知らないと危険!感度設定・波高値について

感度設定・波高値 について ペースメーカー

皆さんは植え込み型デバイスのチェックをする際に波高値についてどこまで確認していますか?

自己脈が出ているか、前回の測定値と誤差はないから問題ないとだけ思っている人も多いと思いますが
本当に問題ないでしょうか?

波高値は植え込み型デバイス上でペーシングを入れるか入れないかを決める重要な指標です。
この数値に異常が生じ、そのまま放置しておくと、期待しているような効果が発揮できず、
ただ胸の中に機械が入っているだけの状態になってしまいます。

今回は知らないとかなり危険な波高値について紹介します。

波高値とは

波高値はその名の通り、心電図上で検出されるP波、QRS波の高さです。
この値の最も低い部分がセンシング閾値とも呼ばれます。

この自己脈の最も低い値と言われていますが、どの機種も基本的に3回ほど自己脈を検知して
その平均値が波高値として測定されます。

私の経験上ですが、この3回の測定値で変動があれば再度検査することがおすすめです。
なぜなら、3回の測定で値が全く同じ、ほぼ変わらない(変わっても0.1,0.2mV程度)
であることが多いです。

この値はセンシング感度の設定の際に非常に重要となります。
センシング感度は植え込み型デバイス自体が心臓の動きを検知するために重要な設定で、
ここがうまく機能しないと
ペーシングが出現しない
自己脈が出ているのにペーシングが入る

といった現象が起きます。

波高値は心房で1mV、心室で10mVが正常値と言われており、
センシング感度は測定された波高値の1/2~1/3以下に設定する必要があります。

つまり、波高値が1mVであった場合、感度は0.5mV以下にする必要があります。
ちなみに波高値が10mVであった場合、感度を5mVにするのではなく、2mV程度で問題ありません。

基本的に感度はその機種ごとの基準となる設定値より上げることは少なく、
基準の設定値だと感度が波高値の1/2~1/3以下にならない場合に初めて設定を変更します。

これをマージンが取れていないとも言ったりします。
今後デバイスのチェックを行う際に感度が波高値の1/5以下になっているような設定もありますが、
低い分には問題ないことが多いです。

ただ、絶対にそうとは言い切れないので感度の設定が低すぎること、
高すぎることの問題点についても紹介していきます。

感度が鋭い場合(オーバーセンシング)

まずは感度が高い場合です。
これは感度が鋭いともいうのですが、適正値が1mVとすると、
0.5mVや0.3mVで感度設定しているような状態です。

例えば心室の感度が鋭すぎる設定になった場合、
通常のVs(心室の自己脈)以外にもT波などでもVsと検知してしまう状態のことす。
この状態をオーバーセンスと言います。

オーバーセンスの具体例としては
AAIやVVIなどの場合、ペーシングが入らなくなる。
(自己脈が出ていると勘違いするから)
DDDの場合、心房オーバーセンスすると間違ったタイミングでVp(心室ペーシング)が入る
(P波以外の場所で心房の自己脈が出たと勘違いするから)
という事例があります。

基本的には間違ったタイミングで自己脈が出ていると判断することがオーバーセンシングです。
最も怖いのはペーシングが入らない可能性がある点で、
徐脈の患者さんでペーシングが必要な場合、重篤な症状を引き起こす原因になりかねないので
注意が必要です。

対策としては感度を下げることです。
つまり0.3mVで感知していた場合は0.5mVにしてみるといった感じです。

また、リードの位置や損傷、本体の接続不良によるセンシング不全を引き起こしている場合があります。
この状態になると、そもそも感度の設定以前にデバイスでの自己脈の検知が困難になるため、
筋電位やノイズをオーバーセンシングしている場合は、リード抵抗値の確認も必要です。

感度が鈍い場合(アンダーセンシング)

オーバーセンシングが危険なので、感度はできるだけ波高値の1/10程度にしていたほうがいいのでは?
とか考えた人もいるのではないのでしょうか?
感度は波高値の1/2~1/3が適正値と言われていますが、一つはオーバーセンシングを防ぐためです。
ではもう一つはというと、アンダーセンシングを防ぐためです。

これは感度が低い場合です。
これは感度が鈍いともいうのですが、適正値が1mVとすると、
5mVや7mVで感度設定しているような状態です。

例えば心室の感度が鈍すぎる設定になった場合、
通常のVsを全く検知せずにVpを入れる状態のことす。
この状態をアンダーセンスと言います。

アンダーセンスの具体例としては
VVIでVsが感知できず、RonTを引き起こす
という事例があります。
このRonTはT波の上にVpが入る状態で、心室細動(VF)を引き起こす非常に危険な状態になるため、
気を付ける必要があります。

基本的には自己脈が出ていることが判断できないことがアンダーセンシングです。
最も怖いのはRonTになる可能性がある点です。

対策としては感度を上げることです。
つまり5mVで感知していた場合は3mVにしてみるといった感じです。

また、リードの位置や損傷、本体の接続不良によるセンシング不全を引き起こしている場合があります。
この状態になると、そもそも感度の設定以前にデバイスでの自己脈の検知が困難になるため、
頻繁にアンダーセンシングする場合は感度だけではなく、リード抵抗値の確認も必要です。

まとめ

今回は波高値について紹介してきました。
植え込み型デバイスの感度を設定するためには必須の測定値となるこの値を適切に検知する必要があります。

測定できたから何でもいいという甘い考えではオーバーセンシングやアンダーセンシングの対応が
困難になります。

どちらも危険な状態であり、デバイスが本来の機能を発揮しない可能性もあるため、
適切な値を設定できるようにしましょう。

一緒に頑張りましょう!