PCPS導入時、何から手をつければいい?急変時に臨床工学技士が迷わない初動の考え方 | みんなのMEセンター

PCPS導入時、何から手をつければいい?急変時に臨床工学技士が迷わない初動の考え方

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PCPSについて 補助循環

急変時の対応に不安がある全ての方へ
― 導入時に「最初にやるべきこと」が頭に浮かぶ実践整理 ―

PCPS導入が決まった瞬間、
「今、自分は何を最優先で動けばいいのか」
そう頭が真っ白になった経験はありませんか。

PCPSが必要になる場面は、ほとんどが心肺停止や心原性ショックなど、時間の猶予がない急変時です。
患者の周囲には多職種が集まり、心臓マッサージや除細動が同時進行することも珍しくありません。

その中で臨床工学技士は、
機械準備、回路、プライミング、開始操作と、失敗が許されない役割を担います。
しかし現実には、「流れは知っているけど、実際の初動が整理できていない」状態で
対応している方も多いはずです。

この記事では、
PCPS導入時に臨床工学技士が迷いやすいポイントを整理しながら、
「まず何を考え、どう動けばいいのか」を実務目線で解説します。


この記事でわかること
  • PCPS(V-A ECMO)の基本構造と、導入時に最低限理解しておくべき考え方
  • PCPS回路を「複雑に見せない」ための整理方法
  • 急変時、臨床工学技士が最初に意識すべき導入時の役割と初動
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PCPSについて

PCPSと聞くと、
「重症患者に使う装置」「とにかく大がかり」
そんな漠然としたイメージだけで、
実際に何をしている装置なのかが曖昧なまま対応していませんか。

導入時に慌ててしまう原因の多くは、
PCPSを「難しい機械」として捉えてしまっていることにあります。

PCPS(経皮的心肺補助法)は、
遠心ポンプと膜型人工肺を用いて、心臓と肺の機能を一時的に肩代わりする補助循環装置です。
V-A ECMOとも呼ばれ、主に大腿静脈から脱血し、大腿動脈へ送血することで全身循環を支えます。

詳細はこちらの記事を参考にしてください。

PCPSは経皮的心肺補助法とも呼ばれ、
遠心ポンプと膜型人工肺を用いた閉鎖回路の人工肺装置により、大腿動静脈経由で心肺補助を行います。

適応疾患
  • 心肺停止
  • 心原性ショック
  • 肺血栓塞栓症
  • 心臓外科手術後の低拍出

適応となるのは、
心肺停止や心原性ショックなど、自力で循環や酸素化を維持できない状態です。
つまりPCPSは、「心臓や肺を治す装置」ではなく、
治療が行える状態まで時間を稼ぐ装置
だと考えると理解しやすくなります。

禁忌疾患
  • 急性大動脈解離
  • 高度末梢動脈硬化症
  • 血液凝固異常
  • 激しい出血傾向
  • 詳細不明の心肺停止例

一方で、禁忌として
高度な末梢動脈硬化、重度の凝固異常、激しい出血傾向などがあり、
どんな症例にも使える万能な装置ではありません。

導入が決まる場面は、ほぼ例外なく緊急です。
そのため臨床工学技士には、
「なぜ今PCPSなのか」、「何を優先して準備すべきか」
を瞬時に整理する力が求められます。

まずはPCPSを
血液を取り出し、流して、酸素を入れて、体に戻すだけの仕組み
としてシンプルに捉えること。

それが、導入時に慌てないための第一歩になります。

私の経験上は心肺停止状態や心原性ショックでの導入が多い印象があります。
また、心臓外科手術後の低拍出での導入もありますが、こちらは離脱するまでの期間が短い印象です。

  • 回路構成はシンプル
  • 導入時は緊急時であることがほとんど

PCPSの回路構成について

PCPSの回路を見ると、
「センサーだらけで複雑そう」、「どこが重要なのか分からない」
と感じたことはありませんか。

実際、導入時に慌てる原因の一つが、
回路全体を一気に理解しようとしてしまうことです。

ですが、臨床工学技士として本当に押さえるべきなのは、
細かい付属品ではなく、血液がどう流れているかだけです。

PCPSの回路は、極端に言えば
遠心ポンプと人工肺の2つで成り立っています。

PCPSが実際に行っていることは、次の3段階しかありません。

PCPSの血液の流れ
  1. 右心房付近に留置された脱血カニューレから血液を体外に引き出す
  2. その血液を遠心ポンプで送り出す
  3. 人工肺で酸素を取り込み、大腿動脈に留置された送血カニューレから体内へ戻す

