緊急透析を行う理由が分からない全ての方へ
―なぜ透析が必要なのかを把握することが重要 ―
ICUで勤務中、敗血症で血圧が不安定な患者さんのモニターを前に
「このデータ、そろそろ透析が必要なのかな?」と一人で迷ったことはありませんか。
透析室とは違い、急性期では刻一刻と変わるバイタルや血液データから、
導入のタイミングを素早く察知する力が求められます。
先輩から「透析回せるように準備しておいて」と指示が出る前に、
自分の中で確かな「基準」を持っておきたいですよね。
この記事では、現場で迷いやすい急性腎障害(AKI)の捉え方や、
緊急で導入を検討すべき4つの具体的な判断軸について、臨床工学技士の視点でわかりやすく解説します。
- 急性期特有の「透析が必要な病態」とAKIの深刻さが理解できる
- 数値で判断できる!緊急導入を検討すべき4つの「絶対適応」がわかる
- バイタルや胸部レントゲンから「除水のリスク」を予測する視点が身につく
AKIについて

まず、ICUで早期の透析導入が必要となるのが急性腎障害、通称AKI(Acute Kidney Injury)です。
ちなみに腎障害には慢性腎障害の場合もあり、急性期か慢性期かで対応の緊急性が異なります。
AKIは敗血症、急性肝不全、急性呼吸不全、などの多臓器不全の一分症として発症するものです。
特に敗血症からの透析導入するレベルのAKIになった場合、死亡率は50%とかなりの高値になると言われています。
敗血症は何らかの細菌やウイルスに感染する感染症が原因となる疾患です。
細菌が増殖し、炎症を起こすことで臓器に障害が発生し、この多臓器への障害が腎臓にも影響した状態がAKIです。
このまま放置しているとショック状態になる危険性もあります。
この場合、血圧が低値がある事が多く、CHDFのような持続的な透析が行われることが多いです。
- AKIは多臓器不全の一種で急性期の腎機能障害
- 腎機能障害には急性期の場合と慢性期の場合がある
- AKIの場合はCHDFなどの持続的な透析が施行されることが多い
AKIの絶対適応
AKIが発症した場合、絶対適応となる疾患は以下の4種類です。
①高K血症
②重症代謝性アシドーシス
③尿毒症
④溢水
なお、相対適応については以下の3種類です。
①乏尿
②急性薬物中毒
③末期腎不全
これらの疾患に共通して言えることは、循環動態が不安定な症例や頭蓋内圧亢進、
高度な電解質異常のどれかに該当しているということです。
高K血症
高K血症はカリウムの値が5.5mEq/L以上になると診断される電解質代謝異常です。
カリウムは通常であれば尿として排泄されるのですが、
AKIにより腎機能が低下した場合はKの値が上昇してしまいます。
高K血症により不整脈が誘発され、最悪の場合心停止する危険性があります。
緊急で透析治療を行う場合の判断基準は6mEq/L以上の場合です。
高K血症についてはこちらの記事でより詳しく解説しています。
- Kが6.0mEq/Lの場合は緊急で透析導入が必要(原因が代謝性の場合)
重症代謝性アシドーシス
重症代謝性アシドーシスは体内の水素イオン(H⁺)の濃度が上昇し、重炭酸イオン(HCO³⁻)の濃度が
低下することによりpHがアシドーシスが傾く状態です。
(pH7.35以下)
アシドーシスになると細胞機能の様々な障害が引き起こされ、
心機能低下に伴う低血圧や致死性不整脈などを引き起こします。
緊急で透析治療を行う場合の判断基準は7.2以下の場合です。
代謝性アシドーシスについてはこちらの記事でより詳しく解説しています。
- pHが7.15以下の場合は緊急で透析導入が必要(原因が代謝性の場合)
尿毒症
尿毒症は腎臓の機能が著しく低下して体内に老廃物が溜まることで起こる状態です。
尿毒症は尿量が減ったり、浮腫などの原因にもなり、高K血症も含まれます。
尿毒症はBUNが80~100mg/dL以上になった場合は尿毒症が疑われます。
基準値は8~20mg/dLであるため、基準値から大幅に逸脱しています。
