臨床工学技士の皆さん、rSO₂(局所酸素飽和度)についてどれくらい知っていますか?
手術室や集中治療室で患者さんの脳を守るために欠かせないこの指標。
rSO2を正確に測定し、データを活用することで、患者さんの安全性を大きく高められます。
この記事では、rSO₂の基本から測定方法、臨床での活用ポイントまでをわかりやすく解説します。
ではさっそく見て行きましょう!
- rSO₂について
- rSO₂の測定方法
rSO₂とは?脳酸素飽和度の基礎知識

rSO₂(regional oxygen saturation)は、近赤外分光法(NIRS)を用いて脳や組織の酸素飽和度を
非侵襲的に測定する指標です。
特に、脳の前頭前野における酸素供給と消費のバランスをリアルタイムでモニタリングします。
臨床工学技士にとって、rSO₂は心臓手術や脳神経外科手術、集中治療の場面で患者の脳保護に役立つ
重要なデータを提供します。
rSO2の測定には、INVOSシステムが広く使われており、
近赤外光を利用してヘモグロビンの酸素結合状態を評価します。
このシステムは、脳の血流や酸素状態をリアルタイムで把握できるため、
術中の脳虚血リスクの早期発見に貢献します。
また、rSO₂の値は通常、正常値として50~70%の範囲が目安とされていますが、
個人差や測定部位(例えば脳や下肢)によって異なるため、基準値を理解することが重要です。
- rSO₂は脳の酸素飽和度を非侵襲的に測定する指標
- INVOSシステムが主に使用され、リアルタイムモニタリングが可能
- 正常値は50~70%だが、個人差や測定部位に注意
rSO₂の測定方法と注意点
rSO₂の測定は、患者の前頭部に専用のセンサーを貼り付けることから始まります。
INVOSシステムの場合、センサーは左右の前頭前野に配置され、近赤外光を発して組織内の酸素化ヘモグロビンと
非酸素化ヘモグロビンの割合を測定します。
測定手順は以下の通りです。
- センサー装着
患者の額を清潔にし、センサーを左右対称に貼り付けます。
皮膚の状態(乾燥や脂質)や毛髪が測定精度に影響するため、適切な前処理が必要です。 - 装置のキャリブレーション
INVOSシステムを起動し、初期値を確認
左右差(左右のrSO₂値の差)が10%以上ある場合は、異常の可能性を考慮します。 - モニタリング
術中や集中治療中にリアルタイムでデータを記録。
急激なrSO₂低下(例:20%以上の急落)は脳虚血や低酸素状態を示唆するため、即座に対応が必要です。
注意点として、貧血はrSO₂値に影響を与える可能性があります。
ヘモグロビン濃度が低い場合、酸素運搬能力が低下し、rSO₂値が低く出ることがあります。
また、下肢など脳以外の部位でrSO₂を測定する場合、局所的な血流や組織状態の影響を受けやすいため、
解釈に注意が必要です。
- センサーは前頭部に左右対称に装着し、皮膚状態に注意
- 左右差10%以上や急激なrSO₂低下は異常のサイン
- 貧血や測定部位(脳・下肢)が値に影響を与える
rSO₂の臨床での活用
rSO₂は、心臓手術や脳神経外科手術、集中治療での脳保護に欠かせないツールです。
例えば、心臓手術中に体外循環を使用する場合、脳への酸素供給が不安定になるリスクがあります。
rSO₂をモニタリングすることで、脳虚血の早期発見や適切な介入(例:血圧調整、酸素投与)が可能になります。
- ケース1: 心臓手術中のrSO₂低下
50歳男性の冠動脈バイパス術中、右側のrSO₂が急激に20%低下。
左右差が15%に達したため、術者は直ちに血圧を上昇させ、酸素投与量を増やした。
結果、rSO₂は正常値に戻り、術後の神経学的合併症は回避された。 - ケース2: 下肢のrSO₂測定
下肢虚血のリスクがある患者で、rSO2を下肢に適用。
術中に左下肢のrSO₂が30%まで低下し、血栓の可能性が疑われた。
迅速な血管造影で血栓が確認され、適切な治療で血流が回復。
これらのケースから、rSO₂は脳だけでなく下肢など他の部位でも活用でき、
左右差や異常値の早期発見が患者予後を大きく改善することがわかります。
臨床工学技士は、rSO₂データを医師や看護師と共有し、チーム医療の一翼を担います。
- rSO₂は心臓手術や脳神経外科で脳保護に役立つ
- 左右差や急激な低下への迅速な対応が重要
- 下肢のrSO₂測定も局所血流評価に有効
まとめ
rSO₂は、臨床工学技士にとって患者の脳や組織の酸素状態を把握するための強力なツールです。
INVOSシステムを使った測定は簡単で非侵襲的であり、術中や集中治療でのリアルタイムモニタリングに最適です。正常値(50~80%)や左右差、貧血の影響を理解し、適切な測定方法をマスターすることで、
患者の安全性を飛躍的に向上させられます。
また、脳だけでなく下肢など他の部位での活用も広がっており、臨床工学技士のスキルアップに直結する知識です。
この記事を参考に、rSO₂の基礎から応用までをしっかり学び、臨床現場で自信を持って活用してください!
一緒に頑張りましょう!
