PCIで冠動脈狭窄部に治療を行う際にガイドワイヤーがなかなか病変部に通らないという事例は珍しくないです。
そんなタイミングで強い味方になってくれるのがマイクロカテーテルです。
マイクロカテーテルは複雑病変に対してガイドワイヤーを通過させるために使用されることが多いです。
毎回PCIで使用されるというものではないので最初の頃はなんだこいつと私も思っていましたが、
今回はそんなマイクロカテーテルについて紹介します。
- マイクロカテーテルについて
- マイクロカテーテル役割
- DLCについて
マイクロカテーテルについて
マイクロカテーテルを一言で表すと治療目的病変に対してガイドワイヤーを操作しやすくなるデバイスです。
使用方法としてはマイクロカテーテルの中にガイドワイヤーを入れることで使用可能となります。
主なマイクロカテーテルの役割としては以下の通りです。
- ガイドワイヤーの操作性向上
- ガイドワイヤーの交換
- 局所的薬剤の投与
ガイドワイヤーの操作性向上
特にマイクロカテーテルが有効的に活用されるのがガイドワイヤーの操作性向上です。

このように、マイクロカテーテルは高度狭窄がある場合や蛇行が強い場合、石灰化が強い場合などに使用されます。
この時にガイドワイヤーだけですと、ワイヤーが思うように操作することが難しく、
病変部やその奥まで通過できない可能性があります。
しかし、ガイドワイヤーがあれば操作性を向上させることができるため、
複雑病変であったとしても通過可能となります。
ガイドワイヤーの交換
マイクロカテーテルを使用する際はガイドワイヤーの交換を行う場合があります。
これはガイドワイヤーの特性を活かすためです。
ガイドワイヤーの特性についてはこちらの記事を参考にしてください。
ガイドワイヤーには通過性の高いワイヤー(テーパーワイヤー)や
柔らかい安全なワイヤー(ファーストチョイスワイヤー)があります。
病変部はテーパーワイヤーを使用し、
その後はファーストチョイスワイヤーに使用したい場合は交換の可能性もあります。

ワイヤー交換が必要なため、手間はかかりますが、貫通力の高いワイヤーでそのまま治療を行うのは危険なので、
安全第一で治療を行うのであればワイヤーを交換することが重要です。
マイクロカテーテルを使用した際はワイヤー交換の可能性がある事も頭に入れておきましょう。
局所的薬剤の投与
ガイドワイヤーは筒のような形になっているため、通常は中に入れるガイドワイヤーを抜けば
薬剤を投与することが可能です。
これはPCI中に冠動脈に対して直接的に薬を投与しすることが可能であるということを意味します。
ちなみにガイディングカテーテルからも投与することは可能ですが、
より局所的に薬剤投与が可能なのはマイクロカテーテルのメリットです。
- 注入する前に逆血を確認する
マイクロカテーテルが血管外や細い血管に迷入している可能性があるため、
解離や穿孔の原因になる
- マイクロカテーテルはガイドワイヤーの操作性向上のために使用される
- マイクロカテーテル使用時はガイドワイヤーの交換する可能性もある
- マイクロカテーテル使用時は局所的薬剤の投与も可能(逆血は必ず確認する)
マイクロカテーテルの種類
そんなマイクロカテーテルは主に保険償還の関係で2種類に分けられています。
ただし、どのマイクロカテーテルを使用するかは基本的に医師の判断によります。
- 冠動脈貫通用カテーテル
Caravel MC:朝日インテック社製
Zizai:テルモ社製 - 中心循環系マイクロカテーテル
Corsair Pro:朝日インテック社製
Fine Cross GT:テルモ社製
マイクロカテーテルはCTO病変(慢性完全閉塞)の病変でよく使用されることがあり、
長さは130,135cmと150cmが基本です。
- 130,135cm
一般的な用途での使用 - 150cm
逆行性アプローチで使用
また、CTO病変だけでなく側枝に対してガイドワイヤーを通したい場合も
ガイドワイヤーを使用することがあります。
ただし、側枝に対しては通常のマイクロカテーテルではなく、カテーテル内で横から出せるように
分岐路が付いているカテーテルの使用が推奨されます。
このマイクロカテーテルのことをDLC(ダブルルーメンカテーテル)といいます。
- DLC(ダブルルーメンカテーテル):側枝に対してガイドワイヤーを通す補助ができるカテーテル
Crusade Type R:KANEKA社製
SASUKE:朝日インテック社製
DLCについて

DLCは主に側枝へのアプローチを行う際に使用されます。
DLCは名前の通り、2か所ワイヤーを通すための穴があります。
- モノレールルーメン
DLCを目的地まで運ぶためのワイヤーを通す - OTW(オーバーザワイヤー)ルーメン
病変や側枝に対してアプローチするワイヤーを通す
DLCでは側枝の血管の他にもステントストラットという
ステントがすでに留置されている場所から分岐している側枝に対してのアプローチにも使用されます。
なお、DLCも通常のマイクロカテーテルと同様に薬剤投与が可能です。
- DLCは側枝に対して有効
- ステント留置部と被っている側枝にもアプローチ可能
- 側枝に対して局所的に薬剤投与可能
まとめ
今回は難易度の高いPCIで使用されるマイクロカテーテルについて紹介しました。
マイクロカテーテルを用いることで、
ガイドワイヤーだけでは対応できないような病変にも対応することができます。
マイクロカテーテルが必要な場面では手技が難しいことも多いため、できる限り私達臨床工学技士も
医師のサポートができるようにしていけるといいですね。
一緒に頑張りましょう!