ペースメーカーのリード極性徹底解説!ユニポーラとバイポーラ

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リード極性について 不整脈

ペースメーカーやICDは、心臓の異常なリズムを整える生命維持装置として、
臨床工学技士にとって欠かせない知識分野です。

特に、リードの極性(ユニポーラとバイポーラ)は、装置の性能や患者の安全性に直結する重要なポイントです。

この記事では、ユニポーラとバイポーラの違い、極性の仕組み、それぞれのメリット・デメリットをわかりやすく解説していきます。

植え込み型デバイスのリードについて理解を深めていきましょう!

この記事でわかること
  • バイポーラとユニポーラの違いがわかる
  • ユニポーラにするメリットがわかる
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バイポーラとユニポーラの違い

ペースメーカーのリード極性には、主にユニポーラとバイポーラの2種類があります。

これらは、リードの電極配置や電流の流れ方に違いがあり、装置の機能や患者の状態に大きく影響します。
結論、基本的にバイポーラが主流ですが、リードトラブル時、もしくは閾値高値の場合にユニポーラに変更する場合があります。

ユニポーラは、1本のリードに1つの電極(陰極)があり、ペースメーカーの本体(陽極)との間で電流が流れます。電流のループは心臓から本体まで広がるため、広範囲に電流が流れるのが特徴です。

一方、バイポーラは、リードの先端に2つの電極(陰極と陽極)を持ち、電流がリード内で完結します。
電流のループが小さく、局所的な刺激が可能です。
なお、先端側は陰極部でチップ電極、陽極部はリング電極となっています。

この違いは、ペースメーカーの設定や患者の体格、植込み位置によって選択されます。

例えば、ユニポーラは感度が高く、大きな信号を捉えやすい一方、
バイポーラは外部ノイズの影響を受けにくいという特性があります。
臨床工学技士としては、医師と連携しながら、患者に最適な極性を選ぶための知識が求められます。

なお、ICD(植込み型除細動器)でも同様の極性選択が行われますが、ICDは高エネルギー放電を伴うため、
極性の選択がより慎重になります。
しかし、ICDは正確なEGMの読み込みがペースメーカ使用時よりも重要となるため、
基本的にユニポーラは設定できません。

ICD、CRT-Dの場合は致死性不整脈に対する除細動を最適化する必要があります。
つまり、ノイズの混入率が高いユニポーラは適していません
そこで、ICD、CRT-DのRVリードではバイポーラの他にTiptoCoil(チップコイル)設定が可能です
ユニポーラよりもノイズ耐性を保ちつつ除細動効率を最適化できます
(リード先端が陽極、コイル部分を陰極に設定)

  • ユニポーラ:1つの電極で電流ループが広く、本体が陽極
  • バイポーラ:2つの電極で電流ループが小さく、ノイズに強い
  • ICDなどはユニポーラではなくTiptoCoilに極性変更が可能

ユニポーラとバイポーラの比較

基本的にバイポーラが現状の主流となっていますが、一部状況次第ではユニポーラが選択されることがあります。
まずはバイポーラとユニポーラの比較を見て行きましょう。

まず、バイポーラとユニポーラの比較として感度と刺激閾値の観点から見てみましょう。
ユニポーラは電流ループが広いため、心臓の電気信号を敏感に捉えやすいです。
しかし、筋肉や外部ノイズ(電磁波など)を誤検知するリスクも高まります。
一方、バイポーラは電流ループが狭いため、ノイズの影響を受けにくく、正確な心臓信号の検知が可能です。

次に、患者の体感についてです。
ユニポーラは電流が広範囲に流れるため、まれに胸筋の収縮(筋肉刺激)や違和感を引き起こすことがあります。
特に、痩せ型の患者や小児ではこの影響が顕著になる場合があります。

バイポーラは電流が局所的で、こうした不快感を軽減できるメリットがあります。

また、電磁干渉(EMI)への耐性も重要です。
現代社会では、スマートフォンや家電製品、医療機器など電磁波を発するデバイスが身近にあり、ペースメーカーの誤作動リスクが懸念されます。

バイポーラは電極間の距離が近いため、外部ノイズを拾いにくく、EMIへの耐性が強いです。
ユニポーラは感度が高い分、ノイズを拾いやすいため、患者の生活環境を考慮した選択が必要です。

