心血管評価の鍵!FFRとRFRをわかりやすく比較

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FFRとRFRについて 血管カテーテル

冠動脈疾患の診断において、FFR(Fractional Flow Reserve)とRFR(Resting Full-cycle Ratio)は
欠かせないツールです。

これらの生理学的評価は、患者の治療方針を決定する上で重要な役割を果たしますが、
「FFRとRFRって何が違うの?」「どうやって使い分けるの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。

この記事では、FFRとRFRの基本から比較、実際の臨床での活用方法までをわかりやすく解説します。

この記事でわかること
  • FFRについて
  • RFRについて
  • FFRとRFRの比較
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FFRについて

FFR(Fractional Flow Reserve、冠血流予備量比)は、冠動脈狭窄の機能的意義を評価するための
指標として広く認知されています。


これは、冠動脈の狭窄部位を通過する血圧の差を測定し、
その狭窄が心筋への酸素供給にどれだけ影響を与えているかを数値化するものです。


FFRは、最大充血状態(hyperemia)で測定され、通常はアデノシンなどの血管拡張薬を使用して行われます。

FFRについて
  • 測定値
    0から1の範囲
  • 異常値
    0.80以下(PCIの適応となる)
  • 使用物品
    PressureWire™ X Guidewire
  • 使用薬剤
    血管拡張薬(アデノシンなど)

このワイヤーは、冠動脈内に挿入され、狭窄部位の遠位側と近位側の圧力を測定します。
FFRの計算式はFFR = Pd / Paとなっています。

ここで、Pdは狭窄より先の血圧、Paは冠動脈狭窄部の手前の血圧を指します。

例えば、Pdが80mmHg、Paが100mmHgの場合、FFRは0.80となり、治療の必要性を示唆します。

FFRの強みは、視覚的な冠動脈造影だけでは判断が難しい中程度の狭窄(50~70%)において、
機能的な影響を正確に評価できる点にあります。


実際、研究では、FFRを用いたPCIは、造影のみに頼る場合と比べて、
死亡や心筋梗塞のリスクを35%低減させることが示されています(FAME試験)。

また、FFRはガイドラインでクラスI(レベルA)の推奨を受けており、
臨床工学技士としてはその測定手順や機器の取り扱いに熟知しておくことが求められます。

しかし、FFRには課題もあります。

FFRの課題
  • アデノシンの投与による副作用(胸部不快感や呼吸困難など)
  • 測定に時間がかかる点
  • コストがやや高い点

これらの課題を克服するために、近年では非充血状態での測定が可能なRFRが注目されています。

  • FFRは冠動脈狭窄の機能的意義を評価する指標
  • 最大充血状態で測定し、0.80以下でPCIの適応を検討
  • アデノシン投与が必要で、副作用やコストが課題

RFRについて

RFR(Resting Full-cycle Ratio、安静時冠血流比)は、
FFRの課題を補うために開発された非充血状態での生理学的評価指標です。


RFRは、安静時の心周期全体(収縮期と拡張期)における
冠動脈の狭窄遠位側の圧力(Pd)と冠動脈の狭窄近位側の圧力(Pa)の最低比率の最小値を1心拍を測定します。


RFRの計算式はFFRと同じく RFR = Pd / Pa ですが、アデノシンなどの薬剤を必要とせず、
測定が簡便なのが特徴です。

RFRについて
  • 測定値
    0から1の範囲
  • 異常値
    0.89以下(PCIの適応となる)
  • 使用物品
    PressureWire™ X Guidewire
  • 使用薬剤
    不要

RFRの閾値は0.89で、0.89以下の場合、狭窄が機能的に有意であると判断され、PCIの適応を検討します。
RFRの最大の利点は、アデノシンの投与が不要なため、患者の負担が少なく、測定時間も短縮される点です。
また、RFRは心周期全体をスキャンして最低のPd/Paを算出するため、
特定のタイミング(例えば拡張期)に依存する他の非充血指標(iFRなど)と異なり、より包括的な評価が可能です。

