CHDFの鍵を握るヘモフィルター:膜の種類と効果的な使い分け

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CHDFの膜選択について 血液浄化

ICUで勤務する臨床工学技士であれば日々の業務でCHDFに関わる機会は多いですよね。

特に、ヘモフィルターの選択は治療効果を大きく左右する重要なポイントです。

でも、PES膜、CTA膜、PMMA膜の違いや使い分けって、意外と複雑で迷ってしまうことも
あるのではないでしょうか?
透析膜の使い分けも重要ですが、CHDFを行う患者さんの場合、重症度が高いことが多く、
より適切な膜を選択することが求められます。

この記事では、CHDFのヘモフィルターについて、その基本から具体的な使い分けのポイントまで
わかりやすく解説します!

過去にHDで使用する透析膜の解説を行っているのでこちらも参考にしてください!

ぜひ最後までお付き合いください!

この記事でわかること
  • ヘモフィルターについて
  • ヘモフィルターの使い分け
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ヘモフィルターの役割とCHDFの基本

CHDF(連続的血液透析濾過)は、急性腎不全(AKI)や敗血症性ショック、重症急性膵炎などの
重症患者の治療で広く使われています。


この治療の中心にあるのがヘモフィルターです。
ヘモフィルターは、血液から老廃物や過剰な水分、炎症性サイトカインなどを除去し、
患者の状態を安定させる役割を果たします。

なお、HDで用いられるダイアライザとは種類が異なるので注意してください!


CHDFは、拡散と濾過を組み合わせた手法で、低速かつ連続的に血液を浄化するため、
血行動態が不安定な患者にも適しています。


ヘモフィルターの膜素材は、除去する物質の種類や効率に大きく影響します。
例えば、敗血症患者では、サイトカインの過剰産生が問題となるため、膜の吸着性能が重要です。
また、腎不全患者では尿素やクレアチニンの除去効率も考慮する必要があります。

臨床工学技士として、ヘモフィルターの特性を理解することは、適切な治療計画を立てる第一歩。
次のポイントでは、代表的な膜素材であるPES、CTA、PMMAについて詳しく見ていきましょう!

  • CHDFは拡散と濾過を組み合わせ、血行動態が不安定な重症患者に適している。
  • ヘモフィルターは老廃物やサイトカインを除去し、治療効果を左右する。
  • 膜素材の選択は、除去対象物質や患者の状態に応じて重要。

PES、CTA、PMMA膜の特徴と違い

ヘモフィルターに使用される膜素材には、様々あり、それぞれ特性が異なります。
主に使用されているヘモフィルターを3つ紹介します。

ヘモフィルターの種類
  • PES膜(ポリエーテルスルホン膜)
  • CTA膜(セルローストリアセテート膜)
  • PMMA膜(ポリメチルメタクリレート膜)

以下に、各膜の特徴をわかりやすくまとめます。

PES膜

PES膜は高い生体適合性と優れた濾過性能を持ち、透析効率が高いのが特徴です。
親水性と疎水性のバランスが良く、蛋白吸着が少ないため、血液凝固のリスクを抑えられます

メリットは 膜の表面が滑らかで血栓形成が少なく、長時間の使用でも安定した性能を発揮する点です。
一方、デメリットはサイトカイン吸着能力はPMMAに比べると劣るため、
敗血症などの炎症性疾患にはやや不向きである点
です。

適応例

急性腎不全や一般的な透析治療で、効率的な老廃物除去を重視する場合に適している

CTA膜

CTA膜はセルロース系素材で、親水性が高く、細菌由来のエンドトキシンの逆流を防ぐ効果があります。
低分子量物質の除去に優れていますが、吸着性能は限定的です。

メリットはコストパフォーマンスが良く、エンドトキシン遮断性能が高い点です。
一方、デメリットはサイトカイン吸着能力が低く、炎症性疾患への効果は限定的である点です。