特に使用頻度の少ないユニポーラのメリットとデメリットは以下の通りです。

ユニポーラのメリット
  • 高い感度
    電流ループが広いため、心臓の微弱な電気信号を捉えやすく、特に低電圧の信号検知に優れています
    これは、心筋の電気活動が弱い患者や、特殊な心疾患を持つ場合に有効です
  • 低い閾値
    電流ループが広いため、心臓全体に電流が広がりやすく、刺激閾値が低めになる傾向があります
  • シンプルな構造
    リードに電極が1つのみで、設計がシンプル
    過去のペースメーカーでは標準的だったため、旧型の装置や一部の患者で依然として使用されています
ユニポーラのデメリット
  • ノイズの影響を受けやすい
    電流ループが広い分、外部の電磁波や筋肉の電気信号を誤検知しやすく、誤作動のリスクがあります。
    特に、MRI検査や電磁波の強い環境では注意が必要です
  • 筋肉刺激のリスク
    電流が広範囲に流れるため、胸筋や横隔膜の収縮を引き起こす可能性があり、患者の不快感に繋がります
  • 患者の体型依存
    痩せ型の患者や小児では、電流ループの影響が顕著になりやすく、
    バイポーラに比べて適さない場合があります

ちなみにICDの場合、ユニポーラは高エネルギー放電時の電流分布に影響を与えるため、
慎重な設定が求められます。
バイポーラが標準的ですが、ユニポーラの特性を理解しておくことで、特殊な症例にも対応可能です。

  • ユニポーラ:感度が高いが、筋肉刺激やノイズのリスクあり
  • バイポーラ:ノイズ耐性が強く、患者の不快感を軽減
  • 電磁干渉(EMI)への耐性はバイポーラが優れる

ユニポーラにすると閾値が良好化する理由

デバイスチェック時に閾値が高値である場合、出力変更やパルス幅の延長などの対策がありますが、
その他にもペーシング極性をユニポーラに変更するということも可能です。

ユニポーラは、リードの電極(陰極)にからペースメーカーの本体に(陽極)まで電流が流れる
広い電流ループを持っています。


この広い電流により、電流が心筋全体に分散しやすく、刺激される領域が大きくなります。

心筋の興奮は、電流経路内の複数の細胞が同時に刺激されることで起こりやすく、
結果として刺激閾値が低くなる傾向があります。

具体的には、電流密度(単位面積あたりの電流)が低くても、広範囲に電流が広がるため、
心筋の興奮に必要な最小電圧が抑えられるのです。
これは、電気生理学的には「電場効果」とも関連し、ユニポーラの感度の高さともつながります。

ただし、電流が広範囲に流れることで、胸筋や横隔膜を誤って刺激するリスクも高まります。
これはツイッチング(Twitching)と呼ばれます。

Twitchingとは、ペースメーカーの電気刺激が心筋以外の筋肉(胸筋や横隔膜など)を
誤って刺激することで起こる、筋肉のピクつきや不随意収縮のことです。
患者にとって不快感や不安を引き起こす可能性がある

なお、バイポーラは、リード先端の2つの電極(陰極と陽極)間で電流が完結する狭い電流ループです。
電流が心筋の局所に集中するため、電流密度が高くなり、刺激閾値はユニポーラより
やや高めになることが一般的です。

ただし、電流が集中することで、閾値は安定しやすく、患者の体型やリード位置への依存度が低いのが特徴です
この安定性は、長期的なペースメーカー管理で大きなメリットになります。

  • ユニポーラはバイポーラよりも閾値が低くなりやすい
  • ユニポーラ時はTwitchingに注意

まとめ

ペースメーカーのリード極性「ユニポーラ」と「バイポーラ」は、それぞれの特性を理解することで、
患者に最適な治療を提供するための重要な知識です。

ユニポーラは高い感度とシンプルな構造が魅力ですが、ノイズや筋肉刺激のリスクがあります。
一方、バイポーラはノイズ耐性が高く、患者の快適さを優先する現代の標準的な選択肢です。

臨床工学技士として、極性の違いやメリット・デメリットを把握し、医師や患者と連携しながら
最適な設定を行うことが求められます。

特に、ICDや特殊な症例では、極性の選択が治療の成功に直結します。

この記事を参考に、リード極性の知識を現場で活かし、スキルアップを目指してください!

一緒に頑張りましょう!

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