが低下し、白血球数が正常範囲に戻る場合、治療が奏功している可能性が高いです。
一方、数値が改善しない場合は、感染源の特定や治療方針の見直しが必要となるでしょう。
臨床工学技士は、血液ガス測定装置の正確な操作とデータの解釈を通じて、敗血症患者の管理に貢献します。
特に、ICUや救急外来では、リアルタイムでのデータ提供が求められるため、迅速かつ正確な対応が不可欠です。
- 血液ガス測定の乳酸値(2mmol/L以上)と白血球数・CRPを組み合わせて敗血症を評価
- 時系列でのデータ追跡で治療効果や悪化の兆候を把握
敗血症の評価における白血球数とCRPの役割

敗血症の評価では、白血球数とCRPは診断基準の一部として使用されます。
敗血症の定義(Sepsis-3)では、
SOFAスコア(Sequential Organ Failure Assessment)やqSOFAを用いた評価が推奨されますが、
白血球数とCRPは補助的な指標として重要な役割を果たします。
特に、初期評価において、これらのマーカーは感染の存在や重症度を迅速に示す手がかりとなります。

- SOFA (Sequential Organ Failure Assessment)
主にICUにおける重症患者の臓器不全の程度を評価し、予後を予測するために用いられる
敗血症の診断基準の一つとしても用いられる
評価項目は呼吸器、心血管系、肝臓、凝固系、腎臓、中枢神経系の6つの臓器システムを評価
各臓器システムの機能に基づいて0〜4点で採点され、その合計点(0〜24点)で評価
ICU入室時のスコアが9点以下の場合は死亡率33%以下
11点以上の場合は95%
qSOFAより詳細な評価が可能 - qSOFA (quick SOFA)
敗血症のリスクが高い患者を早期に識別するために用いられるスクリーニングツール
意識状態の変化: Glasgow Coma Scale (GCS) < 15
呼吸数: 22回/分以上
収縮期血圧: 100 mmHg以下
上記の3項目のうち、2つ以上に該当する場合に敗血症のリスクが高いと判断
血液検査などを必要とせず、迅速に評価
白血球数の異常は、敗血症の急性期に顕著です。
好中球の増加(左方偏移)や、逆に白血球減少症(特に免疫抑制状態)が見られる場合、
敗血症の可能性を考慮する必要があります。
CRPは、炎症の程度を反映し、敗血症の進行や治療効果のモニタリングに有用です。
例えば、CRPが持続的に高値の場合、感染源がコントロールされていない可能性があり、
追加の検査(画像診断や培養検査)が必要となります。
- 画像診断
- X線検査
胸部X線は肺炎などの呼吸器感染症の評価に用いられる
- X線検査
- 培養検査
- 血液培養
血液中に病原体が存在するかどうかを確認するために行われる
陽性であれば、原因となっている菌の種類を特定し、
感受性試験(どの抗菌薬が有効か調べる検査)を行う - 喀痰培養
呼吸器感染症が疑われる場合に行われる - 尿培養
尿路感染症が疑われる場合に行われる - 便培養
消化器系の感染症が疑われる場合に行われる
- 血液培養
- その他の検査
- 炎症マーカーの再評価
CRP以外の炎症マーカー(プロカルシトニンなど)を再度測定し、
炎症の程度や細菌感染の可能性を評価 - 白血球分画
白血球の種類ごとの割合を調べることで、
感染症の種類(細菌性、ウイルス性など)の手がかりを得ることがある
- 炎症マーカーの再評価
臨床工学技士として、血液ガス測定を行う際には、これらの指標を総合的に評価する視点が求められます。
例えば、血液ガス測定で乳酸値が上昇している患者で、白血球数やCRPも高値であれば、
敗血症性ショックのリスクを考慮し、迅速な対応を促す必要があります。
さらに、患者のデータを医師や看護師と共有する際、単に数値を報告するだけでなく、
その臨床的意義を簡潔に伝えることが求められます。
例えば、
「白血球数が25,000/μL、CRPが15mg/dLで、乳酸値が3.5mmol/Lです。
敗血症の可能性を考慮した評価が必要です」
と報告することで、チーム医療に貢献できます。
- 白血球数とCRPは敗血症の初期評価で感染の存在や重症度を示す
- CRPの高値持続は感染源未制御の可能性を示唆し、追加検査が必要
まとめ
白血球数とCRPは、敗血症の評価において欠かせないバイオマーカーであり、
臨床工学技士としてこれらの指標を正確に理解し、血液ガス測定のデータと統合することで、
患者の状態を的確に把握できます。
白血球数は免疫反応の動態を、CRPは炎症の程度を反映し、両者を組み合わせることで
敗血症の診断や治療効果のモニタリングが可能となります。
特に、血液ガス測定を通じて得られる乳酸値やpHなどのデータと関連づけることで、
敗血症の重症度評価や治療方針の決定に貢献できます。
臨床工学技士として、正確なデータ収集と迅速な報告を通じて、チーム医療の一翼を担うことが求められます。
白血球数やCRPの変化を追い、異常値を適切に伝えることで、患者の予後改善に直接貢献できるでしょう。
敗血症は時間との戦いであり、臨床工学技士の専門知識と技術が、命を救う鍵となるのです。
一緒に頑張りましょう!
