石灰化した冠動脈は通常のバルーンでは広がらず、治療が難航することがあります。
そのような場面で選択肢となるのがロータブレーターですが、
「本当に削る治療は安全なのか」「どんな症例で使うべきか」と疑問を感じる方も多いはずです。
本記事ではロータブレーターの仕組み、適応、禁忌、回転数、施設基準、さらに治療の実際までを整理し、
治療に活かせるようになります。
カテ治療でも重症度の高い治療で使用されるロータブレーターのことをぜひ学んでいきましょう。
- ロータブレーターについて
- ロータブレーターの適応、禁忌について
- ロータブレータ使用時の手順について
ロータブレーターの原理と適応疾患

ロータブレーターは、高度に石灰化した冠動脈病変を安全かつ効果的に治療するための血管内治療器具です。
先端には微細な人工ダイヤが埋め込まれたブレードが装着されており、
これを高速回転させることで硬い病変部分だけを選択的に削ることができます。
また、ロータブレーターは前方向にしか削ることができません。
回転の原理は、器具内部にある小型のプロペラに高圧の窒素ガスを勢いよく吹き付けることで生まれる
遠心力にあります。
この仕組みにより、ブレードは毎分14万〜20万回の高速で回転し、
摩擦によって石灰化した血管壁を削り取ります。
一方、柔らかい正常血管は損傷されにくい設計になっています。
適応疾患としては以下が挙げられます。
- 高度石灰化病変でバルーンだけでは拡張困難なもの
- 分岐部の複雑な病変
- 慢性完全閉塞(CTO)の入り口部分
- 細く硬くなった血管
- 透析患者に多い硬化血管
禁忌は次の通りです。
- 三つの冠動脈枝すべてが狭窄している場合
- 血管壁に裂け目や動脈瘤がある場合
- 血栓が大量に存在する場合
ロータブレーターは単なる削る器具ではなく、血管の構造や病変の特性、
患者の状態を総合的に判断して使用する高度医療機器です。
臨床工学技士としては、回転の原理や摩擦による熱影響、病変の硬さによる操作の難易度を理解し、
医師と連携して安全な治療を支える知識が求められます。
- 高圧窒素ガスによるプロペラ回転で高速ブレード運動を実現
- 硬い病変のみ削り、血管損傷を最小限に抑制
- 適応・禁忌と病変特性の理解が安全操作の鍵
ロータブレーターのメリット・デメリット
ロータブレーターのメリットは以下の通りです。
- 高度石灰化病変でも治療可能
- 硬い病変を削ることで血管への圧迫を抑制
- バルーンやステントの拡張性向上、再狭窄リスク低減
- 分岐部や慢性閉塞の病変にも対応可能
- 柔らかい正常血管への損傷が少ない
ロータブレーターの最大のメリットは、
通常のバルーンやステントでは広がらない高度石灰化病変にも治療が可能である点です。
硬くなった血管壁を直接削ることで、血管への圧迫を最小限に抑えながら血流を改善できます。
また、血管内の石灰化を除去することで、バルーンやステントの拡張性が向上し、
ステント留置後の再狭窄リスクも低減されます。
複雑な分岐部病変や慢性閉塞の入り口部分にも対応可能で、透析患者や高齢者の硬化血管でも有効です。
さらに、削る範囲が選択的であるため、柔らかい正常血管を傷つけにくい点も大きな利点です。
一方でデメリットやリスクも存在します。
このデメリットやリスクについては以下の通りです。
- 装置が大型で操作が難しく、術者に高度な技術が必要
- 微小な破片による末梢塞栓のリスク(心筋梗塞や脳梗塞の可能性)
- 血管裂傷や血圧低下などの合併症の可能性
- 適応外の病変では重大な合併症リスク
- 治療後の再狭窄の可能性(ステント併用でリスク軽減)
装置は大型で操作が難しく、術者に高度な技術が求められます。
削る際に生じる微小な破片が血流に乗り末梢に飛ぶ「塞栓症」のリスクがあり、
これにより心筋梗塞や脳梗塞が起こることもあります。
また、削る過程で血管が裂ける、血圧が低下するなどの合併症も報告されています。
治療後も再狭窄が起こる可能性があり、ステント併用でリスクを軽減するのが一般的です。
さらに、適応外の病変に使用すると重大な合併症を招く可能性があるため、
施設基準を満たした医療機関でのみ施行されます。
臨床工学技士としては、装置の取り扱いや回転数管理、ガス圧によるブレード回転の理解だけでなく、
手技中の血行動態変化や塞栓リスクに注意を払い、術者と緊密に連携することが求められます。
- 高度石灰化病変にも対応可能で、血管への負担を抑える
