医師はもちろん、看護師など、医療従事者として患者を管理する上で当然の知識であるpH。
臨床工学技士としても把握していなければいけないのは言うまでもないですが、
意外とその本質を知らない人もいるのではないでしょうか?
一体なんでこの治療を行っているのか、根拠を持って治療の準備を行うのも臨床工学技士として
必要なスキルです。
今回は、pHについてまとめていきたいと思います。
- pH、アイドーシス、アルカローシスについて
- アシドーシス、アルカローシスの注意点について
pHの基本情報について
まず、pH(ペーハーとかピーエッチと言います)とは簡単に説明すると
人体の体液が酸性に傾いているのか、アルカリ性に傾いているのかというのを
判断するための指標です。
つまり、人体が正常に機能しているのか判断するための指標だということです。
ちなみに正常値は7.4±0.05(7.35~7.45)という非常に狭い範囲に保たれている必要があります。
この値を数学的に理解しようと思うとかなり話が長くするので割愛しますが、
pHについてはアシドーシスとアルカローシスについて理解できればOKです。
- pHは人体の体液が酸性かアルカリ性に傾いているかの判断ができる
- pHの正常値は7.4±0.05(7.35~7.45)
アシドーシス・アルカローシスについて

ではpHが正常値の範囲外になるとどうなるのか?というと・・・
7.35以下になるとアシドーシス
7.45以上になるとアルカローシス
という風に分類されます。
アシドーシスとアルカローシスに分類されるのはわかったけど、
だからなんだよという意見があると思うのでもう1つ覚えておいて欲しいのは
PaCO₂とHCO₃-の2つが重要です
ここまでの情報をまとめるとこうなります。

つまり、pHに異常を生じている際は4つの状態が考えられるということです。
- pHは7.35以下になるとアシドーシス、7.45以上になるとアルカローシス
- PaCO₂とHCO₃-がpHに関与している
呼吸性アシドーシス・アルカローシス
pHが異常値であるアシドーシス・アルカローシスの原因が呼吸性の場合は
PaCO₂が関係しています。

ちなみにPaCo₂の基準値は32~46mmHgです。
つまり、pHが7.35以下かつPaCo₂が46mmHg以上の場合は呼吸性アシドーシス
pHが7.45以上かつPaCo₂が32mmHg以下の場合は呼吸性アルカローシスです。
簡潔に説明するとこういうことなんですが、体の中で何が起きているのかというと・・・
呼吸性アシドーシスの場合は肺でガス交換がうまくできず、二酸化炭素が貯留している状態
呼吸性アルカローシスの場合は過剰な呼吸によって二酸化炭素が排出されている状態です。
ここで重要なのは呼吸性の場合は肺などの呼吸系に原因がある事が多いということです。
- pHが7.35以下かつPaCo₂が46mmHg以上の場合は呼吸性アシドーシス
- pHが7.45以上かつPaCo₂が32mmHg以下の場合は呼吸性アルカローシス
代謝性アシドーシス・アルカローシス
pHが異常値であるアシドーシス・アルカローシスの原因が代謝性の場合は
HCO₃-が関係しています。

ちなみにHCO₃-の基準値は21~29mEq/Lです。
つまり、pHが7.35以下かつHCO₃-が21mEq/L以下の場合は代謝性アシドーシス
pHが7.45以上かつHCO₃-が29mEq/L以上の場合は代謝性アルカローシスです。
簡潔に説明するとこういうことなんですが、体の中で何が起きているのかというと・・・
代謝性アシドーシスの場合は腎機能の低下などにより、HCO₃-が過剰に排出されている状態
代謝性アルカローシスの場合はHCO₃-が排出できずに貯留している状態です。
ここで重要なのは代謝性の場合は腎臓などの代謝系に原因がある事が多いということです。
- pHが7.35以下かつHCO₃-が21mEq/L以下の場合は代謝性アシドーシス
- pHが7.45以上かつHCO₃-が29mEq/L以上の場合は代謝性アルカローシス
知らないと怖い pHの管理が重要な理由
ここまでの説明でアシドーシス・アルカローシスがなにか、
原因が代謝性・呼吸性を見極めることができるようになったと思います。
ただ、アシドーシス・アルカローシスはなぜここまで重要なのか、知らないと非常に怖いです。
血液ガス測定の項目でも上位に表示されることが多く、
患者の状態を把握する上で重要な指標となるpHはなぜ正常でなければいけないのか?
答えは、正常でないと体で異常が起きてしまうから
わかっとるわい!という声が聞こえてきそうなのでもう少し解説すると、
基本的に人間の体ではpHが一定に保たれるようになっています。
そのため、若干肺が悪くなったり、腎臓が悪くなったりしても他で補ってくれるため、
すぐにpHが正常範囲外になることはありません。
つまり、アシドーシス・アルカローシスになった時点で体はやばめの異常事態ということです。

アシドーシスになると心機能の低下(収縮能、心拍出量の低下)から、
薬剤で補正できない血圧低下を招きます。
この心機能低下で怖いのは血圧低下ですが、血圧を上昇させるための
アドレナリンやノルアドレナリンなどのカテコラミンを投与しても心収縮効果は薄く、
期待するように血圧を上昇させることができません。
また、高K血症を招いてしまい、Kが高値になりすぎると
心停止の危険性もあるため非常に危険です。
アルカローシスになると低K血症を招いてしまい、筋力の低下、不整脈の原因となります。
筋力の低下は呼吸筋の低下、心不全の原因ともなり、
放置しておくと重篤な症状を引き起こします。
- アシドーシスの場合は血圧コントロールに注意
- アルカローシスの場合は傾眠傾向や痙攣発作に注意
- K値の異常にはどちらの場合も注意が必要
まとめ
今回は患者を管理する大きな指標の1つであるpHについて解説してきました。
基本的にはアシドーシス・アルカローシスの原因は呼吸性・代謝性の2つなのですが、
これ以外にも存在しており、実際にはもっと複雑に
pHが異常値になっている原因が絡み合っている場合があります。
また、呼吸性・代謝性の原因疾患によっても治療法は変化していきます。
大雑把な内容でしたが基礎的な重要な部分ですのでしっかりマスターしましょう!
一緒に頑張りましょう!
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