皆さんはPCIを攻略するために一番重要なものは何だと思いますか?
狭窄部を広げるためのバルーンやステント?
血管内を確認するためのIVUSやOCT?
答えはガイドワイヤーだと思います。
ガイドワイヤーが病変部まで到達しなければそもそも治療は始まりません。
病変部までしっかりとワイヤーを持って行くために医師も様々なワイヤーを試していきます。
それでも無理ならマイクロカテーテルなども併用していきますが、このガイドワイヤーが最も需要です。
今回はPCIの鍵ともなる、ガイドワイヤーについて紹介していきます。
ガイドワイヤーとは

ガイドワイヤーは髪の毛ぐらいの細いワイヤーで、
PCIで使用する場合は血管内の病変部までたどり着くまでのガイドを行ってくれるものです。
基本的にPCIを行うためにはこのガイドワイヤーが病変部まで到達することですべてが始まります。
ガイドワイヤーには様々な種類があり、先端の硬度や荷重、操作性、サポート性などの特徴があり、
病変に合わせて先生方は最も適しているワイヤーを選択しています。
ちなみになぜガイドワイヤーが病変部まで到達しなければ治療が行えないのかというと、
あくまでガイドワイヤーは病変部までのガイドするためのワイヤーで、
ガイドワイヤー自体に治療効果はありません。
なんのためにガイドするのかというと、そこにバルーンやステントを持って行くためです。
しかし、ワイヤーよりもバルーンやステントが大きいのにワイヤーすら
病変部にたどり着かなければ治療にすらならないというワケです。
つまり、そのワイヤーのことはPCIに関わる臨床工学技士としては知っていて当然ということです。
- ガイドワイヤーはPCIで最重要
- 病変部までバルーンやステントを持って行くためのガイドの役割がある
ガイドワイヤーの種類
ガイドワイヤーには様々な種類があるという説明をさせていただきました。
が、ここからはより分かりやすくするためにガイドワイヤーを細分化していきます。
まず、先ほどからPCIにはガイドワイヤーが必須と言い続けてきましたが、
実はガイドワイヤーはPCI用以外にも存在します。

カテ室で使用されるカテーテルには主に3種類存在しており、
①PCI用ワイヤー
②プレッシャーワイヤー
③カテーテルワイヤー
があります。
PCI用ワイヤー
今回のメインの内容になるPCI用のワイヤーです。
PCIで使用されるワイヤーは数多くあり、今回は医師がどのようにして使い分けているのかを紐解くために
種類分けをしてみました。

