皆さんは大動脈弁や僧帽弁の置換術と聞くとどのような手技を思いつきますか?
一般的に従来の方法であれば開胸後、心臓を停止させ、人工心肺装置を用いて体外循環を行っている最中に
弁置換を行うというものが一般的でした。
しかし、そんな開心術もMICSと呼ばれる手技が出てき始め、低侵襲で行えるような時代になりました。
そんなMICSも人工心肺装置を用いる手技ではあるのですが、医療の発展とはすさまじいもので、
弁置換術はカテーテルで行う時代がやってきました。
一体どんな手技なのか?
一体どんなメリットがあるのか?
今回は最新の手術手技であるTAVI、MitraClipについて紹介していきます。
MICSについてもこちらの記事をご参考にしてください。
TAVIについて

まず、TAVI(タビ)について説明していきます。
TAVIは経カテーテル大動脈弁置換術のことで、主な適応としては大動脈弁狭窄症です。
大動脈弁狭窄症は加齢に伴って増加する病気で、左心室から全身へ血液を送る際に妨げとなってしまい、
心不全の原因として認識されている症状です。
また、自然回復はせず、治療が必要となるため、放置しておくと心不全の悪化を引き起こし、
ショック状態を引き起こすとても危険な状態となります。
そんな大動脈弁狭窄症に対する治療としてTAVIが選択されます。

TAVIの治療方法は
①大腿動脈からカテーテルを挿入する
②大動脈弁にカテーテルを用いて生体弁を移動させることができればバルーンを拡張させ留置する
③生体弁留置後はカテーテルを抜き取る
という流れです。
生体弁は留置直後から患者さんの新たな弁として機能します。
アプローチ部位としては大腿動脈が一般的ですが、鎖骨下動脈や心尖部からアプローチすることもあります。
- TAVIは大動脈弁狭窄症が適応
- アプローチ部位は大腿動脈(鎖骨下動脈や心尖部)
- 大動脈弁でバルーンを当て、生体弁に置換させるカテーテル治療
MitraClipについて

つぎは、MitraClip(マイトラクリップ)について説明していきます。
MitraClipは経皮的僧帽弁クリップ術のことで、主な適応としては僧帽弁閉鎖不全症です。
僧帽弁閉鎖不全症は左心房への逆流が生じる病気で、左心室へ送り込める血液の量が減少するため、
心不全の原因として認識されている症状です。
また、自然回復はせず、治療が必要となるため、放置しておくと心不全の悪化を引き起こし、
ショック状態を引き起こすとても危険な状態となります。
そんな僧帽弁閉鎖不全症に対する治療としてMitraClipが選択されます。

MitraClipの治療方法は
①大腿静脈からカテーテルを挿入する
②シースを右心房から左心房に挿入する
③僧帽弁の逆流が最も多い部分にクリップを移動させ閉じる
④カテーテルからクリップを切り離し抜去する
という流れです。
クリップは留置後から3ヵ月程度で患者さん細胞がクリップに膜をはり、さらに固定します。
- MitraClipは僧帽弁閉鎖不全症が適応
- アプローチ部位は大腿静脈
- 僧帽弁で逆流している部分をクリップで止めるカテーテル治療
TAVIとMitraClipのメリット
TAVIとMitraClipについてここまで紹介してきましたがここからはこの2つの手術のメリットについて紹介します。
まず、メリットは
患者さんの負担が少ない、つまり低侵襲で行えるという部分です。
これは、入院期間が短く、早期の社会復帰が可能になるという患者さんのQOL向上が期待できるという意味ですが、
このほかにも心臓手術だからこその最大のメリットがあります。
それが、外科手術が行えない、リスクが高い場合にも低侵襲のため適応できるということです。
心臓外科手術による開心術は患者さんの負担がかなり大きく、手術のダメージが大きく、
手術が成功した後もなかなか回復せずにそのまま亡くなってしまうという症例も数少なくありません。
そのため、特に高齢者に対しては非常に危険な手術であることは言うまでもありません。
そんな心臓外科手術に新たな変化をもたらしたのがカテーテルを用いた弁置換術です。
ちなみに弁置換がカテーテルで行うのが困難な場合は心臓外科手術が適応されます。
仮にTAVIやMitraClipの治療中に進行が困難となり、
開心術に術式変更しなければいけなくなる可能性も0ではありません。
そのため、TAVIやMitraClipの症例であっても人工心肺装置のスタンバイはしておくのですが、
手術がうまく行けば使用せずに済みますし、
患者さんにとっても低侵襲の手術で終わるため、一番いいです。
まとめ
今回は最先端の医療技術を集結させた低侵襲手術であるTAVI、MitraClipについて紹介しました。
どちらも弁置換術の新たな術式で、心不全の根本的治療を行えます。
心臓外科手術は患者さんの負担が大きく、適応疾患ではあるが手術が行えず、心不全が悪化してしまう・・・
なんてことも多くありましたが、この2つの手術がもっと広まれば患者さんの未来を変える
画期的な術式になっていくのではないでしょうか?
TAVIは2013年10月、MitraClipは2018年4月に保険適応されて以降、全国で症例数も増加しています。
そして今もなお透析患者やTAVI後に再度TAVIなど単純な手術症例ではない場合の保険適応の幅も増加しています。
まだまだ発展途上の治療法ですので今後さらなる発展が期待できます。
皆さんも最先端の手術方法を知っておくのもいいのではないでしょうか?
一緒に頑張りましょう!
- TAVIは大動脈弁狭窄症に適応
- MitraClipは僧帽弁閉鎖不全症に適応
- 開心術が困難な患者に対しても低侵襲で行えるため有効