- 操作には高度な技術が必要で、合併症リスクも存在
- 施設基準を満たした病院で、安全管理を徹底する必要がある
ロータブレーターの治療の順序

ロータブレーター治療は、準備段階から術中管理までの一連の手順を正確に理解することが、
安全かつ効果的な治療につながります。
まず準備物品として、ロータブレーター本体(アドバンサー)、ロータバー(清潔物品)、専用ガイドワイヤー、駆動装置、窒素ボンベ、加圧バック、ロータカクテルが必要です。
ロータバーは1.25〜2.25mmの6サイズがあり、1.75mmまでは6Fr、2.0mm以上は
7Frのガイディングカテーテルで挿入可能です。
ロータバーの先端にはダイヤモンドが散りばめられており、硬い石灰化病変に触れると削れ、
柔らかい正常血管には滑る仕組みです。
高速回転は毎分19万回に達し、窒素ガスをプロペラに勢いよく吹き付けることで生み出されます。
高速回転によりカテーテルが熱を持つため、アドバンサー内を通してロータバー先端から生理食塩水を流し、
冷却します。
生理食塩水にはニコランジルや硝酸薬、抗凝固薬(ヘパリン)を混ぜたロータカクテルが用いられ、
末梢塞栓のリスク軽減や血流改善を目的としています。
手技の順序は以下の通りです。
- カテーテル挿入
皮膚からガイドカテーテルを冠動脈まで到達させ、専用ワイヤーを病変に通す。 - ロータバー挿入
ワイヤーに沿わせてロータバーを病変に到達させる。 - 高速回転開始
窒素ガスによりブレードを回転させ、石灰化部分を削る。
冷却用生理食塩水を流し、ロータカクテルによる薬剤で血流維持と末梢塞栓予防を行う。 - バルーン拡張
削った血管をバルーンで広げ、血流改善を確認。 - ステント留置(必要時)
血管内腔を保持し、再狭窄リスクを低減。 - 術後管理
血圧、心電図、血流状態を継続モニタリング。血圧低下時は昇圧薬を使用する場合もある。
臨床工学技士は、ロータバーのサイズや回転数管理、ガス供給やロータカクテルの流量調整、
術中の血圧や血流変化の監視を担当します。
また、施行医と事前に薬剤投与量や血圧目標を打ち合わせておくことが、
安全かつ効率的な手技のために重要です。
臨床工学技士として特に重要なのは回転数の管理と秒数の管理です。
通常ロータブレーターは30秒以内の稼働が求められています。
また、開始時の回転数から使用中に回転数が低下した際もコールする必要があります。
この回転数低下はロータブレーターで石灰化病変を削っていることを意味します。
そのため、3000回転以上低下した場合は術者に伝える必要があります。
ただし、回転数低下の原因はそれ以外にもあるので適切な判断が必要となります。
- 石灰化病変の抵抗
- 高度に硬い病変や厚い石灰化では回転数が低下することがある。
- この場合はロータバーの圧力や回転速度を調整し、ブレードがスムーズに進むように操作する。
- ロータバーの摩耗や詰まり
- 長時間の使用や硬い病変の連続削除でブレードが摩耗すると回転数が落ちることがある。
- 粉砕された石灰化片がロータバー周囲に詰まることでも回転数が下がる。
- ガス圧不足や装置トラブル
- ブレードを回す窒素ガス圧が不十分な場合や、装置の機械的トラブルでも回転数低下が生じる。
- 準備物品・薬剤・装置を事前に確認する
- 回転数を管理
- 術者と連携し血圧や血流維持を行う
まとめ
ロータブレーターは、硬く石灰化した冠動脈病変を安全に削り、血流改善を可能にする高度な治療法です。
導入から手技、術後管理まで臨床工学技士が関与する範囲は広く、装置の操作やロータカクテルの管理、
回転数や血圧のモニタリングなど、細かい配慮が治療の成功に直結します。
特に、回転数の管理やロータカクテルの流量・薬剤濃度は、
末梢塞栓や血管損傷を防ぐための重要なポイントです。
また、柔らかい血管を傷つけずに石灰化だけを削る選択性や、バルーン・ステントとの併用による
再狭窄予防も、治療効果を高める要素となります。
施設基準を満たした病院での施行が必須であることも忘れてはなりません。
臨床工学技士としては、単に装置を扱うだけでなく、手技全体の流れとリスク管理を理解し、
術者と連携して安全性と効果を最大化することが求められます。
この知識を身につけ、実務に応用することで、
より安全で精度の高いロータブレーター治療のサポートが可能となります。
一緒に頑張りましょう!


