臨床工学技士の皆さん、患者さんの状態を正確に把握するために使用される、エドワーズライフサイエンスの
ビジランスヘモダイナミックモニターをご存知ですか?
このモニターは、複雑な血行動態データをシンプルに可視化し、患者さんの命を守るための重要なツールです。
この記事では、ビジランスモニターの基本機能から、臨床現場での具体的な活用法、さらには実践のポイントまでをわかりやすく解説します。
ビジランスを活用することで、患者さんの安全をさらに強化し、自信を持って業務に取り組めるようになります!
不安な方はぜひ見てください!
- ビジランスについて
- ビジランスの活用方法について
ビジランスとは?
エドワーズライフサイエンスのビジランスヘモダイナミックモニター(以下、ビジランス)は、
スワンガンツカテーテルやオキシメトリーカテーテルと組み合わせて使用され、
患者の血行動態をリアルタイムで監視する先進的なデバイスです。
スワンガンツカテーテルの使用が必要不可欠となりますので、スワンガンツカテーテルについては
こちらの記事をご参照ください。
このモニターは、心拍出量(CO)、混合静脈酸素飽和度(SvO2)、全身血管抵抗(SVR)など、
複雑な血行動態データをシンプルに表示し、
臨床工学技士や医療スタッフが迅速な意思決定を行えるようサポートします。
ビジランスの測定項目は多数あります。
一部抜粋して紹介させていただいておりますが、しっかりと校正を行うことで
すべての値を測定することが可能です。
詳細は後述させていただます。
- 連続心拍出量(CCO,Continuous Cardiac Output)
心臓が1分間に送り出す血液量(L/min) スワンガンツカテーテルで測定 - 連続心係数(CCI, Continuous Cardiac Index)
心拍出量を体表面積で補正した値(L/min/m²) CCO/ BSA - 混合静脈酸素飽和度(SvO2, Mixed Venous Oxygen Saturation)
全身の酸素供給と消費のバランスを示す指標(%)スワンガンツカテーテルで測定 - 右心室駆出分画(RVEF, Right Ventricular Ejection Fraction)
右心室の収縮能力を示す割合(%) SV / EDV - 右心室終末拡張期容積(EDV, End-Diastolic Volume)
右心室の拡張期における血液量(mL) SV / (RV)EF - 肺動脈圧(PAP, Pulmonary Artery Pressure)
肺動脈の収縮期/拡張期/平均圧(mmHg)スワンガンツカテーテルで測定 - 肺動脈楔入圧(PAOP, Pulmonary Artery Occlusion Pressure)
バルーン閉塞機能を通じて測定される左心房圧の推定値(mmHg) スワンガンツカテーテルで測定
急性期医療や心臓外科手術の現場では、患者の状態が急変するリスクが高いため、
ビジランスモニターのリアルタイム監視機能は欠かせません。
- ビジランスモニターは血行動態データをリアルタイムで監視
- スワンガンツカテーテルと連携し、CO、SvO2などを表示
ビジランスのセットアップ方法

ビジランスモニターを正確に動作させるためには、セットアップ前の準備が重要です。
以下の手順で、機器と環境を整えましょう。
- ビジランスモニター本体
電源ケーブルやディスプレイが正常に動作することを確認 - スワンガンツカテーテル
長期留置用スワンガンツカテーテル使用 - オプティカルモジュール
SvO2測定に必要な場合、モニターに接続するモジュール - ケーブル類
モニターとカテーテルを接続する専用のインターフェースケーブル
液体浸入を防ぐため、ケーブルの損傷がないかチェック - その他
ヘパリン加生理食塩水、圧ライン、患者の身長・体重データ(CCI算出用)
準備が整ったら、ビジランスモニターをカテーテルと接続し、初期設定を行います。
以下のステップで進めましょう。
- 患者情報の入力
身長、体重、年齢を入力し、体表面積(BSA)を計算
これによりCCI(連続心係数)が正確に表示される - オプティカルモジュール、スワンガンツカテーテルケーブルの接続
ビジランスと各ケーブルを接続する - ゼロ点調整
ビジレオ側で動脈圧のゼロ点調整を行う - 測定モードを選択
CCO、SvO2、EDV(終末拡張期容積)など、必要なパラメータを選択 - 体内キャリブレーションを行う
PAP接続部から血液ガス測定行う
測定項目 SvO₂ Hb Hct - CVP、PAP出力
モニタ側にCVP、PAPを出力させる - ゼロ点調整