緊急で透析治療を行う場合の判断基準はBUN100mg/dL以上の場合です。
ただし、慢性腎不全(CKD)の場合は元々BUNが高値であるため、
必ずしも緊急で透析を行うというわけではありません。
- BUN100mg/dLの場合は緊急で透析導入が必要
溢水

溢水とは体内の水分が過剰となり、体液のバランスが取れなくなった状態を指しています。
正常であれば尿を排泄することで過剰な水分は排泄されるのですが、
腎機能が低下した場合は溢水の症状が出ることがあります。
これは浮腫や高血圧の原因にもなるのですが、その中でも危険な症状の一つが肺水腫です。
肺水腫の状態は患者さんの呼吸状態が悪化する原因になります。
なぜなら、肺の中に水が溜まることにより、患者さんが自身の肺で酸素化がしにくくなるからです。
酸素投与でも酸素化が改善しない溢水では早急に除水が必要となります。
そのために透析を行う必要があります。
ただし、注意点が一つあり、溢水は体内の水分が血管外や血管外に移動することが原因です。
特に肺水腫は血管外に水分が移動することが原因であり、
この状態で除水を行うと、ただでさえ少なくなった体内の水分をさらに除水することになります。
血圧低下の原因になる恐れがあるため、この状態での除水は非常に危険です。
ただし、これも患者さんの状態にもよるのですが、肺水腫があまりにもひどい場合はリスクを
とってでも除水することがあります。
肺水腫でも除水が可能かどうかの確認は心胸比(CTR)で確認する必要があります。
CTRが50%以上の状態は基本的に体内に水分が過剰にある状態ですので除水が必要ですが、
CTRが30%程度になっていれば体内水分量が明らかに減少しているため注意してください。
CTRについてはこちらの記事でより詳しく解説しています。
- 溢水(肺水腫)が悪化し、酸素化が低下した場合は除水が必要
- CTRが低下している場合は血圧低下の危険があるため注意
相対適応の疾患について
相対適応の疾患については
①乏尿
②急性薬物中毒
③末期腎不全
の3種類があります。
どの状態も緊急で透析が必要というわけではありませんが、必要になる可能性は高いです。
ただし、乏尿の場合は改善する可能性もあり、この状態から悪化した場合は無尿という状態になり、
尿毒症や高K血症のリスクが高まります。
急性薬物中毒は症状次第ではありますが、一時的に透析を行う可能性はあります。
ただし、急性薬物中毒は早期離脱することがほとんどで、長くても2日程度の透析です。
末期腎不全は基本的に維持透析を行っているため、緊急で透析を行うということはほとんどありません。
例外として、
通常通り透析を行っていないこと(透析間隔が3日以上経過)
透析時間が著しく低下している場合(血圧低下などの関係で通常より透析時間が短くなった)
という場合は緊急で透析を行う可能性があります。
まとめ
今回は急性期透析導入の判断基準として、
AKIの際に緊急で透析が必要かどうかの判断基準について紹介しました。
ICU入室時は判断基準に該当するような項目はなかったとしても、
入室後から期間が経過するにつれて悪化することももちろんあります。
少しでも可能性がある患者さんはマークしておき、日々の血液データから
透析が必要かどうかを判断しましょう。
もちろん最終判断は医師が行うため、判断基準に該当した場合も透析導入を行わない場合があります。
過去に透析導入しなければいけない患者さんが何人もいましたが、
家族さんが侵襲的な治療を希望しておらず、中止になったパターンや
消化管出血の止血ができておらず、抗凝固剤のリスクが高いため中止になったパターンなど、
腎機能以外の部分にも目を当て、総合的に透析の必要性を判断する必要があります。
これは施設の意向によるものもあるので、臨床工学技士としての経験が大事な場面です。
多くの場面を経験して、適切な判断ができる臨床工学技士になりましょう!
一緒に頑張りましょう!






