救急搬送された際にHR30~40台の方が来られた場合、一時的にペーシングが必要となります。
一時ペーシングの際に使用される機械がテンポラリーなのですが、
挿入時の対応やその後の管理など、疑問に感じている人もいるのではないでしょうか?
今回はテンポラリーについて基本情報を紹介していきます。
これを読めば、テンポラリーの適応患者、挿入時の手順、設定方法などを紹介していきます。
つまり、今回の内容はカテ室で勤務する方にとって重要な話です。
また、第2回では病棟に帰った後のテンポラリーについても紹介しますので気になる人は
ご確認ください。
テンポラリーの適応患者
まず、テンポラリーペースメーカーの使用が適用となる疾患は徐脈系の心疾患です。
徐脈によってめまいや失神、心拍出量の低下などがみられると非常に危険ですので、
一時的にペーシングが必要となります。
具体的な疾患名としては
・房室ブロック
・徐脈性心房細動
・急性心筋梗塞
・心筋炎 など
これらの疾患が原因の徐脈に適応といった感じです。
テンポラリー挿入時の手順
1.ペーシングカテーテルの準備
まず、テンポラリーの挿入が必要となると
内頸静脈、大腿静脈のいずれかからペーシングカテーテルを挿入する必要があります。
ちなみに内頸静脈か大腿静脈かで使用するカテーテルが異なるため、
医師に「首ですか?足ですか?」と確認しています。
医師がカテーテルを任意の静脈から右心室の位置まで持っていく間に
テンポラリー本体の準備をします。
2.テンポラリー本体の準備
つぎに必要となるのは9V電池です。
テンポラリーは一時的なものであり、9V電池で動いています。
使用前に9V電池を取り付けないとカテーテル挿入後もペーシングできないので
必ず取り付けてください。
また、テンポラリーは他の患者さんに使用後である可能性もあるので、
安全の観点から、本体に電池が入っていても新品に交換することをお勧めします。
電池切れでペーシングできなくてそのまま徐脈になりました
なんてことがあればマジで笑えないです。
そんなことをしているうちにペーシングカテーテルが右心室内に挿入されていると思います。
この時の確認方法はPVC(心室期外収縮)です。
3.ペーシングカテーテルの位置確認
心室の心筋をペーシングカテーテルが突いたらPVCが出るのですが、
これが準備完了の合図です。
4.ペーシングカテーテルと本体の接続
ここまできたら次はテンポラリー本体とペーシングカテーテルを中継ケーブルを用いて接続します。
その後はいよいよテンポラリーの設定です。
テンポラリー設定方法
挿入が完了したらいよいよテンポラリーの設定です。
ここが一番重要な場面で、うまく行かなかった場合、
ペーシングカテーテルの位置を変更させる必要もありますし、
患者さんが徐脈のまま急変してしまう危険性もあるため、素早くかつ正確に行いたいです。
1.電源ON
接続が完了したら電源をONにしましょう。
主に左下のボタンをひねるのですが、その際にVVIに設定しましょう。
この時、設定レートは一番低い状態にしておき、
電源ONの直後にペーシングが入らないようにしましょう。
また、ペーシング出力が5Vになっていることも確認しましょう。
ただし、ほとんど自己脈が出ていないような緊急時は例外ですので、
臨機応変に対応しましょう。
2.感度(Sense)の確認
電源を入れた後に確認することは、感度の確認です。
これは、患者さんの心拍と同期しているのかを確認します。
この時は自己脈が出ている場合、Senseと表記されているランプが点灯するので
これが出現していることを確認してください。
問題なければ徐々に数値を上げていき、ランプが消える場所を探します。
経験上、5~7.5mVに設定した辺りでランプが消灯することが多いのですが、
5mV以上であれば問題ありません。
感度の確認が完了した後は、設定を1.5mVにしておきましょう。
ただし、医師からの指示があれば例外です。
(感度については1.5mV以外で設定したことは今のところないです)
3.閾値の確認
つぎに確認するのは閾値の確認です。
これを確認するためにはペーシングを入れる必要がありますので、
患者さんの自己脈よりも高い値に設定する必要があります。
だいたいその時の自己脈に+20した値を設定値にすると間違いないです。
(例)自己脈が30だった場合、設定は50にする
ペーシングが入っている場合、心電図モニターの波形が明らかに変化するので
この変化を確認し、テンポラリー本体のStimのランプが点灯していることも確認してください。
どちらも問題が無ければ出力を5Vに設定し、そこから徐々に下げていきます。
すると、どこかのタイミングでペーシング波形が消失し、自己波形が出現します。
このペーシング波形から自己脈に移るタイミングが閾値です。
(例)1Vで自己脈に変化した→閾値は2V
この閾値の値が2V以下であれば問題ありません。
閾値の確認が完了した後は、設定を3~5Vにしておきましょう。
こちらの値については医師に確認しましょう。
(出力の設定は3Vにすることが多いです)
4.レート設定の最終確認
ここまでいったらテンポラリーの準備は完了です。
後は設定をどうするのかという点ですが、基本的にレート設定のみです。
出力は3~5V、感度は1.5mVに設定するはどの症例においても変化はぼしないです。
レート設定については患者さんの状態によっても変わります。
一時的に徐脈になる患者さんの場合、バックアップの目的で設定することもありますし、
常にペーシングを入れておきたい患者さんの場合は高いレートで設定することもあります。
こちらについては医師に確認するのが最も適切です。
基本的には
HR+20の値が60以下なら常にペーシングを入れる設定
HR+20の値が60以上ならバックアップの設定
であることが多いです。
つまり、自己脈が40以上あればテンポラリーはバックアップで使用することが多いです。
このバックアップ目的というのは患者さんの自己脈を優先し、何かあった時には
ペーシングを入れて脈拍数を維持するという設定ですので、
可能であればバックアップ目的の設定でにしておきたいです。
まとめ
今回はテンポラリーの解説第一弾ということで
テンポラリーの治療開始までの流れを紹介しました。
カテ室で勤務する際には緊急時の対応として必ず必要となるスキルです。
特に臨床工学技士が準備する場面が多いため、
ぜひ覚えてください。
第2弾ではこの後病棟に帰った後のテンポラリーから、抜去されるまでについて
紹介していきます。
気になる人はぜひ確認してみてください。
一緒に頑張りましょう!