ビジランス側で動脈圧のゼロ点調整を行う
基本操作はこれで問題ありませんが、ビジランスを最大限活用するためには
追加で患者情報を入力する必要があります。
- MAP(平均動脈圧)
- MPAP(平均肺動脈圧)
- CVP(中心静脈圧)
- PAWP(肺動脈楔入圧)
バルーンを膨らませて出力 - HRavg(平均心拍数)
これらの数値を入力することで、SVR(体血管抵抗)やPVR(肺血管抵抗)などの値を測定することが可能です。
- カテーテルとモニターを正しく接続し、緩みや液体浸入を防ぐ
- 患者情報を入力し、CCI算出のための正確なBSAを設定
- キャリブレーションを丁寧に行う
ビジランスモニターの基本活用:血行動態のリアルタイム監視
ビジランスモニターは、スワンガンツカテーテルやオキシメトリーカテーテルと組み合わせて、
連続心拍出量(CCO)、心係数(CCI)、混合静脈酸素飽和度(SvO2)などの
血行動態データをリアルタイムで提供します。
これを活用することで、患者の状態を即座に把握し、適切な介入をサポートできます。
- CCO(連続心拍出量)
心臓が1分間に送り出す血液量(L/min、正常値:4.0~8.0 L/min)
例えば、心臓手術後の患者でCCOが2.0 L/min未満の場合、
心原性ショックの可能性を疑い、医師に報告 - CCI(連続心係数)
CCOを体表面積で補正した値(L/min/m²、正常値:2.6~4.2 L/min/m²)
体格差を考慮し、患者間の比較を容易にする
CCIが2.0 L/min/m²未満なら緊急介入が必要 - ビジランスモニターのトレンド表示を活用
CCOやCCIの変化を過去30分~24時間で確認
急激な低下(例:CCIが3.5から2.5に)は、輸液や強心薬の調整を提案するきっかけに
- SvO2(混合静脈酸素飽和度、正常値:60~80%)
酸素供給と消費のバランスを示します
SvO2が50%以下の場合、酸素供給不足や心機能低下を疑い、医師と連携して対応 - EDV(右心室終末拡張期容積、正常値:100~160 mL)
心臓の容量負荷を評価
EDVが高い場合は過剰な輸液を、逆に低い場合は低血量を考慮
ビジランスを活用することで患者の循環動態を詳細に把握することができます。
- CCO(4.0~8.0 L/min)とCCI(2.6~4.2 L/min/m²)で心機能をリアルタイム監視
- SvO2とEDVで酸素供給や容量負荷を評価
ビジランスモニターの現場活用:チーム連携と患者管理
ビジランスモニターは、単なるデータ提供ツールではなく、
臨床工学技士が医療チームの中心で活躍するためのプラットフォームです。
以下に、現場での具体的な活用法を紹介します。
- リアルタイムデータで治療をサポート
- ビジランスモニターのデータ(例:CCOが低下、SvO2が50%以下)を基に、医師や看護師と
治療方針を検討
例えば、心臓手術後の患者でCCIが2.0 L/min/m²未満の場合、
ドブタミン投与や機械的循環補助(IABPなど)を提案 - データトレンドを活用し、変化のタイミングを共有
たとえば、CCIが徐々に低下している場合、輸液不足や心筋虚血を早期に疑う
- ビジランスモニターのデータ(例:CCOが低下、SvO2が50%以下)を基に、医師や看護師と
- 他職種への教育と情報共有
- 若手技士や看護師に対し、ビジランスモニターのデータ解釈を教える
たとえば、「SvO2が低下するのは酸素供給不足や消費過多が原因」と説明し、
具体例(例:敗血症でVO2増加)を交えて理解を深める - チームミーティングで、モニターのトレンド画面を投影し、
データに基づくディスカッションを促進。
臨床工学技士がデータ解釈のリーダーシップを発揮することで、チームの信頼を得られる
- 若手技士や看護師に対し、ビジランスモニターのデータ解釈を教える
- CCOやCCIのデータを基に、治療方針の提案でチームをサポート
- データ解釈を他職種に教育し、チーム連携を強化
まとめ
エドワーズライフサイエンスのビジランスヘモダイナミックモニターは、
臨床工学技士にとって、血行動態のリアルタイム監視を通じて患者の安全を支える強力なツールです。
この記事では、ビジランスモニターの基本機能、技士の役割、実践ポイントを詳しく解説しました。
ビジランスモニターを現場で効果的に活用することで、臨床工学技士は患者ケアの質を高め、
医療チームの信頼を築けます。日々の業務でこのツールを積極的に使い、患者さんの安全と笑顔を守りましょう!
なお、類似機器であるビジレオはまた違う特徴のある機器ですので、詳しくはこちらの記事をご参照ください。
一緒に頑張りましょう!