適応例

低分子量の老廃物(尿素、クレアチニンなど)の除去が必要な患者や、
コストを抑えたい場合に選択されることが多い

PMMA膜

PMMA膜は、サイトカインや中分子量物質の吸着性能に優れています。
特に、敗血症や重症急性膵炎で問題となるハイパーサイトカイネミアの治療に効果的です。

研究では、PMMA膜がIL-6などの炎症性サイトカインを効率的に吸着し、
血圧や尿量の改善に寄与することが報告されています。

ハイパーサイトカイネミアとは、血液中のサイトカイン
(炎症性サイトカイン、例: IL-6、TNF-α、IL-1など)が異常に高濃度で増加する状態
を指します。
これは、感染症(敗血症)、重症外傷、急性膵炎、自己免疫疾患などの
強い炎症反応が引き起こすもので、体の免疫系が過剰に反応した結果です。

メリットは高いサイトカイン吸着能力で、血行動態の安定化に寄与する点です。
一方でデメリットは膜の吸着性能が高い分、濾過寿命が短くなる場合がある点です。

適応例

敗血症性ショックや重症急性膵炎など、炎症性サイトカインの除去が求められる症例

  • PES膜:高い透析効率と生体適合性、血栓形成リスクが低い
  • CTA膜:コストパフォーマンスが良く、エンドトキシン遮断に優れる
  • PMMA膜:サイトカイン吸着に優れ、敗血症や重症急性膵炎に効果的

ヘモフィルターの使い分け方法と実践的ポイント

ヘモフィルターの選択は、患者の病態や治療目的に応じて慎重に行う必要があります。
以下に、使い分けのポイントと臨床工学技士が知っておくべき実践的なコツを紹介します。

患者の病態に応じた選択
  • 急性腎不全(AKI)
    PES膜やCTA膜が適している場合が多い
    PES膜は高い透析効率で尿素やクレアチニンを効率的に除去し、
    CTA膜はコストを抑えつつ安定した性能を発揮
  • 敗血症性ショック
    PMMA膜が第一選択
    PMMA-CHDFがIL-6やTNF-αなどのサイトカインを効率的に吸着し、血圧改善や生存率向上に
    寄与することが示されている
  • 重症急性膵炎
    PMMA膜が推奨
    サイトカイン除去により、腹腔内圧や血中乳酸レベルの低下が報告されている

基本的には症例によって膜を選択することが一般的ですが、 PMMA膜は吸着性能が高い分、
濾過寿命が短くなる傾向があります。

CHDFが頻回に回路凝固してしまう場合はPES膜やCTA膜を選択する場合もあります。

なお、膜の寿命は、膜面積や中空糸の内径が影響しており、例えば1.8m²のPMMA膜(CH-1.8W)は1.0m²の膜より長持ちする可能性が示唆されています。

臨床工学技士は、圧力変化や凝固の兆候をモニタリングし、
適切な抗凝固剤(ナファモスタットなど)の調整を行うことが重要です。

  • 病態に応じた膜選択:AKIにはPES/CTA、敗血症や膵炎にはPMMAが最適
  • 膜寿命管理:PMMAは吸着性能が高いが寿命が短いため、モニタリングが重要
  • 運用調整:血流速度や抗凝固剤の設定を患者に合わせて最適化

まとめ

CHDFのヘモフィルターは、患者の命を救うための重要なツールです。
PES膜は透析効率と生体適合性に優れ、CTA膜はコストパフォーマンスが高く、
PMMA膜はサイトカイン吸着に特化しています。

臨床工学技士として、これらの膜の特徴を理解し、患者の病態や治療目的に応じて適切に
使い分けることが求められます。

特に、敗血症や重症急性膵炎ではPMMA膜の高い吸着性能が大きな効果を発揮しますが、
膜の寿命やコストも考慮する必要があります。

日々のモニタリングや設定の最適化を通じて、治療効果を最大限に引き出しましょう。
現場で自信を持ってCHDFに取り組めるよう、ぜひこの知識を活かしてください!

一緒に頑張りましょう!

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