知らなきゃ危険!透析での除水の仕組みと安全な管理方法 | みんなのMEセンター

知らなきゃ危険!透析での除水の仕組みと安全な管理方法

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除水の仕組みについて 血液浄化

皆さんは透析業務中に除水量の設定をしっかり行っていますか?
実は透析でただ血液をきれいにするだけではなく、
体に余分にたまった水を取り除く除水という仕組みがあります。

しかし、なぜ透析で水を抜くことができるのか、どのくらいの速度で除水すれば安全なのか、初心者の臨床工学技士の方でも理解が難しい部分があります。
また、日常の透析業務のルーチンの中で、除水はDW差分を入れる作業に落ちがちです。

この記事では、除水の原理から計算方法、そして安全に行うための注意点まで詳しく解説します。
これを読むことで、透析治療の現場でより安全かつ効率的に除水を管理できる知識が身につきます。
さらに、読み終えた瞬間DWに対する根拠を言語化できる状態になることを目的としています。

この記事でわかること
  • 除水の原理について
  • 除水の計算方法について
  • 除水中の注意について
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透析の除水の原理

透析治療における除水とは、体に余分にたまった水分を透析によって取り除くプロセスです。
通常、体重には理想的な状態であるドライウェイト(DW)が設定されており、
透析前の体重と、このドライウェイトの差分が除水量の目安となります。

例えば、透析前の体重がDWより2キロ多い場合、透析中に2キロの水分を除水することが目標となります。
このとき重要なのは、ただ水を抜くことではなく、
血圧や循環動態に悪影響を与えない速度で除水を行うことです。

透析装置は半透膜(ダイアライザ)を用いた血液透析機構を持っています。
この半透膜は、分子の大きさによって通過できる物質とできない物質を選択し、
血液中の老廃物を取り除きつつ、必要な物質は保持します。

水の除去は、透析液側に圧力をかけて血液中の水分を移動させる限外ろ過により行われます。
透析液は血液よりも水分を引き出しやすい濃度に調整されており、
これにより血液中の余分な水分を効率的に透析液側へ移動させることが可能です。

限外濾過は、除水ポンプ(透析監視装置内部にあり)によって透析液を引き出すことで行われます。
透析液は通常、毎分約500mlの速度で血液と反対方向に流れ、除水分は透析液の流れに含まれて排液されます。除水ポンプが適切に動作しない場合、透析後の体重が目標値とずれるため、装置の保守管理も非常に重要です。

さらに、透析における除水は、血液をきれいにする拡散作用と組み合わせて行われます。
拡散は濃度勾配に従い老廃物を血液から透析液へ移動させるプロセスであり、
限外濾過と拡散が同時に働くことで、血液中の不要な水分と老廃物を効率的に除去することができます。
これにより患者は安全に体液バランスを整えることが可能になります。

また、臨床現場では、透析中の除水量や速度が速すぎると、血圧低下や立ちくらみ、
心拍数の変動などの合併症を引き起こす可能性があります。
詳しくはこちらの記事も参考にしてください

そのため、一般的には体重1キログラム当たり1時間に15ミリリットル以下の除水速度が目安とされています。
逆に除水が不足すると、むくみや呼吸困難、肺水腫などのリスクが高まります。
このように、除水の原理は水を抜くだけでなく、安全に体液バランスを整えるための
重要な仕組みです。

透析中の除水速度は患者の安全を確保するうえで重要な指標です。
海外の報告では、UFRが1時間あたり体重1キログラム13ミリリットルを超えると死亡リスクが
有意に高まるとされています。

このため、透析中はより低い除水速度を維持することが推奨されています。
米国のKDOQIや国際的なKDIGOガイドラインでも、
除水速度を低く抑えることが安全性の観点から重要とされ、臨床では多くの場合、
体重1kgあたり1時間あたり12〜15ミリリットル以下を目安として設定されています。
ただし、この数値はガイドラインに明記された公式値というより、
臨床経験と研究結果に基づく安全域の目安です。
実際の透析では、患者個々の循環動態や心臓機能に合わせて調整する必要があります。

  • 透析は半透膜を用いて水分と老廃物を分離する
  • 限外ろ過と拡散の二つのプロセスで血液を整える
  • 除水速度の管理と装置の保守が安全透析の鍵

除水量の計算方法と除水速度

透析における除水量の計算は、患者のドライウェイト(DW)と透析前の体重との差をもとに行います。
DWについてはこちらの記事を参考にしてください。

計算の実務面では、透析前の体重と目標体重の差を正確に把握し、
透析時間と体重減少量をもとに除水速度を決定します。

除水計算の例

除水目標が2kgで透析時間が4時間の場合
除水速度は2,000ml ÷ 4時間 = 500ml/h

また、除水量の計算と速度設定は、単なる数学的作業ではなく、臨床的な判断と組み合わせて行う必要があります。
透析中の体重増減や血圧変動をモニターすることで、除水速度をリアルタイムで調整することも重要です。
特に高齢者や心疾患のある患者では、急激な除水は体に負担をかけるため、
少しずつ安全に除水することが求められます。