RFRと類似試験の比較
  • RFR(安静時冠血流比):アボット社
    1心周期中(1回の拍動)における値
  • iFR(瞬時血流予備量比):フィリップス社
    安静時の血管抵抗が十分低下する期間で見た値
  • dPR(拡張期圧較差比):アシスト社
    拡張期全体の値
  • DFR(拡張期圧較差比):ボストン社
    拡張期全体のうち平均のPaを用いた値

研究によれば、RFRはFFRと高い相関(r=0.727, P<0.001)を持ち、診断精度も79.8%と優れています
(VALIDATE RFR試験)。

臨床工学技士として、RFRの測定に慣れることが重要です。
特に、圧力ワイヤーの正確な配置や、圧力ドリフト(測定誤差)のチェックが求められます。

ドリフトは安静時の測定において特に影響が大きく、わずかな誤差が狭窄の誤分類につながるため注意が必要です。RFRは、特に左前下行枝(LAD)や左主幹(LM)の評価、連続病変やびまん性病変の診断において有用です。

また、非ST上昇型急性冠症候群(NSTE-ACS)の非責任病変の評価にも適しています。
ただし、RFRとFFRの結果が約20%のケースで異なる(discordance)ことが報告されており、
臨床判断には慎重さが求められます。

  • RFRはアデノシン不要の非充血指標で、安静時のPd/Paを測定
  • 閾値は0.89で、心周期全体を評価する包括的な指標
  • 簡便で患者負担が少ないが、FFRとの不一致が約20%で発生

FFRとRFRの比較

FFRとRFRは、冠動脈狭窄の機能的評価における二大指標ですが、それぞれに特徴と適応があります。
ここでは、両者の違いを臨床工学技士の視点から比較し、使い分けのポイントを解説します。

測定条件

FFRは最大充血状態で測定するため、アデノシンなどの血管拡張薬が必要です。
これに対し、RFRは安静時で測定でき、薬剤投与が不要です。
このため、RFRは患者への負担が少なく、検査時間の短縮やコスト削減につながります。
臨床工学技士としては、FFR測定時のアデノシン投与による
副作用(胸部不快感や一過性の血圧低下)に注意し、患者の状態をモニタリングする必要があります。

診断精度と相関

FFRはゴールドスタンダードとして確立されており、
FAME試験やDANAMI-3-PRIMULTI試験などでその有効性が証明されています。

一方、RFRは新しい指標ですが、VALIDATE RFR試験やIRIS-FFR試験でFFRとの
高い相関(r=0.727)が確認されています。

ただし、約20%のケースでFFRとRFRの結果が異なる(discordance)ことがあり、
左前下行枝(LAD)や左主幹(LM)、血液透析患者、末梢動脈疾患の患者で
不一致が起こりやすいと報告されています。
このような場合、臨床工学技士は医師と連携し、
追加のFFR測定や他の指標(PPGなど)の併用を提案することが重要です。

適応と使い分け

FFRは左主幹や多枝疾患、糖尿病患者、収縮機能障害の患者に特に有用です。
一方、RFRは連続病変やびまん性病変、急性冠症候群の非責任病変の評価に適しています。
ハイブリッドアプローチ(RFRが0.86~0.93のグレーゾーンではFFRを追加)が推奨されており、
これによりアデノシン使用を半分以下に抑えつつ、診断精度を維持できます。
臨床工学技士としては、症例に応じた機器の選択や設定、測定結果の正確な記録が求められます。

  • FFRは充血状態、RFRは安静時で測定し、RFRは薬剤不要で簡便。
  • FFRとRFRは高い相関があるが、約20%で不一致が発生。
  • ハイブリッドアプローチで診断精度を向上させ、臨床工学技士の正確な操作が鍵。

まとめ

FFRとRFRは、冠動脈狭窄の機能的評価において、臨床工学技士にとって必須の知識です。

FFRはゴールドスタンダードとして確立され、正確な診断を可能にしますが、アデノシン投与やコストが課題です。
一方、RFRは薬剤不要で簡便かつ患者負担が少ないですが、FFRとの不一致に注意が必要です。
ハイブリッドアプローチを活用することで、診断精度を高めつつ効率的な検査が可能です。

臨床工学技士としては、圧力ワイヤーの正確な操作や患者対応を通じて、質の高い医療提供に貢献できます。
この記事を参考に、FFRとRFRの知識を深め、臨床現場でのスキルアップを目指してください!

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