バイタル測定はHR、SpO₂、BPが一般的で、当然とても大事ですが、
患者さんのバイタルを確認する際にSvO₂もちゃんと確認していますか?
SvO₂(混合静脈血酸素飽和度)は、臨床工学技士にとって患者の酸素代謝や循環状態を評価する重要な指標です。
この記事では、SvO₂の基礎知識から測定方法、臨床での解釈、実際の活用法までを徹底解説しています。
- SvO₂について
- SvO₂の影響因子
- SvO₂で病態を評価する方法
SvO₂とは?基礎知識を押さえる

SvO₂は、肺動脈に流れ込む混合静脈血中のヘモグロビンが酸素と結合している割合を示します。
なお、上大静脈、下大静脈、冠状静脈から流れる3つの静脈血が混ざり合っています。
動脈血酸素飽和度(SaO₂)が肺で酸素を取り込んだ直後の状態を表すのに対し、SvO₂は全身の組織を巡った後の
「残存酸素」を反映します。数値は通常60~80%で、以下の式で表されます。

この式から、SvO₂が心拍出量、酸素運搬能、組織の酸素需要に依存することがわかります。
臨床工学技士は、SvO₂をモニタリングすることで、患者の循環状態や代謝バランスを評価し、
異常の早期発見に貢献します。
- SaO₂
動脈血酸素飽和度(%) - VO₂
酸素消費量(mL/min) - CO
心拍出量(L/min) - Hb
ヘモグロビン濃度(g/dL) - 1.34
ヘモグロビン1gが運搬可能な酸素量(mL)
この式からもわかるように、SvO₂は、酸素供給(DO₂)と酸素消費(VO₂)の均衡を示す指標です。
酸素供給と酸素消費は以下の要素で決まります。
- 酸素供給(DO₂)
- 心拍出量
心臓が送り出す血液量 - 酸素運搬能
ヘモグロビン濃度や動脈血酸素飽和度(SaO2) - 組織の酸素需要
代謝率や体温など
- 心拍出量
- 酸素消費(VO₂)
- 代謝率
発熱、運動、ストレスなどで増加 - 組織の酸素抽出率
低灌流状態では増加し、SvO₂が低下
- 代謝率
例えば、ショック状態では心拍出量が低下し、組織への酸素供給が不足し、組織はより多くの酸素を抽出するため、SvO₂が低下します。
逆に、敗血症では酸素利用障害によりSvO₂が異常に高くなる場合があります。
臨床工学技士は、 SvO₂をモニタリングすることで、患者の状態をよく理解して、治療方針の調整をサポートします。
- SvO₂は、肺動脈に流れ込む混合静脈血中のヘモグロビンが酸素と結合している割合
- 上大静脈、下大静脈、冠状静脈から流れる3つの静脈血
- SvO₂は、酸素供給(DO₂)と酸素消費(VO₂)の均衡を示す指標
SvO₂に影響する因子

SvO₂の値は複数の要因に影響され、臨床工学技士はこれらを総合的に評価する必要があります。
主な因子は以下の通りです。
- 循環動態
心不全や低血圧による心拍出量低下はSvO₂を低下させる
例:心筋梗塞患者でCOが2.5L/minに低下すると、SvO₂が50%以下になる可能性 - 酸素運搬能
貧血(Hb低下)や低酸素血症(SaO₂低下)はSvO₂を低下させる
例:Hbが8g/dLの患者では、正常なCOでもSvO₂が低下傾向 - 酸素需要
発熱、痙攣、痛みなどで代謝率が上昇すると、SvO₂が低下
例:38.5℃の発熱患者では、VO₂が10~20%増加し、SvO₂が低下 - 薬剤や治療の影響
昇圧剤(例:ドブタミン)はCOを増加させ、SvO₂を上昇させる
高濃度酸素投与はSaO₂を上昇させ、SvO₂に間接的に影響
その中でもSvO₂の影響因子として知られているのは心拍出量、酸素化、酸素消費量、Hbです。
どの値もSvO₂の算出式に用いられる値ですのでその重要性がわかります。
心拍出量
心拍出量は血液を全身に送る指標ともなる数値で、基準値は人にもよりますが、約5L/minとなります。
ちなみに人の血液量は体重の1/12~1/13とされているため、体重60kgの場合、血液量は約5Lとなり、
正常であれば1分間で全身の血液が循環するといったイメージです。