臨床現場では、透析の前後で体重を確認し、設定通りに除水が行われているかを評価します。
また、除水不足や過剰による合併症の兆候を観察することも重要です。
適切な計算と速度管理をすることが重要です。

  • ドライウェイトと透析前体重の差で除水量を決定
  • 透析中の循環動態に合わせてリアルタイムで調整

透析の除水に関する注意点やポイント

透析における除水は、単に水分を取り除くだけの作業ではなく、
患者の循環動態や体液バランスを維持するうえで非常に重要なプロセスです。
除水を安全かつ効率的に行うためには、いくつかの注意点とポイントを理解しておく必要があります。

除水を安全かつ効率的に行うためのポイント
  1. 除水時間の設定
  2. 透析前の体重管理
  3. 患者への説明とコミュニケーション
  4. 除水に関する日々のモニタリングと記録

除水速度の設定

まず第一に、除水速度の設定です。
体重1キログラムあたり1時間に12~15ml以下が目安ですが、この速度はあくまで標準値であり、
患者個々の状態に応じて調整する必要があります。

特に高齢者や心疾患、糖尿病などの合併症を持つ患者では、
同じ速度でも血圧低下や立ちくらみが起こりやすいため、徐々に除水を進める慎重さが求められます。
透析中は血圧や心拍数、体重変動を常時モニターし、必要に応じて除水速度を変更することが
安全管理の基本です。

透析前の体重管理

次に、透析前の体重管理も重要なポイントです。
透析中の除水量は透析前の体重とドライウェイトとの差で決まるため、透析前に過剰な水分が体内にあると、
必要以上に除水を行わなければならず、血圧低下などのリスクが高まります。

日常生活での水分摂取制限や食事管理、透析間の体重増加のコントロールが適切であれば、
透析中の除水負担を軽減し、安全な透析治療に直結します。

患者への説明とコミュニケーション

加えて、患者への説明とコミュニケーションも重要です。
除水中に立ちくらみや倦怠感を訴える患者には、無理のない速度での除水や休憩、
場合によっては透析時間の延長などを検討する必要があります。
臨床工学技士としては、装置操作だけでなく、患者の症状に応じた柔軟な対応が求められるのです。

血液透析装置に搭載されている特殊な機能で、
特に「血圧が低下しているが、どうしても体内の余分な水分を除去したい」状況として
ECUM(Extracorporeal Ultrafiltration Module)があります。

通常の除水では血圧低下のリスクがあるため、慎重に速度を制御する必要がありますが、
ECUMを用いると血圧を大きく崩さずに限外ろ過を行うことが可能です。

除水に関する日々のモニタリングと記録

最後に、除水に関する日々のモニタリングと記録の重要性も押さえておきましょう。
透析後の体重、血圧、心拍数の変化を正確に記録し、次回の透析計画に反映させることで、
除水の安全性と効率を継続的に改善できます。

適切な除水管理は、患者の生活の質を維持するためにも欠かせない要素です。

前回の除水量を参考に除水量を設定することも多くあり、過去のデータからこれ以上の除水は
できないと判断することも可能です。

  • 除水速度は患者の状態に応じて慎重に設定
  • 透析前の体重管理で除水負担を軽減
  • 装置の保守管理で除水量の正確性を確保
  • 患者の症状に応じた柔軟な対応が必要
  • モニタリングと記録で安全性を継続的に改善

まとめ

透析治療における除水は、体に余分な水分を取り除くだけでなく、
患者の血液や体液バランスを安全に整えるための重要なプロセスです。
除水の原理を理解し、ドライウェイトに基づいた除水量の計算と、
体重1キログラムあたりの除水速度を適切に設定することで、
血圧低下やむくみなどの合併症を防ぐことができます。
また、透析装置の保守管理や患者の循環動態のモニタリング、日常生活での体重管理も、
除水を安全に行ううえで欠かせません。

もしもこれらのポイントを軽視してしまうと、患者さんに思わぬ負担をかけてしまう可能性があります。
臨床工学技士として、除水の原理と実践的な管理方法を正しく理解し、日々の透析業務に活かすことが、
患者の安全と生活の質を守るために最も重要です。

一緒に頑張りましょう!

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