こんにちは、臨床工学技士の皆さん!
今回はV-VECMO(Venovenous Extracorporeal Membrane Oxygenation、体外式膜型人工肺)の基本から
実践までをわかりやすく解説します。
V-VECMOは重症呼吸不全の患者さんを救う重要な技術であり、私たち臨床工学技士にとって欠かせないスキルです。
この記事を読めば、仕組みの理解から現場でのポイントまで、自信を持って取り組めるようになります。
V-AECMOとは違った考え方も必要となってくるのですが、ぐちゃぐちゃにならないように順番に説明していきます。
- V-VECMOについて
- 回路構成について
- 導入手順について
- モニタリングと注意点、リサーキュレーションについて
V-VECMOについて

まず、V-VECMOとは何かを理解しましょう。
V-VECMOは、静脈から血液を取り出し、膜型人工肺で酸素化して二酸化炭素を除去した後、
再び静脈に戻すシステムです。
主に急性呼吸窮迫症候群(ARDS)や重症肺炎など、肺が十分に機能しない患者さんに適応されます。
心機能は保たれているが、呼吸機能が極端に低下している場合に使うのが特徴です。
V-VECMOは、心肺バイパス(CPB)とは異なり、
心臓を補助するVA-ECMO(Venarterial ECMO)とも目的が違います。
V-VECMOは「肺の代わり」に特化していると考えるとわかりやすいですね。
- 適応: PaO2/FiO2比が150未満の重症呼吸不全(例: ARDS)
- 禁忌: 重度の心不全や不可逆的な脳障害がある場合
そんなV-VECMOはV-AECMOとは異なり、数週間から1ヵ月程度の中長期間の使用が多く、
必要時には回路交換を行う場合もあります。
- V-VECMOは肺を休ませるための補助循環
- ARDSなど呼吸器疾患がある場合が対象
- 数週間から1ヵ月程度の中長期間の使用が多い
V-VECMOの構成要素と仕組み
次に、V-VECMOのシステムを構成する主要な部品を見てみましょう。
現場で装置を扱うとき、これらの役割を理解しているとトラブル対応がスムーズになります。
- カニューレ
血液の出口と入口用に2本使用します
一般的には大腿静脈と内頸静脈に挿入されます - ポンプ
遠心ポンプが主流
血液を大腿静脈から脱血し、膜型人工肺に送る役割です
回転数は流量(通常3-5L/分)を調整するために重要 - 膜型人工肺
ここで酸素化と二酸化炭素除去が行われます
中空糸膜を通じてガス交換が行われ、人工肺の性能は表面積や材質に依存します - チューブ回路
血液が流れる経路
ヘパリンコーティングされたものが多く、凝固を防ぎます
カニューレの位置がずれると「リサーキュレーション」(戻した血液がすぐ吸い込まれる現象)が起こり、
酸素化効率が落ちます。
エコーやX線で位置を確認する癖をつけましょう。
V-VECMOの準備と運用手順
では、実際にV-VECMOを立ち上げる手順をシミュレーションしてみましょう。
V-VECMOは緊急時ではないことが多く、まだECMOの導入に慣れていない若手が担当することもあります。
私も初めてECMOを導入したのはV-VECMOの時でした。
まだ、ECMOを導入したことがない、これから導入したいという方はしっかりシュミレーションをしたうえで
先輩にやってみたいです!と報告するとチャンスを貰えるかもしれません。
- 装置のチェック
ポンプの動作確認、膜型人工肺に亀裂がないか、チューブの接続部に緩みがないかを確認
ガス供給(O2)と電源も忘れずに - プライミング
回路に生理食塩水を充填し、空気を完全に除去します
空気塞栓は致命的です - カニューレ挿入
医師が担当しますが、技士として挿入位置やサイズを把握しておくと連携がスムーズです
V-VECMO導入時はエコーを用いて血管径を測定し、抹消に支障が出ないように
配慮してからカニューレサイズを選択することが多いです(血管径の3分の2以下が理想) - 運転開始
ポンプを低回転(500-1000rpm)から始め、徐々に流量を上げます
目標はSpO2 90%以上、PaCO2 35-45mmHg
流量が上がらないときは、カニューレの閉塞や血管内圧を疑ってください。
モニタリングで血圧や酸素飽和度を常にチェックすることも重要です。
- プライミングは空気塞栓の原因になるため厳重に行う
- カニューレのサイズはエコーで測定することもある
- 目標はSpO2 90%以上、PaCO2 35-45mmHg
モニタリングとトラブルシューティング
運用が始まったら、モニタリングが技士の腕の見せ所です。
異常を早期に発見し、患者さんの命を守りましょう。
- 流量(Flow)
3~5L/min程度が目安 酸素化が悪ければ上昇させる - ACT(活性化凝固時間)
抗凝固療法で180-220秒を維持 - 血ガス
SpO2、PaO2、PaCO2を頻回に測定(6時間に1回) - 膜型人工肺の圧力差(ΔP)
高いと凝固や劣化のサイン
V-VECMOの場合、特に多いトラブルは以下の2つです
これらのことが起きないようにモニタリングするのが私たちの役目でもあります。
- リサーキュレーション
SpO2が上がらない場合、カニューレ位置を調整 - 回路凝固
ACTが短いならヘパリン投与量を増やす
異常を感じたら「まず報告」そこからどうするのかを相談していくのがおすすめです。
V-VECMO装着患者は重症度の高い場合が多く、一つの操作で急変するリスクが高いです。
対処法がわかってても医師と相談するのがおすすめです。
リサーキュレーションについて

V-VECMO使用時にもっとも注意する必要のあるリサーキュレーションについて説明します。
リサーキュレーションは戻した血液がすぐ吸い込まれる現象のことで、
つまりは酸素加された血液を再度脱血する状態です。
これはV-VECMOで酸素を送りたい(酸素加もできている)が送れていないということです。
このリサーキュレーションの指標としてSvO₂が用いられており、
通常であれば65%目標の所、75%以上の場合は改善させる必要がありますが、
V-VECMOでは必ずリサーキュレーションが生じるため、どこまで許容するのかは医師と相談する必要があります。
ちなみにELSOガイドラインでは30~50%で管理する必要があります。
- リサーキュレーションは戻した血液がすぐ吸い込まれる現象
- SvO₂は65%目標
- V-VECMOでは必ずリサーキュレーションが生じる
まとめ
V-VECMOは、重症患者さんの命を繋ぐ重要な技術です。
この記事で、基本的な仕組みから運用、トラブル対応までをゼロから学べたはずです。
V-VECMOは最初は難しく感じるかもしれませんが、仕組みを理解し、手順を一つずつ覚えれば必ず慣れます。
現場で「頼りになる技士」と言われる日を目指して頑張りましょう!
一緒に頑張りましょう!