これだけです。
気泡センサーや圧センサー、流量センサー、冷温水装置などは、
すべて安全にこの流れを維持するための補助装置に過ぎません。

回路が理解できないと感じるときは、
「今この血液はどこから来て、どこへ向かっているのか」
この一点だけを追ってください。

最初は
「右心房から血を抜いて、酸素を入れて、大腿動脈に返している」
このレベルで十分です。

回路構成をシンプルに捉えられるようになると、
脱血不良が起きたとき、圧が上がったとき、流量が出ないときに、
どこで何が起きているのかを即座に考えられるようになります

PCPSの回路理解は、
暗記ではなく、血液の流れを想像できるかどうかです。

この視点を持っているだけで、導入時の判断スピードは大きく変わります。

  • PCPSの回路は遠心ポンプと人工肺の2つで成り立っている

PCPSの導入

何から始めればいいか分からなくなる問題

PCPS導入が決まった瞬間、
臨床工学技士が一番困るのは
「とにかく全部一気に来る」 ことです。

医師はカニュレーション
看護師は薬剤・物品
周囲は心臓マッサージや除細動

その中で
「自分は今、何を最優先でやるべきか」
が分からなくなる場面が必ずあります。

ここで重要なのは、
落ち着くことではありません。
やる順番を頭に入れておくことです。

導入時にやることは実は3つしかない

PCPS導入時、
臨床工学技士が担う役割は施設差はありますが、
基本的な軸は変わりません。

やることは次の3つだけです。

PCPSの導入までにやるべきこと
  • 機械と回路、使用物品の準備
  • 回路のプライミング
  • 開始操作(機器側)

急変時はどうしても
「全部同時にやらなきゃ」
という気持ちになりますが、
実際にはこの順番を崩さないことが最重要です。

① 機械と回路、使用物品の準備で迷う理由

新人のうちはここで止まります。

理由は
「何をどこまで準備すればいいか分からない」
からです。

この段階での目的はただ一つ。
いつでも回路を渡せる状態にすることです。

完璧に並べる必要はありません。
不足物品をゼロにすることよりも、
回路が使える状態かどうかが最優先です。

もちろんカニューレの選択も必要となってきます。
余力が出てきた方はこちらの記事を参考にカニューレ選択を行いましょう。

② プライミングで一番やってはいけないこと

プライミングで一番怖いのは焦って確認を飛ばすことです。

注意すべきポイント
  • クランプの位置
  • エアの残存
  • 接続ミス

ここを一つでも落とすと、
取り返しがつかなくなります。

「急いでいるから確認を省く」ではなく
「急いでいるからこそ、確認項目を減らす」という考え方が重要です。

初めのうちは施設で決められている
最低限の確認項目だけを確実に守ってください。

③ 開始操作で一番多いミス

開始操作で最も多いミスはクランプ操作の順番です。

クランプ操作の順番
  1. 脱血側のクランプを外す
  2. ポンプをスタートする
  3. 送血側のクランプを外す

この順番を崩すと
気泡混入のリスクが一気に上がります。

遠心ポンプだから大丈夫という知識は正しいですが、
「安全な手順を体に覚えさせる」 ことが
急変時には何より大切です。

ちなみに主な開始手順は以下の通りです。

ポンプの回転数
基本的に2000回転でスタートさせ、血圧と流量を見ながら調整していきます。
3500回転以上で溶血のリスクが生じるため、この回転数以上は上げないのが一般的です。
上昇中に流量が低下した場合は回転数を下げてみて、脱血不良の評価をしましょう。

  • プライミングが重要
  • クランプ操作に注意
  • 開始時に酸素吹送を忘れずに行う

まとめ

PCPS導入で「慌てなくなる」ために一番大切なこと

PCPS導入は、
何度経験しても緊張する場面です。
これは経験年数に関係ありません。

ただ一つ言えるのは、
慌てる人ほど知識が足りないのではなく、
頭の中で整理できていない
ということです。

この記事で整理したポイントは次の通りです。

PCPS導入時、臨床工学技士がやることは
「準備 → プライミング → 開始操作」の3つしかない

回路は複雑に見えるが、
本質は「脱血 → ポンプ → 人工肺 → 送血」という一直線

急変時に求められるのは速さではなく、
毎回同じ順番で動ける再現性
これらを理解しているだけで、
PCPS導入時の見え方は大きく変わります。

PCPS導入に対応できる臨床工学技士は、
ICUや救急の現場で確実に信頼されます。

まずは
導入の全体像を頭の中に一本の線として描けるようになること。
それが、次の一段階への第一歩です。

一緒に頑張りましょう!

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