心拍出量が上昇した場合、全身に送られる血液の量は5Lを上回るということですので、
1分間で届けられる酸素の量が増加します。
つまり酸素供給量が増加します。
この時、酸素が送られる量が多いなら酸素消費量が増加するんじゃない?と思うかもしれませんが、
供給量、消費量が共に増加しているため、SvO₂の値は大きく変化しません。
一方で心拍出量が低下した場合、全身に送られる血液の量は5Lを下回るということですので、
1分間で届けられる酸素の量が低下するということです。
つまり酸素供給量が低下します。
酸素供給量は低下しますが、酸素消費量は変化しないため、SvO₂の値は低下します。
つまり、酸素が欲しいのに全然来ない状態です。
- 心拍出量は血液を全身に送る指標(酸素供給量に影響)
- 増加すると酸素供給量が増加(SvO₂も増加)
- 低下すると酸素供給量が減少(SvO₂も低下)
酸素化
酸素化というのは肺で血液に酸素を供給できているのかという指標です。
つまりSaO₂で評価することができます。
SaO₂の正常値は95~98%と言われています。

SaO₂は動脈血の酸素飽和度を表しているため、酸素化について評価することができます。
酸素化が良好な場合、全身に酸素を供給できる量が多くなるため、
仮に酸素をたくさん消費したとしてもSvO₂は低下しません。
一方で酸素化が不良な場合は全身に酸素を供給できる量がそもそも少ないため、
酸素消費量が一定であってもSvO₂は低下します。
これはそもそも酸素を送る量が少ないため、酸素供給量が減少することでSvO₂が減少するということです。
- 酸素化(PaO₂)は肺で血液に酸素を供給できているのかという指標(酸素供給量に影響)
- 増加すると酸素供給量が増加(SvO₂も増加)
- 低下すると酸素供給量が減少(SvO₂も低下)
酸素消費量
酸素消費量は言葉の通り酸素の消費量の増減のことです。
酸素消費量は様々な要因で変化するのですが、SvO₂には直接影響します。
酸素供給量が一定の場合、
酸素消費量が多い時は全身に供給された酸素がどんどん消費されていくため、SvO₂は低下します。
一方で酸素消費量が少ない時は全身に供給された酸素がそこまで消費されないため、SvO₂は増加します。
酸素消費量の増減の一例は以下にまとめています。
- 酸素消費量増加
シバリング
発熱 - 酸素消費量低下
低体温
- 酸素消費量(酸素消費量に影響)
- 増加すると酸素消費量が増加(SvO₂は低下)
- 低下すると酸素消費量が減少(SvO₂は増加)
Hb
Hbはヘモグロビンのことです
酸素を全身に供給するためにはヘモグロビンと酸素が結合することが必要不可欠となります。
Hbは男女によって基準値が異なりますが、約12~18g/dLとなっています。
Hbが増加している場合は全身に血液を供給できる量が増加するため、SvO₂も上昇します。
一方でHbが低値である場合は酸素がたくさん供給されていたとしても、酸素を運ぶヘモグロビンが少ないため、
全身に酸素を供給することができなるため、SvO₂は低下します。
- ヘモグロビン(酸素供給量に影響)
- 増加すると酸素供給量が増加(SvO₂は増加)
- 低下すると酸素供給量が減少(SvO₂は低下)
SvO2の測定方法:臨床工学技士の役割
SvO2の測定には、主に以下の2つの方法があります。
臨床工学技士は装置の管理やデータの正確性を担保する重要な役割を担っております。
- 肺動脈カテーテル(スワンガンツカテーテル)
侵襲的な方法 常時観察の場合はビジランスやヘモスフィアが必要
肺動脈にカテーテルを挿入し、混合静脈血を直接採取または光ファイバーを用いて連続モニタリング
感染リスクやカテーテルの位置ズレに注意。、定期的な校正とヘパリン化が必要 - NIRS(Near-Infrared Spectroscopy)
非侵襲的な方法
患者負担が少なく、継続モニタリングが可能だが肺動脈カテーテルを用いた方法の方が数値が正確
ICUで管理する場合はビジレオやビジランスモニターなどの循環動態モニターが使用され、
常時測定値が確認されるように設定されていることが多いです。
SvO2 の臨床的意義:異常値の解釈
SvO₂の値は、患者の状態を評価する情報を提供します。
以下に、異常値の原因と対応をまとめます。

これらの異常値を理解することでSvO₂を用いたモニタリングを理解しましょう!
まとめ
今回はSvO₂について紹介しました。
SvO₂は酸素の供給と需要のバランスがわかる指標だということが分かったと思います。
SvO₂の低下があれば、酸素の供給が不足しているか、酸素の消費量が増加しているかのどちらかが考えられます。
もちろんSvO₂だけでは判断することができませんが、
心拍出量、酸素化、Hb、酸素消費量のどれかが影響していることは間違いありません。
もちろん1つだけの影響でSvO₂が変化するわけではなく、
2 つ、3つと絡んでますます悪化するということもよくあります。
最も重要なのは早期発見し、原因の追究と根本的治療です。
例えSpO₂が高いから酸素化は問題ないと思っていても、心拍出量やHbが低下していればそもそも組織は酸素化できないため、注意が必要です。
ICUで集中管理する際はSvO₂に対してもしっかり観察しましょう。
一緒に頑張りましょう!