まずガイドワイヤーは大きく分けて
一般病変用
CTO用
の2種類に分けられます。
一般病変用はその名の通り、一般病変用で、普通の冠動脈の狭窄の場合は一般病変と呼ばれます。
特徴としては安全な構造をしており、扱いやすく、操作しやすいワイヤーとなっており、
ファーストチョイスワイヤー、ポリマーコートワイヤー、サポートワイヤーの3種類があります。
ファーストチョイスワイヤーがあることからもわかるように、
基本的にPCIを行う際はこの一般病変用のワイヤーが使用されます。
医師や症例によってはCTOでもこちらの一般病変用のワイヤーを使用することがあります。
一方でCTO用はCTO病変の際に使用されるワイヤーです。
CTO(Chronic Total Occlusion)は3ヵ月以上慢性的に閉塞している病変で、
PCIの中でも難易度の高い病変となります。
このワイヤーはCTO用ガイドワイヤーとテーパーワイヤーの2種類があります。
医師や症例によっては一般病変でもこちらのCTO用のワイヤーを使用することがあります。
ファーストチョイスワイヤー
ファーストチョイスワイヤーはPCI用ガイドワイヤーの中でも最も安全と言われる部類のワイヤーです。
現在はガイドワイヤーが凄く進化し、病変の80%近くがこのワイヤーだけで通過できるとも言われています。
つまりはファーストチョイスワイヤーが通らない20%のためにこのほかのワイヤーが存在しているということです。
最初に何が選ばれるかは施設(医師)によって決まっていることが多いと思いますが
ASAHI社
SION
SIONblue
が該当します。
SIONblueは先端荷重が0.5gとSIONよりも軽量であるため、さらに安全と言えます。
(SIONは先端荷重0.7g)
そういう背景もあり、私の施設のファーストチョイスワイヤーはSIONblueです。
とりあえずPCIになったらSIONblueを準備しています。
- 80%は病変を通過するワイヤー
- 最初に選択するワイヤーとして知られている
ポリマーコートワイヤー
ポリマーコートワイヤーはファーストチョイスワイヤーと比べて
ツルツル滑る加工がされているのが印象的です。
ポリマーはプラスチックから作られたもので、親水性コーティングがされています。
高度な屈曲や石灰化などの一般病変に比べて癖のある病変に対して有効ですが、滑りやすいため、
通過した勢いそのままに抹消まで行き、パーフォレーション(穿孔)する危険性があるため、
注意が必要です。
該当するワイヤーは
ASAHI社
SION black
です。
- 滑りやすいため、高度狭窄や石灰化に対して有効
- パーフォレーションに注意
サポートワイヤー
サポートワイヤーはワイヤーの先端だけではなく、全体が硬めに設計されているワイヤーです。
このワイヤーは蛇行している血管に対して非常に有効で、このワイヤーを蛇行血管に通すことで、
まっすぐな走行に変えることができます。
注意点は血管を無理やりまっすぐにするため、蛇行部分がうまく変化せず、
蛇腹のように蛇行部分がうねうねしてしまう現象が起きることがあります。
これはアコーディオン現象とも呼ばれる現象で、虚血を引き起こすため注意が必要です。
この現象はワイヤーを引き抜くことで改善します。
該当するワイヤーは
AbbottI社
WIGGLE
です。
- 蛇行している血管をまっすぐにし、ワイヤーを進めるサポートを行う
- アコーディオン現象に注意
CTO用ガイドワイヤー
CTO用ガイドワイヤーは基本的に先端荷重が重いものが多いです。
ファーストチョイスワイヤーなどの先端荷重の軽いものでは通過できないような病変も多く、
その場合はCTO用ガイドワイヤーを用います。
ファーストチョイスワイヤーの先端荷重は1g以下ですが、
CTO用ガイドワイヤーは2g以上のものがほとんどです。
先端荷重が重いものはもちろん病変部の貫通力も高く、CTO病変には適切なワイヤー選択ともいえます。
CTO用ガイドワイヤーは貫通力が高いため、パーフォレーションに注意が必要です。
また、病変部の前後はパーフォレーションを防ぐため、他のワイヤーを使用することが多いです。
該当するワイヤーは
ASAHI社
Gaiaシリーズ
です。
- CTO病変用に先端荷重が重くなっているワイヤー
- パーフォレーションに注意
テーパーワイヤー
テーパーワイヤーはCTO用ガイドワイヤーと同様に、CTO病変に対して適しているワイヤーです。
先端荷重が重く、貫通力を高くしているCTO用ガイドワイヤーとは異なり、
テーパーワイヤーは先端が尖っており、病変を突き刺して通過していくことが可能です。
そのため、CTO用ガイドワイヤーと同じく、貫通力が高いワイヤーともいえます。
テーパーワイヤーは先端荷重が軽いワイヤーから重いワイヤーまで種類があるため、
徐々に先端荷重を重くしていくのが一般的です。
また、貫通力が高いため、パーフォレーションに注意が必要で、
病変部の前後はパーフォレーションを防ぐため、他のワイヤーを使用することが多いです。
該当するワイヤーは
ASAHI社
XT-A、XT-R
です。
- CTO病変用に先端部が尖がっているワイヤー
- パーフォレーションに注意
プレッシャーワイヤー
プレッシャーワイヤーはAbbott社から販売されているワイヤーで
主にFFRやRFRといった狭窄度合いの評価を行うために使用するワイヤーです。
この検査については別途記事にさせていただきます。
ちなみに検査時には白いセンサーのようなものを付けているのですが、検査の結果、狭窄があり、
PCIを行う必要がある場合はこのワイヤーのセンサーを取り外すことで
そのままガイドワイヤーとして使用することが可能です。
ですが、用途としては検査なので、検査用のカテーテルと覚えておくといいでしょう。
- プレッシャーワイヤーはFFRやRFRで使用するワイヤー
- ガイドワイヤーとしても使用できる
カテーテルワイヤー
カテーテルワイヤーは心臓のカテーテル治療以外にも尿道カテーテルなど、様々な場面で使用されています。
冠動脈に対してこのワイヤーを用いる際は
穿刺部位から冠動脈までの道のりに対してのガイドを行う時に使用します。
ちなみに今まで紹介してきた2種類とは異なり、外形が0.035インチとなっており、少し太めなのが印象的です。
冠動脈の検査(CAG)を行う際は、造影カテーテルとシース、そしてカテーテルワイヤーを準備することが
一般的です。
カテ治療で使用するカテーテルワイヤーのファーストチョイスは0.035インチのアングルタイプのワイヤーです。
私の施設ではテルモ社のラジフォーカスガイドワイヤーを使用しています。
医師からは35ワイヤーと呼ばれたりもしています。
患者さんの血管次第ではより細い0.025インチのワイヤーや先端が細いスティフタイプのものを使用します。
カテ用のワイヤーはCAG、PCI関係なく使用するのでとりあえず出しておいて損はないはずです。
この辺については皆さんが働いている施設のやり方に合わせてください。
- 心臓以外にも幅広く使用されているワイヤー
- 心臓カテーテルを行う際は検査、治療共に必要
- 冠動脈までたどり着かない場合は外径や先端の形状を変更する
まとめ
今回はガイドワイヤーについて紹介してきました。
各施設で使用しているガイドワイヤーがどのワイヤーに該当するのかはしっかり確認しておくと、
PCIで医師が次にどのワイヤーを選択したいのかがわかってきます。
手技がわかればPCIもわかってくるはずなので、
ガイドワイヤーを把握することはPCIを理解するための第一歩です。
最初は種類が多くてわかりませんでしたが、ファーストチョイスワイヤーなどの使用頻度が多いものから
覚えていくのがおすすめです。
- ガイドワイヤーは病変部までバルーンやステントを届けるためのガイド
- ガイドワイヤーの第一選択はファーストチョイスワイヤー(これで80%の病変は通過できる)
- 病変部を通過できない場合は先端荷重を上げ、貫通力を上げていく
- 一般病変とCTO病変で使用するワイヤーが異なる
一緒に頑張りましょう!