皆さんはペースメーカーを導入しており、右室ペーシングを受けている患者で、
「心機能が低下する」「QRS幅が広がる」といった課題に直面したことはありませんか?
従来の右室心尖部ペーシングでは、左室の収縮タイミングが遅れ、心臓全体の効率が低下することがあります。
そんな中で注目されているのが、左脚領域ペーシング(LBBAP)です。
本記事では、左脚領域ペーシングの基本からメリット・デメリット、
適応疾患までをわかりやすく解説します。
これを読むことで、右室ペーシングとの違いや臨床での活用法が理解でき、
ペーシング管理のスキル向上につながります!
- 左脚領域ペーシングについて
- 左脚領域ペーシングのメリット・デメリットについて
左脚領域ペーシングとは

左脚領域ペーシング(LBBAP)は、心室内のより生理的な伝導系を刺激することで、
効率的な左室収縮を実現するペーシング方法です。
従来の右室心尖部ペーシングでは、左室への伝導が遅れるため、以下のリスクが生じます。
- 心室の非同期が起こる(QRS幅の延長)
心室間のタイミングがずれる(心室間非同期)
左室内でも収縮の順番が不均一になる(左室内非同期)ため心臓のポンプ効率が低下 - 心機能の低下・心不全リスクが増加
左室の効率的な収縮が妨げられ、全身への血液送り出しが弱まる
左室が十分に広がらず、血液をためる能力が低下 - 左室リモデリング(心臓の形の悪化)
長期間の非同期収縮により、左心室が拡大(拡張)
心筋の線維化が進み、心不全が進行しやすくなる - 不整脈増加
AF(心房細動)のリスク上昇 - 僧帽弁逆流
左室の非効率な動きで弁閉鎖が不完全になる
LBBAPは左脚またはその近傍を直接刺激することで、左室の収縮タイミングを自然に近い形で調整します。
波形解析では、V1誘導で遅れた小さなR波、V6誘導でのR波ピークまでの時間(STIM to R-peak)の短縮が
左脚キャプチャーの目安となります。
また、左脚本幹・前枝・後枝のどの位置を刺激しているかによってQRSの軸変化が起こり、
V1やV6の波形パターンからおおよその位置を推測可能です。
これにより、より生理的な心筋収縮が得られ、血液駆出効率の改善につながります。
- 左脚エリアペーシングは左室収縮の非同期を改善する
- 波形解析でリード位置や刺激効果を確認できる
- 臨床で安全かつ効果的なペーシング管理に役立つ
左脚領域ペーシングのメリット・デメリット

左脚領域ペーシングの最大のメリットは、右室ペーシングで問題となる
左室の非同期収縮を改善できる点です。
ペーシング後のQRS幅は従来の右室ペーシングより狭く、左室駆出率(LVEF)の改善が報告されています。
心房細動や心不全入院のリスク低減、ペーシング誘発性心筋症の予防も期待されます。
さらに、心臓再同期療法(CRT)へのアップグレードが必要な症例も減少することが観察されており、
特に完全左脚ブロック症例では心機能維持に有効です。
一方でデメリットとしては、リードの固定不良や高いペーシング閾値、房室伝導障害の誘発リスクがあります。また、施行には専用シースやリード操作の熟練が必要であり、習熟には一定の経験が求められます。
しかし、技術の進歩により多くの施設で安全に施行可能となっています。
- 心機能低下や心不全リスクの軽減につながる
- 施行には熟練と注意が必要である
左脚エリアペーシングの適応疾患
左脚領域ペーシングは、基本的に従来のPM適応患者に対して使用することが可能です。
(主に心室ペーシングが必要となるAVBに対して有効)
特に以下のような疾患や症例に適応されます。
- 完全左脚ブロックや高度徐脈性不整脈など、右室ペーシングで左室非同期が懸念される症例
LBBAPによりQRS幅を短縮し、左室収縮効率を向上させることが可能 - CRT適応患者
左室駆出率が低下し、心不全症状を有する患者においてもLBBAPは有力な代替療法
国際研究では、右室ペーシングと比較してLBBAPはQRS幅の改善やLVEFの上昇がより顕著であり、
死亡または心不全入院の複合転帰も低下していました。
さらに、従来の右室・左室ペーシングで十分な効果が得られなかった
非応答例(ノンレスポンダー)に対しても次の選択肢として検討されます。
- 左脚領域ペーシングは完全左脚ブロックや徐脈性不整脈に有効である
- CRT適応患者やペーシング非応答例にも適応可能である
- 左室同期改善が必要な症例で有力な選択肢となる
まとめ
左脚エリアペーシングは、従来の右室ペーシングで生じる左室非同期を改善し、
より生理的な心室収縮を実現できるペーシング方法です。
波形解析によりリード位置や刺激効果を正確に確認できるため、臨床現場でも安全かつ効果的に活用できます。
心機能維持や心不全リスクの軽減に役立ち、CRT適応患者や非応答例でも有力な治療選択肢となるため、
今後のペーシング戦略に欠かせない手法となります。
臨床現場で見る機会も多くなる最先端のPM留置法となるので、選択肢の一つとして覚えておきましょう。
一緒に頑張りましょう!


